M&Aトラブル(2)表面保証のトラブル
「その表明保証、本当に大丈夫?」
M&Aで売手が見落としがちなリスクと対策
M&Aの契約書に必ず登場する「表明保証」。
これは、売手が買手に対して「うちの会社には問題がない」と事実を保証する非常に重要な条項です。
しかし、表明保証の内容をよく理解しないまま契約を進めてしまうと、売却後に予期せぬトラブルや損害賠償に発展するリスクがあります。
私たちは、売手に寄り添ったM&A支援を行うセルサイドアドバイザーとして、こうした見落としを防ぐサポートに注力しています。
表明保証とは?
表明保証(Representation and Warranty)とは、M&A契約において売手または買手が相手方に対して「財務状況」「契約内容」「法的リスク」などについて、真実で正確な情報を保証する条項です。
売手は以下のような事項を表明するのが一般的です:
・財務諸表は正確である
・訴訟・係争中の案件はない
・未払いの税金はない
・必要な許認可はすべて有効である
この表明が虚偽だった場合、「表明保証違反」として損害賠償の対象になる可能性があります。
表明保証に関するトラブル事例
1 簿外債務の存在
売手が「すべての債務は開示済み」と表明していたが、後から未計上の借入金が発覚。
2 隠れた訴訟リスク
「係争中の訴訟は存在しない」としていたが、M&A成立後に元従業員との労務トラブルが顕在化。
3 許認可の不備
「事業に必要な許可はすべて有効」と記載されていたが、実際には失効しており、買手が事業継続に支障をきたす。
このようなケースでは、買手から損害賠償を求められることがあります。
売手が取るべき対策とは?
■ 1. 正確なデューデリジェンス(DD)の実施
専門家の支援のもと、自社の財務・法務・税務・労務の状況をあらかじめ洗い出しておくことが不可欠です。
「セルフDD」を実施しておくと、表明保証の記載内容も整理しやすくなります。
■ 2. 開示例外の明記(ディスクロージャーの徹底)
契約書上で表明保証をしたくない事項や、グレーなリスクは開示資料として明記することで、責任の限定や除外が可能になります。
■ 3. 表明保証の範囲・期間・上限の設定
売手の責任範囲が広すぎないように、「損害賠償額の上限(キャップ)」や「責任期間(通常は1~2年)」を契約書に明記しましょう。
■ 4. 表明保証保険(R&W保険)の活用
買手が保険を活用することで、万が一トラブルがあっても売手の負担を軽減できるケースがあります。
表明保証は「慎重すぎるくらいがちょうどいい」
M&Aにおける表明保証は、買手と売手の信頼をつなぐ“契約の要”です。とはいえ、売手側が無自覚に記載してしまった条文が、後々大きな責任を招くことも珍しくありません。
私たちは、売手に寄り添う立場から、M&Aの契約リスクを丁寧に分析し、万全な備えを整えるサポートを行っています。
表明保証のリスクに不安をお持ちの経営者様、
M&Aを「後悔のない形で終えたい」とお考えの方は、ぜひ当社へご相談ください。
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