事業再生での繰越欠損金の活用
事業再生において、借入金を返済していくためには利益を出すことが必要です。
例えば、頑張って利益を「1,000万円」出しても税金で「約300万円」を払うことになり、返済には「700万円」しか充てることができません。
この時に、税金の支払いを少なくするために、これまでの赤字分(繰越欠損金)を活用することができます。
今回は、事業再生時の繰越欠損金の活用を紹介します。
繰越欠損金とは
繰越欠損金とは、企業が過去に生じた損失額のことで、これを将来の所得から控除することで税負担を軽減できる制度です。日本の税法では、一定の期間(通常は10年間)、繰越欠損金を利用して将来の利益から控除することが認められています。これにより、過去の損失を埋め合わせ、企業の財務状況を安定させることが可能となります。
事業再生時における繰越欠損金の活用方法
経営が悪化し事業再生を行う際、繰越欠損金は以下のような方法で有効に活用できます。
1 債務免除益の活用
債務免除益とは、再建過程で債権者が一部の債務を免除することで企業に発生する利益のことです。この債務免除益は通常、課税対象となりますが、繰越欠損金を利用することで課税額を減少させることが可能です。具体的には、過去の損失と債務免除益を相殺することで、実質的な課税所得を減らすことができます。これにより、再建過程における税負担を軽減し、企業の財務再建を助ける効果があります。
2 再生中の利益と法人税の相殺
事業再生の過程で企業が利益を上げることができれば、その利益に対して法人税が課されます。しかし、繰越欠損金を利用することで、この利益と過去の損失を相殺し、実際に支払う法人税額を減少させることができます。これにより、企業は再生過程で得た利益を再投資や債務返済に充てることができ、よりスムーズな再建を図ることができます。
3 グループ内での損益通算
企業グループ内で繰越欠損金を持つ会社がある場合、その繰越欠損金を他のグループ企業の利益と通算することで、グループ全体の税負担を軽減することができます。これにより、グループ全体の資金繰りを改善し、経営再建を支援することが可能です。
4 資本政策との連携
増資や第三者割当増資を行う際に、繰越欠損金を有効活用することで、投資家に対して将来の税負担の軽減をアピールすることができます。これにより、投資家からの資金調達が円滑に進む可能性が高まります。
以上のように、繰越欠損金は事業再生の際に様々な方法で活用することができます。これにより、企業は財務状況を改善し、再建を成功させるための強力なツールとして活用することができます。
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