強い会社をつくる(2)利益が残る会社のつくり方
― 売上よりも利益率を高める経営へ ―
前回は、「資金繰りが会社の命を守る」をテーマに、会社は利益ではなく資金が不足することで倒産すること、そして資金繰り管理の重要性についてご紹介しました。
しかし、資金繰りを安定させるためには、その源泉となる「利益」を確保しなければなりません。
「売上が増えれば会社は良くなる。」このように考える経営者は少なくありません。
もちろん、売上を伸ばすことは企業成長の大切な要素です。しかし、利益が伴わない売上の拡大は、経営を苦しくすることさえあります。
今回は、「利益が残る会社づくり」をテーマに、利益率の改善、価格戦略、固定費の見直し、高付加価値経営について考えてみたいと思います。
売上至上主義の落とし穴
「昨年より売上は20%伸びました。」一見すると素晴らしい経営成果に見えます。
ところが、決算書を見ると利益は前年より減少している会社は決して珍しくありません。
なぜでしょうか。
その理由は、売上を伸ばすために、
- 値引きを繰り返した
- 利益率の低い仕事を受注した
- 人件費や外注費が増えた
- 広告宣伝費が増加した
など、売上以上にコストが増えてしまうからです。
つまり、「売上が増えた」ことと「会社が儲かった」ことは、必ずしも一致しません。
経営者が本当に見るべき数字は、「売上高」ではなく、「営業利益」や「付加価値額」です。
付加価値額とは、企業が仕入れた原材料や商品、外注サービスなどに、自社の技術・人材・設備・ノウハウを加えることで、新たに生み出した価値の金額です。一般には、売上高から材料費、仕入高、外注費などの外部購入費用を差し引いて算出します。この付加価値から人件費、減価償却費、利息、税金、利益などが支払われるため、企業の稼ぐ力や生産性を示す重要な指標です。
利益率を改善することが経営改善の第一歩
利益率とは、「売上のうち、どれだけ利益として残るか」を示す指標です。
例えば、年間売上が1億円の会社で利益率が2%なら利益は200万円です。
一方、利益率が5%になれば利益は500万円になります。
売上を1億5,000万円に伸ばすよりも、利益率を改善する方が、現実的で効果が大きい場合も少なくありません。
利益率を改善するためには、
- 利益率の高い商品・サービスを増やす
- 利益率の低い仕事を見直す
- 原価を適正に管理する
といった視点が重要です。
経営改善では、「何を売るか」だけではなく、「何をやめるか」という判断も欠かせません。
値上げは「悪」ではない
近年、原材料費や人件費、物流費など、企業を取り巻くコストは大きく上昇しています。
それにもかかわらず、「価格を上げるとお客様が離れてしまう。」という不安から、長年価格を据え置いている企業も多く見受けられます。
しかし、適正な利益が確保できなければ、
- 人材への投資
- 設備更新
- 新商品開発
もできなくなります。
結果として、お客様に提供する価値も低下してしまいます。
値上げは利益を増やすためだけではありません。「企業が継続して価値を提供し続けるため」に必要な経営判断なのです。
もちろん、一律に価格を上げればよいというものではありません。
重要なのは、「なぜ値上げが必要なのか」をお客様に丁寧に説明し、品質やサービスの向上と合わせて理解を得ることです。
価格競争ではなく、価値競争へ。
この発想の転換が求められています。
固定費を見直すだけで利益は変わる
利益改善というと、まず売上アップを考えがちですが、固定費の見直しも非常に効果があります。
例えば、
- 使われていない事務所や倉庫
- 利用頻度の低いシステム
- 重複している保険
- 不要なサブスクリプション
- 過剰な在庫
などは、毎月利益を圧迫しています。
固定費は、一度削減するとその効果が継続します。
一方で、人件費については慎重な判断が必要です。
人件費は単なるコストではなく、将来の利益を生み出す「投資」でもあります。
安易な人員削減ではなく、業務改善やDXの活用によって生産性を高める視点が重要です。
高付加価値経営への転換
中小企業が大企業と同じ土俵で価格競争を続けることは容易ではありません。
だからこそ重要になるのが、「高付加価値経営」です。
価格ではなく、
- 技術力
- 品質
- 提案力
- スピード
- アフターサービス
- 専門性
で選ばれる会社を目指すことです。
例えば、同じ製品を販売していても、「この会社に相談したい」「この会社なら安心できる」と思っていただける企業は、価格だけで比較されることが少なくなります。
当社でも、単に経営改善計画を作成するだけではなく、事業再生、M&A、補助金、外国人材活用などを組み合わせた総合的な経営支援を行っています。
これも、高付加価値経営の一つの考え方です。
中小企業こそ、自社ならではの強みを磨き、「価格」ではなく「価値」で選ばれる会社を目指すべきではないでしょうか。
利益改善は「数字」と「現場」の両方から考える
利益改善は、会計ソフトの数字だけを見ていても実現できません。
現場を見て、
- なぜ利益率が低いのか
- どの商品が利益を生んでいるのか
- どのお客様が利益に貢献しているのか
を分析することが重要です。
数字は結果です。
利益を改善するためには、その結果を生み出す原因を改善しなければなりません。
経営者には、「現場」と「数字」の両方を見る力が求められます。
まとめ
利益が残る会社は、単に売上が大きい会社ではありません。
利益率を高める工夫を行い、適正な価格で価値を提供し、固定費を管理し、自社の強みを活かした高付加価値経営を実践している会社です。
経営環境が大きく変化する時代だからこそ、「売上を追う経営」から「利益を残す経営」への転換が必要です。
利益が残れば、資金繰りは安定し、人材への投資や新たな挑戦も可能になります。
利益は、会社の未来を支える原資です。
経営者には、「売上を増やすこと」だけではなく、「利益を残す仕組みをつくること」が求められています。
おわりに ~事業パートナー九州からのご提案~
会社が強くなれば、事業再生は不要になります。
私たち株式会社事業パートナー九州は、経営改善や事業再生の支援だけではなく、「そもそも経営危機に陥らない会社づくり」を目指したご支援を行っています。
利益改善は、一時的なコスト削減だけでは実現できません。経営の仕組みそのものを見直し、自社の強みを活かした高付加価値経営へ転換することが、持続的な成長につながります。
資金繰り、利益体質の構築、人材育成、新規事業、DX、事業承継など、企業の成長ステージに応じた経営課題について、私たちは経営者の皆様とともに考え、実践まで伴走いたします。
「売上を競う会社」ではなく、「利益を生み続ける会社」へ。
その積み重ねが、10年後も選ばれる強い会社をつくる第一歩になると私たちは考えています。
次回は、「財務体質を強くする経営 ― 借入を恐れず、自己資本を育てる ―」をテーマに、強い会社に共通する財務戦略についてご紹介します。
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