事業再生の手法(6)私的整理ではないが、民事再生の活用 - 事業パートナー九州 北九州市(福岡県)経営コンサルタント

事業再生の手法(6)私的整理ではないが、民事再生の活用

~事業を残すための最後の選択肢となることもある法的整理~

これまで本シリーズでは、

  • 私的整理
  • スポンサー型再生
  • 事業再生型M&A
  • 活性化協議会を活用した再生

などについて紹介してきました。

事業再生というと、多くの場合は金融機関との協議による「私的整理」が中心になります。

しかし、企業の状況によっては、私的整理では対応できないケースもあります。

例えば、

  • 金融機関との合意形成が難しい
  • 債権者数が多い
  • 過大な債務を抱えている
  • 資金繰りが極めて厳しい

といった場合です。

このようなときに検討されるのが「民事再生」です。

「民事再生」と聞くと、「倒産」「会社が終わる」というイメージを持つ方も少なくありません。

しかし実際には、民事再生は会社を清算する制度ではなく、「会社を残すための制度」です。

今回は、事業再生の手法としての民事再生について紹介します。

これまでの事業再生の手法に関する記事

(1)「私的整理にはどのような方法があるのか?」はこちら

(2)「当社の私的整理への取組について」はこちら

(3)「スポンサーの支援を受ける事業再生」はこちら

(4)「事業再生型M&Aという選択肢」はこちら

(5)「活性化協議会に事業再生が受け付けられなかった場合の対応」はこちら

民事再生とは

民事再生とは、裁判所の関与のもとで事業再建を進める法的整理手続きです。

会社更生や破産と同じ法的整理の一つですが、その目的は大きく異なります。

破産が会社を清算する手続きであるのに対し、民事再生は会社を存続させながら再建を図る制度です。

また、会社更生は主に大企業向けですが、民事再生は中小企業でも利用しやすい制度として設計されています。

私的整理との違い

これまで紹介してきた私的整理は、

  • 金融機関との話し合い
  • 債権者との任意の合意

によって進められます。

一方、民事再生は裁判所が関与します。

私的整理では債権者全員の協力が必要ですが、民事再生では一定の多数決によって再生計画を成立させることができます。

そのため、「一部の金融機関が反対している」「債権者が多すぎて調整できない」という場合でも再建できる可能性があります。

民事再生の特徴

民事再生には次のような特徴があります。

(1)経営者が残ることができる

会社更生の場合は経営陣が退任することが一般的ですが、民事再生では原則として現在の経営者が事業を継続できます。

これは中小企業にとって非常に大きな特徴です。

(2)債務を大幅に圧縮できる

民事再生では、裁判所の認可を受けることで債務を大幅に圧縮できます。

例えば、

  • 10億円の債務を3億円程度に圧縮
  • 残額を長期分割返済

といった再建も可能です。

(3)債権者全員の同意は不要

私的整理との最大の違いです。

一定割合以上の債権者が賛成すれば再生計画を成立させることができます。

(4)法的拘束力がある

再生計画が認可されると、反対した債権者にも効力が及びます。

そのため、私的整理よりも強力な再建手法と言えます。

民事再生を検討するケース

当社でも過剰債務を抱えた企業の相談を受けた際に、民事再生を検討したことがあります。

一般的には次のような場合です。

ケース(1)過大債務を抱えている

例えば、

  • 借入金が売上規模に対して大きすぎる
  • 利益では返済できない
  • 金利負担が重い

場合です。

事業自体は利益を出せる可能性があっても、借入金が重すぎて再建できないケースがあります。

このような場合、債務圧縮ができる民事再生は有効です。

ケース(2)私的整理が成立しない

金融機関や債権者の一部が反対している場合です。

私的整理では全員の協力が必要ですが、民事再生では多数決で進めることができます。

ケース(3)事業そのものには価値がある

例えば、

  • 技術力が高い
  • 顧客基盤がある
  • 従業員が優秀
  • 地域で重要な役割を持つ

企業です。

事業価値が残っているなら、会社を清算するよりも民事再生によって存続を図る方が合理的です。

ケース(4)スポンサーが存在する

スポンサー企業がいる場合、民事再生は成功しやすくなります。

スポンサーから、

  • 資金
  • 人材
  • 販路

の支援を受けられるためです。

民事再生が成功しやすい企業

民事再生が成功する企業には共通点があります。

本業が黒字または黒字化可能

最も重要なポイントです。

借金が多くても、本業が利益を出せるなら再生の可能性があります。

経営者に改善意欲がある

民事再生は魔法の制度ではありません。

再生計画を実行するのは経営者自身です。

従業員や取引先の協力が得られる

再建には社内外の協力が不可欠です。

スポンサーや支援者がいる

再生後の成長戦略が描きやすくなります。

民事再生が失敗するケース

一方で、民事再生を申し立てても失敗するケースがあります。

本業が赤字のまま

借金を減らしても利益が出なければ再建できません。

再生計画が現実的でない

希望的観測だけの売上計画では、債権者も裁判所も認めません。

資金不足

民事再生には申立費用や運転資金が必要です。

再生手続中の資金繰りも重要になります。

信頼を失っている

粉飾決算や不適切な経営があると、債権者や取引先の協力が得られません。

民事再生のデメリット

民事再生には次のようなデメリットもあります。

  • 官報公告される
  • 信用が低下する
  • 一部取引先が離れる可能性がある
  • 弁護士費用などのコストがかかる
  • 手続きが複雑

また、裁判所の管理下で進むため、私的整理よりも自由度は低くなります。

当社の考え方

当社では、事業再生の相談を受けた場合、まずは私的整理による解決を検討します。

なぜなら、

  • 非公開で進められる
  • 信用低下を抑えられる
  • コスト負担が少ない

からです。

しかし、

  • 過大債務
  • 債権者との調整困難
  • 私的整理が成立しない

場合には、民事再生も有力な選択肢になります。

重要なのは、「民事再生か破産か」ではなく、「会社を残せる可能性があるか」という視点です。

まとめ

民事再生は、裁判所を利用する法的整理ですが、その目的は会社を潰すことではありません。

むしろ、

  • 会社を残す
  • 雇用を守る
  • 事業価値を維持する

ための再建制度です。

私的整理で対応できない場合でも、民事再生によって再建できる企業は少なくありません。

当社では、私的整理、スポンサー支援、M&A、民事再生、廃業支援まで含めて、企業ごとに最適な出口戦略をご提案しています。

事業再生で重要なのは、「どの手法が良いか」ではなく、「その会社に最も適した手法を選ぶこと」です。民事再生も、その有力な選択肢の一つと言えるでしょう。

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事業再生の手法・バックナンバー

(1)「私的整理にはどのような方法があるのか?」はこちら

(2)「当社の私的整理への取組について」はこちら

(3)「スポンサーの支援を受ける事業再生」はこちら

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