9月は価格交渉促進月間
原材料費、資材費、エネルギー費、人件費・・・、様々なものが値上げされ、消費者や事業者を圧迫しています。
これにより、経営破綻に追い込まれている中小企業の報道も増えています。先日も多くの学校や企業等に給食を提供している会社の経営破綻が報じられています。
政府は、原材料・資材等の価格上昇分を製品・商品・サービスに転嫁できるように施策を行っていますが、全てに浸透できているわけではありません。
特に、下請けの要素が大きい、中小・零細企業は、納入先に、価格アップの前提となる交渉に着手できていないところも多くあるようです。
3月・9月は価格交渉促進月間
政府(経済産業省)は、3月と9月を「価格交渉促進月間」と定めて、実態調査や価格交渉を行える環境整備に取り組んでいます。
これらの活動により、
・価格交渉ができた企業の割合が「63.4%」
・高い割合で転嫁ができた割合は「39.3%」
とのことです(2023年3月の調査)。
これを見る限りでは、まだまだ施策の効果が出ている状況ではないと思います。
価格交渉・転嫁の好事例
今回の促進月間にあたり、「進みつつある価格交渉・転嫁の好事例」が公表されています。
これを見ると、
(1)経営者の強い意思・覚悟
(2)自社内の状況を数値で把握する
(3)交渉の優先順位を決めて粘り強く交渉
(4)社内の「コスト意識」を高める
の4点が重要であると読み取れます。
以下、記載されている内容を紹介します。
経営トップによる発信
・適正な価格転嫁が行われるよう、会社を挙げて対応する方針を経営トップが社内・取引先に発信。
発注者側からの価格交渉の働きかけ
・調達本部の社員が取引先を訪問し、能動的な交渉を実施。
・「原材料」や「電力」、「労務費」や「運送費」などの費目を明示した価格交渉用のファーマットを提示し、取引先に呼びかけ。
原材料費のみならず、エネルギーコスト・労務費の価格転嫁
・輸送コストの高騰に対応するため、原油価格上昇分を考慮した燃料サーチャージを導入し、契約額に加算して支払い。
・労務費の値上げに対応する予算を措置し、適正な転嫁を行う環境を整備。
社内体制の整備
・取引先との交渉内容を記録し、上長が必ず確認することをルール化。また、そのデータを社内で一元管理し、交渉の進捗状況や結果を見える化。
価格交渉ハンドブック
2022年3月に「価格交渉ハンドブック」が公表されています。ここには、価格交渉の考え方、具体的な方法が示されていますので、ぜひ、参考にして下さい。
企業は利益を出さないと継続できない
企業は利益を出さないといずれ資金がなくなり、倒産に追い込まれます。
日本はバブル崩壊後の約30年間デフレの状態が続き、値下げが当たり前の状態が続き、これにより、人件費も低く抑えられてきました。
今回は、コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻などが要因で、半導体・建築資材不足、円安、原油・天然ガスの値上げ等が一気に発生し、これに人手不足、人件費の高騰が加わり、制御不能な物価高騰になっています。
これを乗り切るには、ここで示した販売価格等のアップは必要ですが、ビジネスモデルの変革(事業再構築)が必要になっています。
企業によっては、ビジネスモデルを変革するのに時間がかかる場合もあるかと思います。その場合は、既存の事業の中で、価格を含めた、製品・商品・サービスの質の向上や、既存・新規の顧客様への対応が必要になります。
変革への第一歩は、自社の状況を的確に把握することが第一です。
自社の財務・事業の分析、市場・顧客の外部分析を行い、その中から課題を設定し、対策(改善)に取り組んで行く必要があります。
当社では、様々な業種の企業の改善や補助金の申請支援(事業計画書の策定)に取り組んできました。
前後の記事
- 前の記事
- 2023事務年度金融行政方針
- 次の記事
- 経営力再構築伴走支援