資金調達・補助金 2020年(3)
本記事は以前のホームページに記載したものを整理したものです。
【1】あなたは、こんな「ものづくり補助金」の申請書を書いていませんか?
(20200520)
現在、当社では、「ものづくり補助金」の「第3次募集:8月申請」の支援を行っています。本年は、年5回の受付を行っています。現時点で当社では「第3次募集:8月申請」「第4次募集:11月申請」に関して支援を行うことができ、ご相談を受付けています。補助金を有効に使って会社の発展を目指しませんか?お待ちしています。
今回は、「採択されにくい事業計画書(申請書)」とはどういうものなのか、当社と提携しています「五島俊幸」経営コンサルタントに紹介してもらいます。
なお、これまでの「ものづくり補助金」に関する紹介は、ホームページの各投稿記事をご覧下さい。
みなさんは、「ものづくり補助金」の申請をして不採択になった場合、補助金の事務局に問い合わせれば、審査員の所見(不採択の理由とは違います)を教えてもらえます。ご存じでしたか。なお、これを聞くことができるのは、申請者に限られているとのことです。
そこで、今回は、そのなかから、採択されにくい事業計画書(申請書)についてご紹介します。これを参考に、申請書のレベルアップを目指してください。
1.すべての審査項目に答えていない
補助金の審査は学校の試験、それも国語の試験に似たところがあります。出題者が尋ねていることに答えていなかったり、まったく見当違いのこと書いた場合、採点できません。
補助金の審査もまったく同じです。補助金の場合、この問題にあたるのが、公募要領に載っている審査項目になります。
審査項目のなかには、自社の事業内容に合わない項目もあるかもしれません。それでも、関連したことを書いてください。何も書かないと1点も取れません。
採択される基本的なポイントは、内容も大事ですが、まず「すべての審査項目に答えること」です。
2.革新性がない
これは、とても多くある勘違いです。古くなった設備を最新式に買い替えて生産性を上げたい。でも、資金がないので、「ものづくり補助金」を使いたい。
しかし、これだけでは、申請要件を満たしていません。つまり、不採択になります。なぜかといえば、「ものづくり補助金」の目的は、単なる設備導入に対する補助金ではないからです。
ここで、あらためて「ものづくり補助金」の目的を確認しましょう。
この目的について、「誰に」「何のために」「何を」支援するのかと言えば、次のようになります。
誰に:中小企業・小規模事業者等に
何のために:革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うために
何を:設備投資等を支援する補助金
確かに、設備投資等への補助金なのですが、“何のための設備投資か”ということが重要になります。つまり、「革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善」のため設備投資でないと申請要件を満たしていないことになります。さらに冒頭の「革新的」がキーワードです。
ですから、単なる設備の買い替えは対象外です。
■では、どうすればいいか、
「古くなった設備で効率が悪く、残業も多い。そこで最新設備を入れたい」とここまでだったら、通常の経営課題の解決でしかありません。つまり、“革新性”がありません。
そこで、設備更新以上の生産性向上を目指して、自社の強みである技術力、ノウハウ、経験なども加えて“生産能力、生産性向上、生産工程”などの問題や課題を抜本的に改善する計画を作成することです。その結果、審査員から「自社にもなく、他社でも一般的でない新しい取り組み」として認められます。特に、生産工程は自社の強みが必ずあります。これを活かすことで、革新的な解決策につなげることができます。
3.具体性に欠ける
“具体性に欠ける”とは、設備導入により得られる結果が、数値などで具体的に書かれていないことです。「生産性が向上する」とか、「コストの低減が可能になる」など抽象的な表現では、審査員が、どの程度改善されたのか判断できません。そのため、他社との優位性もアピールできなく、内容の薄い申請書になってしまいます。
■では、どうすればいいか、
具体的には、「自社の過去の生産性から15%アップする」など数字で表します。数字で表すことで、審査員も実現可能なのか判断できます。ただし、あまりに高い数値にすると、逆に実現性に疑問を持たれますので、根拠のある数値にします。
4.設備の能力に頼り過ぎる
これは、革新性がないことにもつながりますが、次のような申請書です。
・設備の能力、スペックだけで、他社が導入しても結果に違いがない。
・単に設備を買い替えたいだけで、具体的な事業計画がない。
どこの企業が導入しても、得られる結果が同じ場合、評価されません。
■では、どうすればいいか、
単なる設備更新でも、何らかの課題があって、その設備を導入することで、その課題を解決したいと考えたはずです。その課題を深掘りしていくことで、色んなアイデアも出てきます。それを事業計画にまとめます。
5.財務基盤に不安
財政状況が悪い、つまり利益が出ていない会社は、採択されにくいです。どうしてかと言いますと、審査項目のなかに、「最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか」という項目があります。
国が「ものづくり補助金」で求めていることは、補助金で設備導入をして生産性を上げて、その結果、利益を出して、雇用を増やし、税金を納めてほしいのです。赤字企業の場合、事業化する前に倒産されては、補助金を出した意味がなくなります。だから、財務状況が悪いと、計画が良くても採択しづらくなります。特に、債務超過、2期連続営業損失の場合、さらに厳しくなります。
その場合、まず、債務超過の解消、黒字化など経営改善を先にすることです。
6.ノウハウがない新たな技術的取組み
これは、製造するうえでの技術力やノウハウから考えて、実現性に不安を持たれる場合です。
具体的な事例でお話しします。
今まで、主に金属の溶接をしていた会社が、新たな事業として金属を曲げることにしました。そのために、補助金を使ってプレス機を導入したいという申請書を出しました。
しかし、この申請書が採択されることは難しいです。金属の溶接と曲げることは、その技術がまったく違うからです。今まで曲げることをまったくしていない会社がそれを始めたとして、本当に実現できるのか、審査員はその実現性に懸念を持ってしまうからです。
■では、どうすればいいか、
新しいことへのチャレンジはとても大切ですが、自社にない技術とはいえ、この補助金が求めている革新性は、自社の技術力やノウハウなどの自社の強みと新たに導入する設備を活かした新しい取り組みになります。全く違うことにチャレンジする場合、この自社の強みがまったく活かせませんので、実現性に懸念を持たれてしまいます。
導入設備から計画書を作成するのではなく、まず、市場ニーズを調べたうえで、自社の強みや弱みを洗い出してみてください。そのなかで、課題を掘り起こし、その解決に向けて必要な設備の導入計画を作り上げことになります。
以上、採択されにくい申請書の例をご紹介しました。
採択される「ものづくり補助金」の申請書を作成するには、短期間には難しいです。やはり3ヶ月ぐらいの作業時間をみておいてください。申請書を何度も書き直すことになりますが、作業時間が短い場合、内容の薄い、矛盾だらけの申請書になってしまいます。審査員の方も専門家です。申請書を一目見れば、すぐにわかります。
申請者が採択されるには、現状の経営課題を補助金を使った事業によって解決し、利益がでる事業にするまでを一貫したストーリーにすることが重要になります。
この情報が、みなさんのお役にたてたら幸いです。
【2】「ものづくり補助金」の申請をしたいけど、こんな疑問のある経営者の方へ
(20201017)
現在、「ものづくり補助金」の「第4次募集:11月26日締切り」期間中です。本年は、年5回の受付を行っています。現時点では、新規のご依頼については「第5次募集:2021年2月申請」に関して支援を行うことができ、ご相談を受付けています。なお、これまでの申請で不採択になった案件については、「第4次募集」に間に合う可能性がありますので、至急、ご連絡下さい。
補助金を有効に使って会社の発展を目指しませんか?お待ちしています。
前回の8月募集では、採択率が低い中弊社支援の案件が採択されました。その経験を活かし、「ものづくり補助金を有効に使う方法」について、当社と提携しています「五島俊幸」経営コンサルタントに紹介してもらいます。
なお、これまでの「ものづくり補助金」に関する紹介は、ホームページの各投稿記事をご覧下さい。
今回は「ものづくり補助金」を申請したい経営者の方で、こういった疑問や不安にお答えします。
● 古い機械の買い替えでも補助金を申請できるか?
● 補助金は欲しいけど、内容がよくわからない
● 補助金の申請書の書き方がよくわからない
<本記事の3つの内容>
1 古い機械の買い替えでも、採択される可能性の高い申請書を作ることはできます。申請書の作成の流れをまとめました。
2 補助金の知識がゼロでも問題ありません
3 補助金申請書の作成にあたって注意しておく5つのポイント
1 古い機械の買い替えでも採択される可能性はある
この記事を書いている私は、これからご紹介する申請書の作成手順で、3次締切に採択されました。
申請を検討されている方のよくある悩みとして、「古い機械の買い替えの申請書で採択されるのか?」というものがあります。
その答えは、「それでも大丈夫です。」ただし、採択される可能性が高くなる申請書を作成するために、たくさんの質問をさせていただきます。そのうえで、自社の強みと更新設備を活かした計画書を作成することが欠かせません。
というわけで、今回は、「古い機械の買い替えでも採択される可能性の高い申請書の作り方」についてお話します。
私が行っている申請書作成の流れをまとめました。
手順(1) 概要説明
手順(2) ヒアリング(第1回)
手順(3) 申請書第1案作成および内容確認(書き換えなど)
手順(4) ヒアリング(第2回)
手順(5) 申請書第2案作成および内容確認(書き換えなど)
手順(6) ヒアリング(第3回)
手順(7) 申請書最終案作成および内容確認(書き換えなど)
手順(8) 申請書完成版の納品(電子データおよび印刷物)
手順(9) 電子申請
ヒアリングを最大3回することにしています。これは、補助金の申請書が求めている「革新性のある事業計画書」を作成するためです。ところで、申請書の表題は、「事業計画書」となっています。どうしてか。製造業を例でお話しすると、国は「自社の強みと補助金を使って購入した設備などにより、製造工程を効率化して生産性をあげる計画書」を作成して欲しいからです。なので、単に「古い機械を買い替えて生産性を上げます」だけでは、採択されません。
そこで、事前に買い替えの理由などを詳しくお聞きします。
例えば、
経営を安定させるために、
- 今まで加工できなかった製品を作りたい
- 製作時間を短くして納期短縮をしたい
といった理由があるはずです。それを「事業計画書」としてまとめます。そのためのヒアリングになります。
手順(1)(概要説明)~手順(8)(申請書完成版納品)までを2ヶ月間と予定しています。
長いと思われるかもしれませんが、採択率を上げる申請書を書くためには確保したい期間です。
2 補助金の知識がゼロでも問題ありません
「ものづくり補助金」の知識がなくても問題ありません。
公募要領を読まれたことがある方はご存じでしょうが、1回読んだぐらいではとても理解できません。にもかかわらず、「支援なし」で申請書を作成された方もたくさんいらっしゃいます。
実際、「ものづくり補助金総合サイト」のデータポータルに載っている3次締切までのデータでは、申請者の約半数(51.1%)が支援者なしで申請されています。
ただし、“支援者なし”といっても以前に申請したことがあって、そのノウハウがあることも考えられます。また、公募要領を理解するのにも時間がかかりますので、初めて申請される方は、時間短縮のためにも弊社などの実績のある支援組織に依頼されることをお勧めします。
そうは言っても、「申請書が書けるのは、中小企業でも従業員が多いところだろう。うちみたいに10名程度の会社では、なかなか難しいんじゃない」と思われているかもしれません。
それも 大丈夫です。3次採択までのデータでは、従業員が5名までの事業者の応募が全体の39.2%(採択率46.2%)、6~20人までが32.7%(採択率53.8%)でした。従業員20名以下の事業者が約7割です。従業員が少ないことが、申請作業に対応できない理由ではありません。
ものづくり補助金は、最高1,000万円がもらえます。採択されるチャンスは誰にもあります。ただし、補助金の原資は税金ですから、採択されるにはそれなりに難しい補助金です。そのために、しっかり準備することで、知識ゼロでも大丈夫です。
3 補助金申請書で注意しておくポイント5つとは
(1) 補助事業を実行するのは申請者です
補助金をもらうためには事業計画書(申請書)を作ります。それを実行するのは、申請者になります。
国は、ただでお金を配っているわけではありません。事業性のある(つまり利益のでる)計画に対して補助金を出して、雇用を守り、継続的に法人税を納めてほしいのです。なので、補助金を交付していから5年間は事業内容の報告を求めています。
補助金の申請は、採択されるのが目的ではなりません。あくまでも、採択された事業計画を達成することです。当然ですが、「弊社のような専門家へ申請の支援を依頼する、しない」に関わらず、補助事業の成功は経営者にかかっています。
(2) 申請書作成の前後の事務処理が煩雑
補助金とはもともと税金です。国としても補助金を事業者に交付するには、明確な根拠が必要になります。その根拠になるのが指定された文書になります。この提出および保管文書がとても多くあります。当然、これを作成する労力もかかります。この時間を確保しておく必要がありますので、どの程度の負担がかかるのか、あらかじめ確認しておくことが大切です。
補助金は、購入設備の代金の支払後に「実績報告書」を提出した後に振り込まれます。
つまり、このような事務処理を完了しないと補助金はもらえませんので、採択後の事務処理がとても重要になります。
※ものづくり補助金総合サイトの「補助事業の手引き」で採択後の手続きがわかります。
(3) 採択率が高くなる加点項目はできるだけ多く取る
総合サイトのデータによると、加点項目の数が多いほど採択率も高くなっています。加点項目がゼロの場合、採択率は14.5%ととても低いですが、1個だと21.4%、3個で59.3%、5個で84.6%と高くなっています。したがって、できるだけ加点項目を多く取っておくことで採択率を高くすることができます。逆に1個もないことは、それだけで不利になります。
(4) 申請書を作成することで他の支援策にも応募する
「ものづくり補助金」の申請書で作成した計画書をもとに、中小企業庁が実施している他の支援策にも同時に申請できるものがあります。
例えば、「先端設備導入計画」や「経営力向上計画」です。ものづくり補助金で導入する設備がこれらの計画の対象設備になると、先端設備導入計画では、3年間固定資産税がゼロになります。また、経営力向上計画では、導入費用の10%の税額控除が受けられます。
(5) 申請する前に税理士や社労士に必ず相談する
「ものづくり補助金」は、交付された事業年度の収入になり、法人税等の課税対象にもなります。また、申請条件のなかに賃上げ要件があります。このことが、自社の財務状況にどのように影響するのか、税理士や社労士などの専門家に事前に確認しておくことが重要です。そのうえで、補助金を申請するのであれば、メリットの最も得られる時期に申請することをお勧めします。
この記事を書いた私は、ここに記載の方法で採択されました
今年度実施の3次締切では、弊社が支援しました金属加工業の会社が採択されました。
3次締切の採択数は、以下のとおりです。特に3次締切の採択率は、1次、2次より大幅に下がりましたが採択されました。
補助金の審査に合格するには、国語の試験と同じで、問われていることにすべて答えなくては、点をもらえません。
弊社が作成した申請書の項目(見出し)は、その審査項目にすべて対応しています。その項目にしたがって、ヒアリングをしますので、採択率の高い申請書になっています。
無料の個別相談を受け付けています
「ものづくり補助金」に関する無料の個別相談(概要説明および質問・相談など)を行っています。Zoomによるオンラインでの対応もできます。
ぜひ、この機会に「ものづくり補助金」の概要や不明な点を確認されてください。
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