事業再生の手法(1)~私的整理にはどのような方法があるのか?~ - 事業パートナー九州 北九州市(福岡県)経営コンサルタント

事業再生の手法(1)~私的整理にはどのような方法があるのか?~

中小企業を取り巻く経営環境は、原材料価格の上昇、人件費の増加、金利上昇、後継者不足などにより、年々厳しさを増しています。

その結果、「資金繰りが苦しい」「返済が重い」「赤字が続いている」「金融機関から返済条件の見直しを求められている」といった相談が増えています。

しかし、経営が厳しくなったからといって、すぐに「破産」しか選択肢がないわけではありません。

実際には、事業を継続しながら再建を目指す「事業再生」という方法があり、その中でも多く活用されているのが「私的整理」です。

今回から、「事業再生の手法」をテーマとして、8回シリーズで解説していきます。

第1回は、「私的整理の種類」について説明します。

1.法的整理と私的整理の違い

事業再生には、大きく分けて、

  • 法的整理
  • 私的整理

の2つがあります。

(1)法的整理とは

法的整理とは、裁判所を利用して進める再建・清算手続きです。

代表的なものとして、

  • 民事再生
  • 会社更生
  • 破産

があります。

法的整理は、法的拘束力が強く、債権者全体を強制的にまとめられる点が特徴です。

一方で、

  • 官報公告
  • 取引先への情報拡散
  • 信用低下
  • 取引停止

などが発生しやすく、事業継続への影響が大きくなる場合があります。

(2)私的整理とは

これに対して私的整理とは、裁判所を利用せず、金融機関などの債権者と協議しながら再建を進める方法です。

主な内容としては、

  • リスケジュール(返済条件変更)
  • 元本返済の猶予
  • 金利減免
  • 債務免除
  • DES(債務の株式化)
  • スポンサー支援

などがあります。

私的整理の大きな特徴は、

  • 非公開で進められる
  • 事業継続しやすい
  • 取引先への影響を抑えやすい

という点です。

近年の中小企業の事業再生では、まず「私的整理」を検討するケースが増えています。

2.私的整理の主な種類

現在、中小企業で活用される私的整理には、主に次の5つがあります。

1.中小企業活性化協議会による支援

2.中小企業の事業再生等に関するガイドライン

3.事業再生ADR

4.REVICによる再生支援

5.純粋私的整理

それぞれ特徴が異なるため、会社の状況に応じた選択が重要になります。

3.中小企業活性化協議会による支援

概 要

中小企業活性化協議会は、各都道府県に設置されている公的機関です。以前の「中小企業再生支援協議会」が発展した制度になります。

専門家(公認会計士・税理士・中小企業診断士・弁護士など)が関与し、再生計画の策定支援を行います。

窓口相談から再生計画策定、金融調整までの流れが整備されています。

適しているケース

  • 財務悪化が進んでいる
  • 複数金融機関から借入がある
  • 公的機関を通じて調整したい
  • 金融機関との関係を維持したい

メリット

  • 公的機関のため信用性が高い
  • 金融機関の協力を得やすい
  • 専門家チームによる支援が受けられる
  • 比較的大規模な再生にも対応可能

デメリット

  • 資料準備が多い
  • 一定の時間がかかる
  • 実現可能性の高い計画が必要
  • 赤字が深刻すぎる場合は難しい

向かないケース

  • 事業継続性が極めて低い
  • 粉飾や不正がある
  • 経営者に再建意思がない

4.中小企業の事業再生等に関するガイドライン

概 要

近年、特に注目されている制度です。コロナ融資後の再生支援でも活用が増えています。

正式には「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」といい、金融機関との私的整理を円滑に進めるためのルールです。

特徴として、

  • 債務免除
  • 第二会社方式
  • スポンサー型再生

など柔軟な対応が可能です。

適しているケース

  • 過大債務を抱えている
  • 債務免除が必要
  • スポンサー支援を受けたい
  • 廃業と再生を同時に検討している

メリット

  • 柔軟性が高い
  • 金融機関との調整ルールが明確
  • 経営者保証への配慮もある
  • 廃業型にも対応可能

デメリット

  • 専門家関与が前提
  • 計画策定の負担が大きい
  • 金融機関調整に時間がかかる

向かないケース

  • 小規模すぎて費用負担が難しい
  • 事業継続可能性が乏しい
  • 金融機関の協力が得られない

5.事業再生ADR

概 要

事業再生ADRは、第三者機関が仲介して進める私的整理です。

ADRとは「裁判外紛争解決手続」のことで、法的整理ではありませんが、中立的機関が入ることで調整を進めやすくなります。

比較的大規模企業で利用されることが多く、中小企業では利用件数は多くありません。

適しているケース

  • 借入規模が大きい
  • 多数金融機関が関与
  • 大企業・中堅企業
  • スピード感を重視

メリット

  • 法的整理より非公開性が高い
  • 金融機関調整が進めやすい
  • 事業価値毀損を防ぎやすい

デメリット

  • 費用が高額
  • 専門家費用負担が重い
  • 中小企業には使いにくい

向かないケース

  • 小規模企業
  • 金融機関数が少ない会社
  • 資金余力がない会社

6.REVICによる再生支援

概 要

REVIC(地域経済活性化支援機構)は、地域経済を支えるための再生支援機関です。

特徴的なのは、

  • 債権買取
  • ファンド活用
  • スポンサー支援

などが可能な点です。

ファンドを活用した再生支援の仕組みも示されています。

適しているケース

  • 地域経済への影響が大きい
  • 雇用維持が重要
  • 事業価値が高い
  • 金融調整が複雑

メリット

  • 大型再生に対応可能
  • 資本支援が受けられる
  • 金融機関調整力が高い
  • 地域金融機関との連携が強い

デメリット

  • 対象案件が限定される
  • 小規模案件では利用困難
  • 審査に時間を要する

向かないケース

  • 小規模零細企業
  • 地域経済への影響が小さい会社
  • 再生可能性が低い会社

7.純粋私的整理

概 要

純粋私的整理とは、公的機関を使わず、会社・専門家・金融機関だけで進める再生手法です。

当社が関与する案件でも、この手法を用いることがあります。

適しているケース

  • 金融機関数が少ない
  • メイン銀行との関係が良好
  • 早期対応したい
  • 柔軟に進めたい

メリット

  • スピード感がある
  • 柔軟な交渉が可能
  • 非公開性が高い
  • 比較的低コスト

デメリット

  • 中立性への不安
  • 金融機関の理解が必要
  • 交渉力が結果を左右する

向かないケース

  • 金融機関数が多い
  • 利害調整が複雑
  • メイン銀行との関係が悪い

8.どの私的整理を選ぶべきか

重要なのは、「どの制度が有名か」ではなく、

  • 会社の規模
  • 債務状況
  • 金融機関数
  • 事業継続可能性
  • スポンサー有無
  • 経営者保証の状況

などを総合的に見て判断することです。

また、実際の事業再生では、

  • 私的整理
  • スポンサー支援
  • 事業譲渡
  • M&A
  • 廃業支援

を組み合わせながら進めることも少なくありません。

9.まとめ

事業再生には様々な方法があります。

そして、多くの中小企業では、まず「私的整理」による再建可能性を検討することになります。

重要なのは、

  • 早めに相談すること
  • 現実的な事業計画を作ること
  • 金融機関との信頼関係を維持すること

です。

資金繰りが厳しくなった段階で放置してしまうと、選択肢は急速に減っていきます。

一方、早期に対応すれば、

  • 事業継続
  • 雇用維持
  • 経営者保証問題
  • M&Aによる事業承継

など、多くの可能性を残せます。

次回は、「当社の私的整理の取組み」について、実際の進め方や考え方を含めて解説します。

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