事業承継・M&A・廃業 2022年(2)
本記事は、以前のホームページに記載したものを整理したものです。
【1】M&Aは成立後の「PMI」が重要
(20220411)
当社では、
・事業承継・M&Aの支援
・経営改善・事業再生・廃業の支援
・業績向上(販売促進、新商品開発、管理会計)など
・各種の補助金の申請支援(事業再構築補助金・ものづくり補助金)
を行っています。
最近、政府の施策が、経営改善計画書などの作成だけでなく「中小企業の継続支援(伴走型支援)」により力をいれてきています。
例えば、
・「経営改善計画」の実行支援(モニタリング)に補助金を増やす
・「事業再構築補助金」の採択後の継続支援要請
・M&Aの成立後の支援 など
各種の計画の策定や補助金の採択(補助計画の策定)は、それなりに労力を要しますが、その後の実行段階はよりパワーが必要になります。
専門家の支援では、計画策定・承認、補助金の採択の段階が一区切りで、実行段階では企業と離れるケースもあります。
M&Aの場合も同様で、売手企業と買手企業のマッチングに労力を要しますが、M&Aが成立後は、買手企業任せで専門家が手を引いたり、支援の手を緩めることもあります。
中小PMIの支援内容
2022年(令和4年)3月17日に、中小企業庁から、「中小M&Aによって引き継いだ事業の継続・成長に向けた支援メニュー」(略称:中小PMI支援メニュー)が公表され、その中で「中小M&Aガイドライン」が策定されています。
PMIとは?
「POST MERGER INTEGRATION」の略で、主にM&A成立後に行われる統合作業を言います。
M&Aの目的を実現させ、統合の効果を最大化するために必要なプロセスです。
中小PMIガイドライン
策定の背景
近年、事業承継の手段の一つとしてM&Aが注目され、中小企業を当事者とするM&A(中小M&A)が増加しています。
しかしながら、これまではマッチング等のM&Aの成立に向けた取組に関心が集まる一方で、M&Aによって引き継いだ事業の継続・成長に向けた統合やすり合わせ等の取組(PMI)については、その重要性や取組についての中小企業の理解が不足しており、支援機関も少ない状況です。
このため、M&Aを成功に導くためには「事業の引継ぎ(M&Aの成立)」と「引継ぎ事業の継続・成長(PMIの実施)」を車の両輪で進めることが必要との認識の下、中小企業におけるPMIの「型」を提示するとともに、これを推進する支援策をまとめています。
中小M&A・PMIの全体像
次に中小M&AとPMIの全体像を示します。
中小PMIガイドラインの構成
譲受側・譲渡側の会社規模等、個社の状況に応じて参照しやすいよう、PMIの取組を【基礎編】と【発展編】に整理されています。
【基礎編】
● 小規模案件を含めた、全てのM&Aにおいて基本となる取組事項や留意点等を解説しています。
● 主にM&A成立後に、譲受側と譲渡側が一体となってM&Aの目的を実現するための基礎固めの時期(M&A成立後100日~1年程度)において主に円滑な事業の引継ぎに向けた取組を整理しています。
● 特にM&A成立前後において重要度が高い譲受側と譲渡側の間において相互理解を進め、信頼関係を構築するための取組を充実させています。
【発展編】
● M&A成立後の事業の円滑な引継ぎだけでなく、中小企業でも対応可能なシナジー効果等を実現するために行う取組を整理しています。
● 基礎編の内容を押さえつつ、M&Aを契機として譲受側・譲渡側が一体となって成長するために、経営・業務における各領域をいかに統合するかを豊富な事例を交えて解説しています。
● 「経営統合」については、より一体となった経営に向けた、経営の方向性、経営体制、経営の仕組みを確立する取組を掲載しています。「業務統合」については、攻め(シナジー効果発現等)と守り(管理機能の改善等)の両面から取組を掲載しています。
中小企業のM&Aのマッチングに関しては、種々の企業が参入して、マッチングやその支援としての「企業価値評価」などが盛んに行われるようになりました。
一方、今回のPMIについての支援体制はこれからです。PMIの支援では、M&A実施のシナジー効果をいかに出せるか、出すにはどうしたら良いかが重要になります。
その中では、「販売戦略」「商品(製品)開発戦略」「人事・組織戦略」「財務戦略」などを総合的に、効果的に行う必要があります。
【2】コロナ倒産、物価高倒産、そして「後継者難倒産」
(20220903)
これまでに、コロナ関連の倒産、物価高起因の倒産に関して報告してきましたが、それに併せて「後継者難倒産」も進行しています。
先日、知り合いの税理士事務所の方と話をした際に、「「コロナ禍」による業績の不振により予定していた事業承継を先延ばしにしているところが見られる」との話がありました。当面は、現経営者が経営の継続に集中し、事業承継を後回しにしているようです。
今回は、東京商工リサーチが公表している「後継者難」倒産の記事と現在の「事業承継」の状況について紹介します。
コロナ禍の中「後継者難倒産」が増えている
*2022年7月14日の「東京商工リサーチ」の公表資料から
2022年上半期(1~6月)の「後継者難倒産(負債1,000万円以上)」は、前年同期比の17.8%増の224件と急増し、2013年の以降では最高数になっています。
倒産全体(3,060件)の7.3%を占めています。
要因別では、代表者の「死亡」が122件(54.4%)と半数以上で、次いで「体調不良」が71件(31.6%)で、この2要因で、9割近く(86.1%)を占めています。
経営者が高齢のために、環境変化についていけなくなり、業績が悪化しているなかで、「コロナ禍」が追い打ちをかけて益々経営状態が悪化し、残念ながら死亡、体調不良でいかんともし難い状況に追い込まれたと推察されます。
中小企業の経営者の年齢
中小企業白書2022年版に示されている経営者の年齢分布を示します。
2000年に経営者年齢のピークは「50歳~54歳」でしたが、2015年は「65歳~69歳」となり、経営者の高齢化が進んでいます。
また、2020年は経営者年齢の多い層が「60歳~64歳」、「65歳~69歳」、「70歳~74歳」に分散していて、これまでピークを形成していた団塊世代の経営者が事業承継や廃業などで経営者を引退していることが示唆されます。
中小企業のM&Aは増えているが・・・
中小企業白書に示されている「中小企業のM&A」の状況を示します。政府の施策、民間のM&A会社等の活動により、中小企業のM&Aは確実に増えてきています。
2020年の「休廃業・解散件数」は「49,698件」であり、この数に対するM&Aの2020年度のM&A数は「2,139件」で、「休廃業・解散件数」の「5%」にも満たない状況です。
現時点では、経営者の高齢化による事業承継では、M&Aはまだまだ有効な手段になっていないのが現状です。
追い込まれる前に早めの決断を
現在の自社の状況をもう一度冷静に見つめましょう。
当社への相談の中では、「これから良くなる」と思っているうちにどんどんと経営が悪化しているところが多くあります。何とか政府の支援策で支えられているものの、その支援による「特別利益」を除いて整理すると現業の売上・利益がどんどん減少しているところもあります。
相談の中には、昨年1年間赤字が続き、限界と判断して、資金がある内に廃業を決断したところもあります。その打合せの中で、関係者の一人から「あと1年早く決断したらもっと楽に事業を閉じることができたのに・・・」というお話しもありました。
廃業を支援します
先にしめしたように、M&Aの成約数は増えていますが、事業承継が必要な企業の「5%」に過ぎません。
「廃業」はイメージは悪いですが、社会的、法律的には悪いことではありません。赤字なのにぐずぐずと継続して更に経営状況を悪化させて、その結果、倒産に至り、取引先や従業員に迷惑をかけることが悪いことです。
現状を見直して、先の見通しが立たない場合は、「倒産」に至らない前に、早めに廃業を決断して、実行した方が損失が少なくなる可能性が高いです。
「廃業」を前提に進めて、その一連の検討の中で、「M&A」による売却の可能性が見えてくる場合もあります。
当社では、廃業について相談を受け付けています。
日々、こんな悩みを持っていませんか?
・先が見えない「コロナ禍」、時間がどんどん過ぎていき、気持ちは空回り
・月末の支払いが不安で、「資金繰り」のことが頭から離れない
・社長を辞めたいが、今辞めたら借金が残ってしまう
・自宅だけは守りたいがどうしたらよいかが分からない
・この会社の業績では、誰も継いでくれないだろう
・あと、何年、社長を続けなければならないのか?
・夢見ていた楽しい老後はどこにいってしまったのだろうか?
【3】(コロナ禍の中)事業再生とM&Aを考える
(20221210)
新型コロナウィルスの感染拡大、これに伴う緊急事態宣言・営業の自粛により、多くの企業や市民に影響が出ています。初期は、「観光関係(宿泊・顧客輸送業・インバウンド向けの小売り業)」、「居酒屋やクラブなどの飲食業」でしたが、直近は、経済活動の停滞により「製造業」や「建設業」の中でも資金繰りが厳しくなっているところが増えてきています。この流れは今後他の産業にも及びほぼ全ての業種に影響がでてくることが予測されます。
当社にも、資金繰りが難しくなり、「借金の返済の停止(借金カット)」「コロナ緊急融資」などの深刻な相談が入ってきています。リーマンショック後の回復で比較的経済活動は好調でしたので、「後継者不足による廃業」が問題になっていましたが、ここにきて「経営(資金繰り)悪化による倒産・廃業」がクローズアップされてきています。
今回の政府の対策により、一時的に運転資金を得ることができても、市況の回復が進まない場合、この借入金が重荷になってより深刻な状態になる企業が増えてくることが予測されます。この時は、金融機関との調整が必要になりますが、計画がなく場当たり的に、あるいは金融機関の言いなりで進めると、残せる財産も根こそぎ手放す不幸なことになります。
事業再生の出口戦略の一つとして「M&A」があります。今回、「事業再生とM&A」について紹介します。
本記事は、2020年5月に記載したものを2022年12月に転記して紹介しています。
(今後急増する)事業再生とは
事業再生とは、企業が経営状態の良くない事業の立て直しを図ることをいいます。単一の事業しかない場合(特に中小企業)は会社全体の立て直しになります。
具体的には次の状態のときに事業再生が必要になります。
・赤字が継続している
・急激に受注が減少した
・債務超過に陥っている
・銀行への借入金・利息の返済が苦しくなっている、払う目処が立たない
・仕入先へ支払う買掛金を遅らせてもらっている
・従業員への給料の支払が遅れている
・税金、社会保険料などの支払いが滞っている
・役員報酬(社長の給料)が払われていない など
事業再生の種類
事業再生は、進め方により次の3つに分類されます。
1 債務(借金)整理を含む「自力による事業再生」
2 「M&Aによる事業再生」
3 「廃業による事業再生」:倒産は避ける
実際には、気付いた時には、いつ倒産してもおかしくない状態の場合が多く、これらをじっくりと実施することが難しく、まずは、外科手術的な対応(支払を一時的に止めるなど)を行ってから、上記を実施します。対象の企業の経営状況によりますが、各方法の組み合わせで進める場合があります。
事業再生の目的は、倒産、廃業を回避し、自力再生またはM&Aに持って行くことです。
1 自力による事業再生
事業の再構築(販路再検討・生産性向上など)を行って計画的に経営状況を改善する方法です。
この場合、資金が不足する場合、銀行などからの借入金、仕入代金、税金などを交渉により支払を遅らせ、遅らせた分の資金を運転資金に回すことも実施します。また、経営に影響を与えない資産を売却して資金を得ることも検討します。
内部のメンバーだけでは現状分析が不十分、効果的な改善策が得られない場合が多いので、当社のような経営コンサルタント会社や中小企業診断士などの専門家の力を使って実施することが効果的です。この場合、専門家への報酬の支払は国の補助金(経営改善計画)が使用できる場合があります。
2 M&Aによる事業再生
スポンサーに会社や事業を購入してもらう(M&A)方法です。
債務(借金)がある場合、将来性がある事業部分を譲渡(売却)し、債務は元の会社で処理する方法があります。状況によっては債務を含んで購入してもらえる可能性もあります。
3 廃業による事業再生
廃業による事業再生は、上記2つの方法が実践できない場合に会社の清算を図るものです。この場合、経営者の個人資産を保全するなどの損失が少ない形で行うことが重要です。
<M&Aによる事業再生の方法>
収益性が悪い売手企業が事業の全部や一部を買手企業に移す場合、
1 事業譲渡
2 会社分割
の2つの方法があります。
<事業譲渡と会社分割の違い>
会社分割は会社法に規定された「組織再編行為」であるのに対し、事業譲渡は事業を対象とした「取引行為」になります。
両者は、「転籍の従業員の扱い」「債務者への対応」「税金の支払い」「許認可の継承」など多くの点で法律・制度上の扱いが異なりますので、売手、買手の企業の実状に合わせて選択する必要があります。
また、売手の企業が過大な債務(借金)を抱えている場合で、全体として企業活動の継続が難しくなっているが、収益性のある事業を有している場合は、「借金と事業」を分離した、
3 第二会社方式
を使った「M&Aによる事業再生」があります。
1 事業譲渡
事業譲渡は、事業の全部あるいは一部を他社に譲渡する手法(取引行為)です。
売手の会社の経営権を残したまま、譲渡する事業範囲を自由に決められるため、事業再生に活用されます。
売手企業では、経営が上手くいかない事業でも、買手企業では収益を上げられる事業になる可能性があります。
また、売手企業が全部の事業を譲渡し、会社の枠組みはそのまま維持し別の新たな事業を行う場合にも使用します。
事業の売却益は現金で売手企業に支払われ、即座に事業再生のための資金として活用することができます。
2 会社分割
会社分割は、企業組織再編の手法の一つで、その会社の権利義務の全部または一部を、他の会社に承継させることができる制度です。
会計法上、吸収分割と新設分割に区分され、分割した事業を既存の別会社に承継させる場合を「吸収分割」といい、分割した事業を新設の会社として承継させる場合を「新設分割」といいます。
会社分割を活用するメリットとしては、承継する事業の対価を原則株式とすることができるので、新たに資金を調達しなくても良いということがあります。
*「新設分割」の場合、上記の「B事業」用に新規の会社を設立します。
3 第二会社方式
第二会社方式は、次図のA社の中で、収益性のある(残したい)事業を、「事業譲渡」や「会社分割」の方法で、第二会社(B社:新設会社や別会社:M&A)に移転させておき、A社を「特別清算」等の手続きによって法人格を消滅させる方法です。
単純に会社を倒産や廃業で消滅させてしまうと技術や雇用が消失してしまいますが、負債(借金)を切り離して収益性のある事業だけを引き継げば事業再生を果たすことができます。
元の会社が抱えていた債務や不採算事業は、元の会社の消滅とともに整理することができます。
<第二会社方式の進め方>
① 事業の選択と引継ぎ先の選定
将来性も考慮して残すべき事業を選択します。
事業を選択したら、譲受企業の選定を行います。
自社だけで見つけることは難しいので、M&A・事業再生の専門家に相談することをお勧めします。
② 事業の切り出し
事業譲渡または会社分割によって、事業の切り出しを行います。残す事業の選択や譲受企業との交渉を経たうえで、最適な方法を選定します。
③ 特別清算手続き
最後に元の会社に残された債務を整理するために、特別清算手続きを行います。
M&Aによる事業再生は、多額の債務(借金)がある場合が多く、譲渡先(買手)を探し出すことも簡単ではありません。
また、債務の処理、従業員の転籍、税金の支払い、許認可など多くの課題に取り組むことが必要になります。
当社では、これまでの「事業再生」の経験と、「M&Aプラットホーム:バトンズ」を使用して、「M&Aを使用した事業再生」を進めることができます。
<M&Aによる事業再生のメリット>
M&Aによる事業再生の主なメリットを示します。
1 廃業・倒産を避けることができる
2 第三者が事業再生を支援してくれる
3 経営者が再出発できる(人生の再設計)
1 廃業・倒産を避けることができる
M&Aによる事業再生で最も大きなメリットは、「廃業や倒産」を避けることができることです。
借入金を返済できない、税金・社会保険料を滞納している、従業員の給料を払えないなどの財務状況が悪化している状態では、新たな資金調達の道は閉ざされ、自力での事業再生はほぼ不可能です。
この時に、相乗効果が来たできる他社が引き継いでくれたら、立ち直る道が開け、これまでの「技術・ノウハウの蓄積」や「従業員の雇用の継続」を守れる可能性が出てきます。
2 第三者が事業再生を支援してくれる
M&A、まして事業再生が伴う場合は、自社だけで進めることはほぼ不可能です。
「M&A」と「事業再生」に詳しい専門家に支援を依頼することにより、次のことが可能になります。
・現状分析:現在の会社の状況(事業及び財務)を客観的に把握することができる
・事業の選択:必要な事業(残すべき事業)、不要な事業(M&Aの対象)を将来性も含めて判断することができる
・M&A先の選定:専門家の支援を受けながら「M&Aマッチングサイト」などを利用してM&A先を探すことができる
3 経営者が再出発できる(人生の再設計)
経営者にとって「M&Aによる事業再生」を行うことにより、たとえ借金が残ったとしても先が見える状況になります。
この「M&Aによる事業再生」のステップを経験することにより、経営者自身の「強み・弱み」を認識することができ、残した事業を継続するにしろ、新たな別の事業を行うにしろ、実効性のある事業計画(人生設計)を立てることが可能になります。
以上「M&Aによる事業再生」のメリットを記載しましたが、実際には、多額の債務(借金)がある場合が多く、譲渡先(買手)を探し出すことも簡単ではありません。
また、債務の処理、従業員の転籍、税金の支払い、許認可など多くの課題に取り組むことが必要になります。
このときに最も重要なのは「経営者の信念」です。事業再生を実施の場合、当事者である経営者の気持ちが不安定になり、あきらめの気持ちが出る場合があります。
「会社はお金がなくてもつぶれない。社長があきらめた時につぶれる」
当社では、これまでの「事業再生」の経験と、「M&Aプラットホーム:バトンズ」を使用して、経営者に寄り添いながら「M&Aを使用した事業再生」を進めることができます。
当社は、バトンズの「総合M&Aアドバイザー」として、中小企業のM&Aを支援しています。
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