経営改善・事業再生の現場で「答えを設計する力」
士業・コンサルタントに求められる「創造的問題解決(CPS)」とは
中小企業を取り巻く経営環境は年々厳しさを増しています。
人手不足、原材料高騰、価格転嫁の遅れ、後継者不在、過剰債務――。
こうした複合的な問題を前に、士業・コンサルタントには、単なる制度説明や手続支援を超えた「経営の打開策を描く力」が求められる時代になっています。
その中で注目されているのが、「創造的問題解決(Creative Problem Solving:CPS)」という考え方です。
創造的問題解決(CPS)とは何か
創造的問題解決(CPS)とは、
問題を正しく定義し、多様な解決策を生み出し、現実的な行動に落とし込むための思考プロセスです。
「創造的」と聞くと、ひらめきやセンスに依存するものと思われがちですが、CPSはまったく異なります。
CPSは、再現性のある“技術”として体系化された問題解決手法です。
最大の特徴は、次の点にあります。
・問題をいきなり解こうとしない
・発想を広げる段階(発散)と、絞る段階(収束)を意識的に分ける
・正解を探すのではなく、「実行できる選択肢」を設計する
この考え方は、答えが一つではない経営改善・事業再生の分野と非常に相性が良い手法です。
CPSは一般に、次のような流れで進みます。
1 現状の把握
2 問題の定義
3 アイデアの発散
4 解決策の収束
5 実行・検証
重要なのは、最初から解決策を決めにいかないことです。
多くの経営支援が行き詰まる原因は、「問題設定を誤ったまま対策を打つ」ことにあります。
士業・コンサルタントがCPSを学ぶべき理由
1.制度・手続だけでは経営は立て直せない
士業は本来、法律・会計・労務・許認可などの専門家です。
しかし、経営者が本当に求めているのは、
・「この会社は、これからどうすれば生き残れるのか」
・「続けるべきか、やめるべきか」
・「誰に、どこまで相談すればいいのか」
といった経営の意思決定に関わる問いです。
CPSは、士業が「専門知識の提供者」から「経営の思考整理を支援する伴走者」へ進化するための武器になります。
2.経営改善・事業再生は「正解がない世界」
経営改善や事業再生には、模範解答がありません。
・売上を伸ばすのか
・事業を縮小するのか
・人を減らすのか、外部を使うのか
・廃業・M&A・第二会社方式を選ぶのか
どれも間違いではなく、その会社に合うかどうかがすべてです。
CPSは、「正解探し」ではなく、「選択肢を設計し、意思決定を支援する思考法」であり、事業再生の現場に極めて適しています。
CPSを経営改善・事業再生にどう活かすか
(1)現状把握:感情を排し、事実で会社を見る
最初のステップは、徹底した現状整理です。
・売上・粗利・固定費の構造
・儲かっている事業、赤字の事業
・人材の配置とボトルネック
・資金繰りと金融機関のスタンス
ここで重要なのは、原因分析を急がないことです。
「なぜ悪くなったか」よりも、「今どうなっているか」を正確に捉えます。
(2)問題定義:本当に解くべき課題を言語化する
次に行うのが、問題の再定義です。
よくある問題設定は次のようなものです。
・「売上が落ちている」
・「人が足りない」
・「借金が多い」
これをCPSでは、次のように変換します。
・「限られた資源で利益を生むにはどうすればよいか」
・「人を増やさず成果を出すにはどうすればよいか」
・「返済可能なキャッシュフローを生む構造にするには?」
問いを変えることで、見える選択肢が変わります。
(3)アイデア発散:あらゆる選択肢を出し切る
ここでは、現実性を一旦横に置き、選択肢を広げます。
・赤字事業からの撤退
・顧客層の見直し
・価格戦略の再設計
・外部人材・外国人材の活用
・事業譲渡、M&A、廃業
重要なのは、「撤退」や「やめる」という選択肢も立派な創造的解決策として扱うことです。
(4)収束:やり切れる解を選ぶ
発散した後は、現実解へと絞り込みます。
・実行スピードはどうか
・キャッシュフロー改善効果はあるか
・社長が覚悟を持てるか
・金融機関に説明できるか
ここで選ぶのは、「一番正しそうな策」ではなく「やり切れる策」です。
(5)実行計画:改善計画・再生計画へ
最後に、選んだ施策を行動に落とします。
・数値目標(PL・CF)
・実行スケジュール
・KPIとモニタリング方法
・想定外が起きた場合の代替案
CPSは、計画書作成がゴールではありません。実行と検証を前提とした「動く計画」をつくるための思考法です。
CPSを使える士業・コンサルが選ばれる時代へ
これからの士業・コンサルタントに求められるのは、
・専門知識
・制度理解
・書類作成能力
に加えて、「経営者の頭の中を整理し、進む道を描く力」です。
創造的問題解決(CPS)は、経営改善・事業再生の現場で、その力を体系的に発揮するための強力な思考フレームです。
まとめ
CPSとは、
経営の正解を教える技術ではなく、経営者と共に「選べる未来」を設計する技術です。
士業・コンサルタントがCPSを身につけることで、「手続の専門家」から「経営の伴走者」へ、その価値は、確実に一段上のステージへ進みます。