銀行との2つの付き合い方
最近、経営不振で「資金調達」に関して相談を受けることが多くなっています。資金調達としては幾つもの方法がありますが、中小企業として最も多いのが「金融機関(銀行等)からの借入」です。
また、経営が不振になった時に重荷になるのも「金融機関への借入金の返済」です。
ここでは、
・借入ができる条件
・返済を一時的に止める等の「リスケジュール(リスケ)」の条件
について整理して紹介します。
銀行から借入ができる条件
銀行は、業績が悪い企業(回収に懸念がある)には新規の貸出は行いません。借入ができるのは経営的に「正常」な企業です。「正常」とは、次の3つの状態を総合的に判断されます。
(1)返済原資が確保できること
(2)自己資本がプラス、債務超過でないこと
(3)金融機関との取引実績に傷がないこと
(1)返済原資が確保できること
借入金を返済できる年数(債務償還年数)が「7年~10年」以内であること。
借入金は、事業活動で生み出すキャッシュ(簡易キャッシュフロー:純利益+減価償却費)が返済原資になります。
すなわち、利益が出ないと返済ができないので、金融機関からの借入は難しくなります。
これを式で表すと次のようになります。
■ 債務償還年数=正味の借入額÷簡易キャッシュフロー
= 7年(~10年)
□ 正味の借入額=借入金ー現預金ー運転資金
*運転資金=売上債権+棚卸資産ー仕入債務
□ 簡易キャッシュフロー=純利益+減価償却費
(2)自己資本がプラス、債務超過でないこと
貸借対照表(バランスシート)を確認して、資産、負債を実態に合わせて評価されます。
・プロパー融資(銀行単独の融資):ある程度厳しく評価して判断します。評価の基準は金融機関によってかなり違います。
・保証協会付融資・日本政策金融公庫融資は比較的柔軟に対応してもらえる可能性があります。
(3)金融機関との取引実績に傷がないこと
これは、次に示す状況をいいます。
・借入の返済が滞っていない
・資金使途違反がない など
リスケの条件
リスケは金融機関からの借入の返済の条件変更(一定期間の支払いの停止や減額)を受けることです。
リスケは「傷」ではなく、契約のまき直しです。
このリスケを認めてもらうには、リスケの実施により最大5年以内に「正常な企業」になることが必要です。
*正常な企業とは、先の「借入ができる企業」と同じです。すなわち、
(1)返済原資が確保できること
(2)自己資本がプラス、債務超過でないこと
通常は、これを実現するために「経営改善計画」を策定します。
この「経営改善計画」は、借入先の金融機関内部の「リスケ」の承認を得るために必要です。
この「経営改善計画」には、次の数値を達成することを示すことが必要です。
・条件1:3年以内に黒字化
・条件2:5年以内に債務超過を解消(自己資本がプラス)
・条件3:5年後(債務超過解消後)、債務償還年数10年以内
当社では、「認定支援機関」として、「経営改善計画」の策定を業務の一つとしています。
なお、この計画策定に関する費用(報酬)には、国の補助金(3分の2)を使うことができます。
リスケの詳細については次の記事に示しています。
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