強い会社をつくる(3)財務体質を強くする経営
~ 借入を恐れず、自己資本を育てる ~
前回は、「利益が残る会社のつくり方」をテーマに、売上を追い求めるだけではなく、利益率を高める経営の重要性についてご紹介しました。
利益を確保できる会社になれば、次に重要になるのが、その利益をどのように蓄積し、会社の財務基盤を強くしていくかという視点です。
経営者の皆様とお話をしていると、「借入金はできるだけ少ない方がよい。」という考えをよく耳にします。
もちろん、必要以上の借入は避けるべきですが、「借入がある会社=危ない会社」という考え方は必ずしも正しくありません。
実際には、健全な借入を活用しながら自己資本を増やし、財務体質を強くしている企業は数多くあります。
今回は、「財務体質を強くする経営」をテーマに、貸借対照表(BS)の見方、自己資本の重要性、借入金との付き合い方、そして金融機関から信頼される会社の特徴について解説します。
経営者は損益計算書だけでなく貸借対照表を見る
多くの経営者は、毎月の試算表で売上や利益を確認しています。
これはもちろん重要ですが、それだけでは会社の本当の姿は見えてきません。
会社の健康状態を判断するには、貸借対照表(BS)を見ることが欠かせません。
損益計算書(PL)は、一定期間の経営成績を表す「成績表」です。
一方、貸借対照表(BS)は、決算日時点で会社がどれだけの資産を持ち、どれだけ借入や負債があり、どれだけ自己資本を蓄えているかを示す「財産の一覧表」です。
例えば、利益が出ていても、
- 売掛金が増えすぎている
- 在庫が過剰になっている
- 借入金が増加している
という状態では、財務内容が悪化している可能性があります。
逆に、利益は大きくなくても自己資本が厚く、現預金を十分に確保している会社は、景気変動にも強い企業といえるでしょう。
「利益を見る経営」から「財務を見る経営」へ。これが強い会社づくりの第一歩です。
自己資本は会社の「体力」
自己資本とは、会社がこれまで積み上げてきた利益など、返済する必要のない資本のことです。
人に例えれば、「会社の体力」と言えるでしょう。
自己資本が厚い会社には、次のような特徴があります。
・景気悪化にも耐えられる
・設備投資や新規事業に挑戦しやすい
・金融機関からの信用が高い
・資金繰りに余裕がある
一方、自己資本が少ない会社では、少し売上が落ちただけで資金繰りが苦しくなり、金融機関への依存度も高くなります。
自己資本は、一朝一夕に増えるものではありません。毎年利益を積み重ね、配当や役員報酬とのバランスを考えながら、長期的な視点で育てていくものです。
経営者には、「今年の利益」だけではなく、「10年後の自己資本」を意識した経営が求められます。
借入金は悪者ではない
借入金に対して、マイナスのイメージを持つ経営者は少なくありません。
しかし、企業経営において借入金は「悪」ではありません。
重要なのは、「何のために借りるのか」です。
例えば、
・生産性向上のための設備投資
・成長市場への新規事業
・運転資金の確保
など、将来の利益につながる借入は、会社の成長を後押しします。
一方で、
・赤字補填を繰り返す借入
・返済計画のない資金調達
・生活費を補うような借入
は、財務体質を悪化させる要因となります。
借入金は、「返済できるかどうか」だけでなく、「借りた資金が利益を生み出すかどうか」で判断することが重要です。
適切な借入を活用し、利益を生み、その利益で自己資本を増やす。これが健全な財務体質を築く好循環です。
銀行はどこを見ているのか
「銀行は担保だけを見て融資をしている。」
そう考えている経営者もいますが、現在の金融機関は、それだけで融資判断をしているわけではありません。
銀行が重視するのは、
・返済能力
・将来性
・経営者の姿勢
です。
具体的には、
・利益が安定しているか
・自己資本が増えているか
・資金繰りが把握されているか
・試算表がタイムリーに作成されているか
・経営計画があるか
などを総合的に評価しています。
特に中小企業では、「数字を説明できる経営者」であることが大きな信頼につながります。
決算書の内容を理解し、自社の課題や今後の方向性を自ら説明できる経営者は、金融機関から高く評価されます。
実態BSを把握することが経営改善の出発点
当社では、経営改善や事業再生の支援を行う際、まず「実態貸借対照表(実態BS)」を作成します。
帳簿上は資産として計上されていても、
・回収が困難な売掛金
・長期間動いていない在庫
・実質的な価値がない資産
などは、実態に合わせて評価を見直します。
すると、会社の本当の財務状況が見えてきます。
経営改善は、現実を正しく知ることから始まります。
良い数字だけを見るのではなく、課題を正確に把握し、それを改善していく姿勢が大切です。
財務体質の強化は未来への投資
財務体質を強くすることは、単に銀行から評価されるためではありません。
財務基盤が安定すれば、
・新しい設備へ投資できる
・優秀な人材を採用できる
・新商品や新サービスに挑戦できる
・不況時にも慌てず対応できる
など、会社の可能性が大きく広がります。
経営とは、未来への投資を続けることです。その土台となるのが、健全な財務体質なのです。
まとめ
強い会社は、利益だけを追いかける会社ではありません。
利益を積み重ね、その利益を自己資本として蓄積し、健全な借入を活用しながら財務基盤を強化している会社です。
貸借対照表は、会社の現在地を示す地図です。この地図を正しく読み取り、自社の財務状況を把握することが、持続的な成長への第一歩になります。
借入を恐れるのではなく、上手に活用する。
利益を使い切るのではなく、自己資本として積み上げる。
その積み重ねが、景気変動にも負けない「強い会社」をつくるのです。
~事業パートナー九州からのご提案~
会社が強くなれば、事業再生は不要になります。
私たち株式会社事業パートナー九州は、経営改善や事業再生の支援だけではなく、「そもそも経営危機に陥らない会社づくり」を目指したご支援を行っています。
財務体質の強化は、単に借入金を減らすことではありません。貸借対照表を正しく読み解き、自社の実態を把握し、利益を自己資本として積み上げながら、将来の成長に必要な投資を行うことが重要です。
当社では、実態BSの作成、財務分析、経営改善計画の策定、金融機関との交渉支援などを通じて、企業の持続的な成長をサポートしています。
「銀行に融資してもらえる会社」を目指すのではなく、「銀行からぜひ支援したいと思われる会社」を目指すことが、強い会社づくりにつながります。
次回は、「人が辞めない会社には理由がある ~ 採用より重要な『定着』の仕組み ~」をテーマに、人材不足時代を乗り越える組織づくりについて解説します。
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