事業承継・M&A・廃業 2017年
本記事は、以前のホームページに記載したものをまとめたものです。
【1】事業継続に不安を感じた時に:大きく3つの選択
(20170526)
事業の継続に不安を感じた時の手段は、大きく次の3つです。
(1)経営改善(再生) *立ち直る
(2)廃業・破産 *やめる
(3)事業承継 *ゆずる
今回は、これらの概要を説明します。
不安を感じた際は、一人で悩まず、当社にお問い合わせ願います。
まずは、お悩みをじっくりと聞かせて頂きます。
現在の経営の中で、次のようなことはありませんか。
・主力製品(商品)の売上が減少している
・いつも通りに経営しているつもりだが、利益が減ってきている
・売れ残りの在庫が増えている
・銀行から新規の融資を断られた
・売掛金が焦げ付いて回収できなくなり、支払いができなくなった
・税金や社会保険の支払いが遅れている
程度の差はありますが、経営者の方は、何らかの不安を抱えていらっしゃると思います。
また、経営が順調であっても、病気になったり、高齢になったりして、先のことに不安を感じている方は多いと思います。
事業継続の岐路に立たされた場合、大事なことは、現状を正しく認識して、先の光を感じることができるかどうかです。
そのためには、「経営者の意欲と覚悟」が最も重要になります。
会社を、従業員を正しい方向に導けるのは、経営者しかいません。
(1) 経営改善(事業再生)
銀行からの借入金の返済に困ったときなどの先に不安を感じたときのポイントとしては次の3点が挙げられます。
① 経営者に事業を改善(再生)して、事業を継続していく「意欲と覚悟」があるか?
② 今後、営業利益を安定して出していける見通しがあるか?
③ 関係者の理解・協力・支援を得られるか?
これらの基本的なことを頭に入れて、以下に事業改善のステップを説明します。
現状の正確な姿の把握
まず、現在の状況を正確に把握することが重要です。
現状が把握できれば、例え悪い現状であっても、わけがわからなく不安な状態よりも、精神的にも安心感が出てきて、先を考えることができます。
悪ければ落ち込むのではなく、開き直れば良いのです。
現状分析では、主に次の2点を行います。
・資金繰りの状況(向こう半年の予測):どれだけ資金が続くのか?
・3年分の決算書の分析(損益計算書・貸借対照表):どこに問題があるか?
この際の分析として、「セグメント別の業績分析」が有効です。
https://kitakyushu-assist.com/blog/bussiness-support/post-1401.html
原因の推定から改善の方向性
上記の原因分析から、原因を推定して改善の方向性を出します。
この段階で気を付けたいのは、原因を深く追及して、気持ちを暗くしないことです。
原因追及の一方で、先の光を見い出せる改善策を前向きに考えることが必要です。
改善策を考えるためには、まずは、自社の強みをきちんと認識することです。
具体的な計画の策定
上記の改善策を決定したらその具体化を計画書に落とし込みます。
この際は面倒でも「業績の数値計画」も行って下さい。
金融機関に返済を一時的に止める場合(リスケジュール)、金融機関にいつからどのように返済できるか、その根拠を示す必要があります。
目安は、「3年以内に経常利益の黒字化」、「5年以内に債務超過の解消」、「債務超過解消後10年以内に借入金の返済終了」です。
定期的な管理体制の確立
社長や経営者が指示をしなくてもきちんと動ける会社が理想ですが、何らかの管理体制が必要なのが現状です。
・財務会計の管理体制
税理士任せ、経理の担当者任せを脱却して、経営者が判断できるデータを早く完成する仕組みを作りましょう。
状況が早く知ることができれば、改善も早くできます。
月次の決算(試算表)と資金繰り実績は、翌月の3営業日までには多少精度が悪くても一旦まとめて、5営業日までには「現状把握と対策会議」を実施できる体制を築きましょう。
・業務の進捗の管理体制
策定した計画をしっかりと実行しつつ、定期的(毎月)に確認を行い適切な計画修正を実施しましょう・
*PDCAサイクルのレベルアップ
・人の面の管理体制
会社が成長・発展するには、そこに働く経営者を含めた全ての従業員の力が必要です。
特に、組織的に展開する場合、各組織のリーダーの役割が重要です。
適切な人事制度(評価制度)の構築を含めて、人の教育を考えていきましょう。
(2) 廃業(清算)・破産
事業改善(再生)をあきらめて会社経営をやめる場合、廃業(清算)手続きと破産手続きのどちらかを選択します。
選択の基準は「負債(借金・銀行の借入)を全て払うことができるかどうか」で決まります。
負債よりもお金に換えられる資産が多い場合(資産超過)で、債権者に全額の返済が可能であれば廃業(清算)を選択します。
一方、資産より負債の方が多い場合(債務超過)で、債権者に全額支払いができない場合は、破産を選択します。
廃業(清算)の手続き
会社法の清算の手続きに沿って処理を進めます(通常2ヶ月以上かかります)。
手続きの中で、確定申告や登記申請が必要になりますので、税理士や司法書士への依頼も必要になります。
また、一連の処理の中で、紛争が生じた場合は、弁護士に依頼する可能性もあります。
当事務所では、廃業(清算)の一連の支援を行うことができ、税理士、司法書士、税理士と連携していますので、一連の処理の中で必要な場合も対応が可能です。
廃業(清算)は、会社の余力があるうちに検討するのも意味があります。
例えば、現在の業績は良いが、現在の事業は今後の変化(経済の環境面、法律の改正、代替技術の出現)によって、衰退かまたは消滅してしまう可能性が高い場合です。
この場合は一旦廃業し、清算で残った資本で、次の有望な事業を立ち上げるのも良い選択(第二創業)かと思います。
破産の手続き
会社の負債が資産よりも多い場合(債務超過)や支払不能により債権者に全額の支払いができない場合は破産を選択せざるを得ません。
破産手続きは、裁判所から選任された破産管財人が、破産者の財産をお金に換えて、債権者に平等に配当することを目的にした制度です。
手続きは破産法に従って進められます。
「破産」は絶対に避けたい方法です。
会社が破産する場合、債権者のみならず、多くの関係者に影響します。
経営の異常に少しでも気づいた場合は、早めに、当事務所にご相談下さい。
(3) 事業承継
事業承継とは、会社の事業を後継者に承継させることをいいます。
中小企業経営者の高齢化が進んでいて、優れた技術やノウハウなどを次世代に伝えるためにも、事業承継は重要なテーマです。
経営者の中には、「自分の目の黒いうちは誰にも経営権は渡さない」という方も多く見られますが、自分の功績を後世に確実に引き渡すことは大事なことです。
自分が「事業を始めたとき」「先代から事業を引き継いだとき」から、その後の事業承継を考えていくくらいの気持ちが必要です。
<事業承継の分類>
事業承継には、大きく次の3つに分類されます。
① 親族内承継
自分の子供や親戚に継がせる場合です。
一般に他の分類と比べて、社内外の関係者の理解も得やすく、事業承継の準備期間を長くとることができるメリットがあります。
しかし、近年は、継がせる子供がいない、いても継がせたくない(子供が継ぎたくない)というケースが増えています。
② 親族外承継(役員・従業員承継)
親族以外の役員・従業員に承継する方法です。
社内で経営の意欲と能力を持つ者を見極めて後継者を選ぶことができ、経営の一貫性を保ちやすいメリットがあります。
ただし、親族内承継の場合とは異なり、有償での譲渡になることが多く、後継者に資金がない場合は問題になってきます。
③ 社外への引継ぎ(M&A)
株式譲渡や事業譲渡といったM&Aの方法により社外に引き継ぐ方法です。
親族や社内に適切な後継者がいない場合の選択肢になります。
「M&Aは大企業対象?」「身売りや乗っ取り?」というイメージがあるかと思いますが、近年は、中小企業の事業を継続させる手法として多く使われはじめています。
広く社外に後継者候補を求めることができ、また従業員の雇用を守り、取引先との関係を継続できるメリットがあります。
M&Aの場合は、「事業を買ってくれる会社がある」ことが前提となるので、自社の事業の価値を高めて、買い手がつくように魅力的なものにしておく必要があります。
また、一部の事業に魅力(収益力が高いなど)があれば、その事業だけを切り離して売ることも可能です。
親族内承継や親族外承継には、後継者教育や株式の移転(経営権の引き渡し)など、時間と労力が必要です。
また、社外への引継ぎ(M&A)には、相手方の選定、いかに有利な売却ができるかの対策など、この場合も時間と労力が必要です。
事業承継の初期の段階では、選択肢を広く持つことが必要です。
例えば、承継として「長男」を予定していて後継者教育を実施していたが、親子間の対立や長男の奥さんの反対などで、結局承継できなかった。
教育に時間がかかっていたので、この時点では自分が高齢化して、次の後継者を決定し育成する気力がなくなってしまった。
この場合は、長男の承継を前提に進めますが、他の「親族外承継」や「社外への引継ぎ(M&A)」も視野にした計画を進めることが必要です。
また、事業承継に関しては、国や自治体は重要なテーマとして選定し、様々な制度を実施していますので、その制度を有効に利用することも今後重要になります。
現在は、年間当たり約15万社、1日当たり約400社が廃業している状況です。
特に最近は、後継者不足、人手不足、環境・事業構造の変化によるビジネスモデルの陳腐化などによる廃業が増えてきています。
廃業を防ぐためには、日頃の管理・仕組み作りが重要になります。
当社では、現状分析から始まり、経営改善・経営発展のための戦略作りを経営者の方と一緒に検討していきます。
【2】事業承継の3つの類型と診断票
(20170602)
中小企業の経営者の高齢化が進み、現在、多くの中小企業が事業承継の時期を迎えています。
2019年12月、経済産業省によると、2025年に70歳を超える中小企業経営者が「245万人」になり、そのうち半数は後継者未定という厳しい状況です。
政府は、後継者未定企業(約120万者)の約半数の「60万者(黒字企業を想定)」を今後10年間に「M&A」による承継を行うことを目標にしています。年に「6万者」という非常に高い数値です。なお、直近の1年間で「4,000者」なので、10倍以上を目指しています。
当然、「M&Aに関係するコンサルタント」を増やしていく必要があります。1人が年間6件を成立させても、「10,000人」のコンサルタントが必要になります。
今回は、事業承継の「3つの類型」の説明と、金融機関や商工会議所及び当社のような「事業承継」を専門としている相談員が最初に行う主な質問内容(診断票)を紹介します。
事業承継の3つの類型
事業承継の類型は、①親族内承継、②親族外(役員・従業員)承継、③社外への引継ぎ(M&A)です。
1 親族内承継
現経営者の子をはじめとした親族に承継させる方法です。
メリットとしては次のことが挙げられます。
・他の方法と比べて、内外の関係者から受け入れられやすい
・後継者の早期決定により長期の準備期間の確保が可能である
・相続等により財産や株式を後継者に移転できるため、所有と経営の一体的な承継が期待できる
ここ数年は、事業承継全体に占める親族内承継の割合が急速に落ちてきています。
子供がいない場合もありますが、いても「事業の将来性や不安定な経営」に対する不安があり、より安定な職業につくケースが多くなっています。
経営者である親も子供に苦労させたくないという気持ちもあります。
2 親族外(役員・従業員)承継
「親族以外」の役員・従業員に承継する方法です。
メリットとして、次のことが挙げられます。
・経営者としての能力のある人材を見極めて承継することができる
・社内で長年働いてきた従業員であれば経営の一貫性が保ちやすい
親族内承継の減少を補うように、親族外承継の割合は近年増えてきています。
これまで親族外承継の課題であった「資金力問題」については、次の点で緩和されてきたことによります。
・種類株式や持株会社、従業員持株会を活用する方法の浸透
・親族外の後継者も「事業承継税制」の対象になったこと
3 社外への引継ぎ(M&A)
株式譲渡や事業譲渡により「第3者」に承継を行う方法です。
メリットとしては次の点が挙げられます。
・親族や社内に適任者がいない場合でも幅広く候補者を外部に求めることができる
・現経営者は、会社売却の利益を得ることができる
M&Aは過去は大企業が中心でしたが、近年は中小企業の後継者の確保の難しさから増加傾向にあります。
中小企業のM&Aを手掛ける民間仲介業者が増えてきたことや、国の事業引継ぎセンターが全国に設置されたことも増加の要因になっています。中小企業・小規模事業者のM&Aでは、ネットを使ったマッチングが増えてきています。
M&Aの場合、受け継ぐ側が価値を見出さないと成立しなく、現経営者が利益を得ることができません。
そのためには、計画的に企業価値を高めておく必要があります。
事業承継診断票
中小企業庁の「事業承継ガイドライン」に示されている、金融機関や商工会議所及び当事務所のような「事業承継」を専門としている相談員が、最初にヒアリングを行う際に使用する質問内容です。
これにより、最初に示した「3つの類型」のどれが最も可能性が高いか、現状のどこに問題点があるかを把握するものです。
Q1:会社の10年後の夢を語り合える後継者候補がいますか?
*「はい」⇒Q2、「いいえ」⇒Q7
Q2:後継者本人に対して、会社を託す意思があることを明確に伝えましたか?
*「はい」⇒Q3~Q6、「いいえ」⇒Q8~Q9
Q3:候補者に対する経営者教育や、人脈・技術などの引継ぎ等、具体的な準備を進めていますか?
Q4:役員や従業員、取引先など関係者の理解や協力が得られるよう取り組んでいますか?
Q5:事業承継に向けた準備(財務、税務、人事等の総点検)に取りかかっていますか?
Q6:事業承継の準備を相談する先がありますか?
Q7:親族内や役員・従業員等の中で後継者候補にしたい人材はいますか?
*「はい」⇒Q8~Q9、「いいえ」⇒Q10~Q12
Q8:事業承継を行うためには、候補者を説得し、合意を得た後、後継者教育や引継ぎなどを行う準備期間が必要ですが、その時間を十分にとることができますか?
Q9:未だに後継者に承継の打診をしていない理由が明確ですか?(後継者が若すぎる など)
Q10:事業を売却や譲渡などによって引継ぐ相手先の候補はありますか?
Q11:事業を売却や譲渡などについて、相談する専門家はいますか?
Q12:実際にその専門家と相談を行っていますか?
※Q3~Q6で1つ以上「いいえ」と回答した方
円滑に事業承継を進めていくために、事業承継計画の策定による計画的な取り組みが求められています
※Q8~Q9で1つ以上「いいえ」と回答した方
企業の存続に向けて、具体的に事業承継についての課題の整理や方向性の検討を行う必要があります
※Q10~Q12で1つ以上「いいえ」と回答した方
当事務所など事業承継の専門家に相談下さい
上記の「Q1~Q12」の流れを次に示します。
事業承継は、個々の会社の実状によって進め方は異なります。
1つの方法にとらわれない柔軟な対応も必要です。
まずは、現経営者が会社の将来を考えて、事業承継を実施する気持ちになることが大事です。
【3】事業承継では「何を」承継するのか?
(20170623)
先に事業承継の3つの類型(親族内承継・親族外承継・社外への引継ぎ)を紹介しました。
これは、経営の基本の「誰に・何を・どのように」の中の「誰に」に該当します。
今回はこの要素の中の「何を」に注目した内容を紹介します。
最後の「どのように」は目的や状況によって様々な方法がありますので、順次、紹介していきます。
3つの引き継ぐもの
後継者に承継すべき経営資源は、次のものがあります・
(1) 人:社長の役割と経営権
(2) 資産:自社株式、事業用資産(設備・不動産など)、資金(運転資金・借入など)
(3) 知的資産(目に見えない経営資源):経営理念、従業員の技術や技能、ノウハウ、経営者の信用、取引先との人脈、顧客情報、知的財産権(特許等)、許認可など
(1) 人の承継
人の承継とは、後継者への経営権の承継を指します。
会社形態であれば「代表取締役の交代」、個人事業主であれば「現経営者の廃業・後継者の開業」になります。
現経営者が維持・成長させてきた事業を誰の手に委ねるべきか、適切な後継者の選定は事業承継の成否を決する極めて重要な問題です。
特に、中小企業においてはノウハウや取引関係等が経営者個人に集中していることが多いため、事業の円滑な運営や業績が経営者の資質に大きく左右される傾向があります。
「誰に」承継するかは、以前の記事を参照願います。
(2) 資産の承継
資産の承継とは、事業を行うために必要な資産(設備や不動産などの事業用資産、債権、債務)の承継を指します。
会社形態であれば、会社所有の資産の価値は株式に含まれるので、株式の承継が基本になります。
個人事業主の場合は、機械設備や不動産等の事業用資産を現経営者個人が所有していることが多いため、個々の資産を承継する必要があります。
また、株式・事業用資産を贈与・相続により承継する場合、資産の状況によっては多額の贈与税・相続税が発生することがあります。
この資産の承継の方法については、様々な制度、方法がありますので、別記事で紹介します。
(3) 知的資産の承継
● 知的資産とは何か
知的資産とは「企業の財務諸表」に記載されている資産以外の無形のものです。
人材、技術、技能、知的財産(特許・ブランドなど)、組織力、経営理念、顧客とのネットワークなどで、企業における競争力の源泉です。
中小企業においては、経営者と従業員の信頼関係が事業運営において大きな比重を占めています。
経営者が代わってもその信頼関係を承継できるように準備しておくことが必要です。
また、顧客や仕入先、金融機関などの外部との信頼関係の維持も重要になります。
● 知的資産の承継のために
知的資産こそが会社の「強み」・「価値の源泉」であることから、知的資産を承継することができなければ、将来的に事業の継続すら危ぶまれる事態に陥ることも考えられます。
そのため、事業承継に際しては、自社の強み・価値の源泉がどこにあるのかを現経営者が理解し、これを後継者に承継するための取り組みが重要です。
事業承継の場合、会社の株式や資産を引き継ぐ「物的事業承継」に目が向けられますが、「目にみえにくい経営資源」の引継ぎの方が会社の継続・発展には重要です。
ビジネスの多くは、人との結びつきによって維持されています。
社長だけの引継ぎではなく、その周囲の幹部などの引継ぎも合せて考えることが重要です。
また、社長の交代に合わせた組織の見直しと再編が人的事業承継を成功させるための大きなポイントになります。
事業承継は、個々の会社の状況や取り巻く環境によって様々な進め方を検討する必要があります。
スムーズに行うためには、「現経営者の意思」「早い段階の着手」が必要で、専門家に支援を依頼することも選択肢の一つです。
【4】「GDP:22兆円、雇用:650万人」消失~事業承継待ったなし~
(20171201)
事業承継の問題をこのまま放置すると、2025年頃までの10年間の累計で、22兆円の国内総生産(GDP)と約650万人の雇用が失われるという記事が、2017年11月14日の日刊工業新聞に掲載されていました。
「事業承継」の現状と今後の対応について紹介します。
現状を認識しましょう
社長の高齢化
現在、社長さんの平均年齢は「60歳を超えて」、今後10年間で70歳を超える社長さんは約245万人で、この内半分の127万人が後継者が決まっていません。
企業の業績が良くても後継者がいないので、廃業しなくてはならない企業が続出します。
当然、廃業により従業員の雇用が消失、場合によっては、中小企業の技術力で成り立っていた精密部品が入手できなくて、大企業の生産や開発がストップする可能性もあります。
廃業が開業(創業)を上回る
廃業者数よりも開業者数が上回れば、当然企業数は増えます。
しかし、政府や地方自治体、商工会議所や銀行などが「創業セミナー」を盛んに実施していますが、現状は廃業が多い状況です。
「中小企業白書の2017年版」に記載の2009年から2014年の企業数(会社数+個人事業者数)の変化では、
廃業企業:113万者 ー 創業企業:66万者 = 39万者の減少、
ちなみに存続企業は、304万者で、創業企業と併せて存在企業は「382万者」です。
廃業の中には、経営状況が良い企業もあり、これを引き継ぐことができれば、先に示した損失を減らすことができます。
なぜ、承継が進まないのか?
最大の原因は、今の社長さんにあります。
多くの人は、元気なうちは「承継問題」を先送りします。
頭の片隅で気にはなっているのですが、現在の仕事で忙しくて考える余裕がなく、そして銀行や主要な取引先から「社長、事業承継はどうするのですか?」と言われ、慌てるケースが大半だと思います。
そういう場合の多くは手遅れ状態になっていると思います。
「60歳になったら事業承継に着手しましょう!」とのキャッチフレーズを目にします。
間違ってはいないと思いますが、もう少し、あと5年ほど早い方が良いと思います。
「事業承継」の要は「後継者」
中小企業、特に小規模事業者の場合、社長が承継を意識した時に、後継者がいることはめったにありません。
人が育つのは時間がかかります。
早くても5年、場合によっては10年かかります。
後継者のためにも、早めに指定して、伴走しながら育てていく必要があります。
では後継者をどうするか?
早めに10年先を考えて「事業承継」を進めることです。
最初は後継者を幅広く考えることです。
① 子供を中心とした親族内で考える
② 従業員や関係取引先など親族外から考える
③ 「会社売却(株式売却)」「事業譲渡」も選択肢に入れる:M&A
現在は、子供がいない、あるいはいても跡を継がない(別の職業を選択)ケースが多く、②、③が選択されるケースが多くなっています。
なかには、「自分の代限り」と思っている経営者の方もいらっしゃると思います。
もう一度考えてみませんか、多くの方々と苦労して築いた会社、後世に残したいと思いませんか?
円滑な承継を妨げる「税金の壁」
国は、日本経済、特に中小企業にとって、「事業承継」が将来の重要な課題と認識しています。
そのため、特に直近は、「事業承継」について、様々な施策を打ち出しています。
その中で「事業承継税制」として対策を実施していますが、諸外国の税金の制度に比べると不十分です。
諸外国の制度は「納税免除」が多いですが、日本の場合は「納税猶予」で、状況によっては軽減されないことになります。
国の税収が不足しているのは理解できますが、この廃業が益々増える「国難」においては、思い切った対策を打ち、企業が存続して利益を上げて法人税を増やす方向を示すべきと思います。
今後更なる減税に変えていかざるを得ないと思います。
事業承継の相談は「信頼」ある機関に:官より民?
事業承継は誰に相談しますか?
商工会議所?、銀行?、税理士?、コンサルタント?など各機関が相談を受け付けています。
公の機関では、無料の場合が多く情報を入手する面では良いと思いますが、最後まで責任を持ってくれるかはわかりません。
お金を出してでも、状況を的確に把握して、総合的な視点で方針・方策を考え、最後まで伴走してくれる機関(この場合は民間が多い)に相談することをお勧めします。