建設業で注目される「クラウドファクタリング」とは?
ファクタリングを資金繰り改善に活用する方法
建設業では、「仕事はある」「売上も計上されている」にもかかわらず、資金繰りが厳しくなることがあります。
その大きな原因の一つが、「支払い」と「入金」のタイミングのずれです。
工事を受注すると、材料の購入、外注先への支払い、従業員への給与など、さまざまな資金が必要になります。一方、元請企業などから工事代金が入金されるのは、工事完了後、あるいは請求から1~2か月後になることも珍しくありません。
つまり、「売上はある。しかし、その売上代金が入ってくる前に支払いが来る」という問題です。
こうした建設業特有の資金繰り問題への対応策として、近年注目されているのが「クラウドファクタリング」です。
クラウドファクタリングは、売掛金を早期に現金化する「ファクタリング」の一種で、申込みから審査、契約までをオンラインで行えることが大きな特徴です。
今回は、クラウドファクタリングを入口として、そもそもファクタリングとは何か、どのような種類があるのか、どのような場合に利用すると効果的なのか、そして利用する際の注意点について解説します。
1.ファクタリングとは何か
ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、本来の支払期日より前に現金化する仕組みです。
例えば、建設会社が元請企業に対して500万円の工事代金を請求しているとします。
入金予定日は2か月後です。
ところが、今月末には材料代や外注費など400万円を支払わなければなりません。
手元資金だけでは不足する場合、通常であれば銀行から運転資金を借りることが考えられます。
しかし、銀行融資には審査があり、申込みから融資実行まで一定の時間が必要です。
そこで、2か月後に入金される500万円の売掛債権をファクタリング会社に売却します。
仮に手数料が5%であれば、500万円-25万円=475万円を支払期日前に受け取ることができます。
つまりファクタリングとは、「将来受け取る予定のお金を、手数料を支払って前倒しで現金化する仕組み」と考えると分かりやすいでしょう。
2.ファクタリングは「借入」とは異なる
ファクタリングを理解するうえで重要なのが、銀行融資との違いです。
銀行融資の場合は、銀行から資金を借り、その後、元金と利息を返済していきます。
これに対して、一般的な買取型ファクタリングは「売掛債権の売買」です。
つまり、「500万円を借りる」のではなく、「500万円の売掛債権をファクタリング会社に売却する」という取引です。
そのため、一般的な銀行借入とは性質が異なり、担保や代表者保証を必要としないサービスも多くあります。
また、審査の考え方にも違いがあります。
銀行融資では、「この会社に返済能力があるのか」という利用企業自身の信用力が非常に重要になります。
一方、ファクタリングでは、「売掛債権が本当に存在しているのか」「売掛先が期日に代金を支払う可能性が高いのか」という点が重要になります。
したがって、自社の業績が多少悪くても、信用力の高い企業に対する確定した売掛債権を持っている場合には、ファクタリングを利用できる可能性があります。
3.ファクタリングにはどのような種類があるのか
「ファクタリング」と一口にいっても、いくつかの方式があります。
大きく分けると、
(1 )買取型ファクタリング
(2)保証型ファクタリング
があります。
さらに買取型については、
・2社間ファクタリング
・3社間ファクタリング
・クラウドファクタリング
などの形態があります。
それぞれの違いを見ていきましょう。
4.買取型ファクタリング
一般的に資金調達手段として「ファクタリング」と呼ばれているものが、買取型ファクタリングです。
企業が保有する売掛債権をファクタリング会社へ売却し、支払期日前に資金化します。
最大の目的は「早期資金化」です。
例えば、「2か月後に1,000万円が入金されるが、今月500万円必要」という場合に、売掛債権を利用して必要な資金を確保します。
建設業、運送業、製造業など、売上代金の回収までに時間がかかる業種との相性がよい資金調達方法です。
5.2社間ファクタリング
2社間ファクタリングは、「利用企業」と「ファクタリング会社」の2社で契約する方式です。
例えば建設会社の場合、
①建設会社が元請企業へ工事代金を請求
②その売掛債権をファクタリング会社へ売却
③ファクタリング会社から手数料控除後の代金を受け取る
④元請企業は通常どおり建設会社へ工事代金を支払う
⑤建設会社が受け取った代金をファクタリング会社へ送金する
という流れになります。
大きなメリットは、売掛先にファクタリング利用を知られずに利用しやすいことです。
建設業では元請との信用関係が重要です。
「ファクタリングを利用していることを元請に知られると、資金繰りが悪い会社と思われるのではないか」
と心配する経営者も少なくありません。
2社間方式なら、この問題を回避しやすくなります。
一方、ファクタリング会社からすると回収リスクが高くなるため、一般的には3社間方式より手数料が高くなります。
6.3社間ファクタリング
3社間ファクタリングでは、「利用企業」「売掛先」「ファクタリング会社」の3社が関係します。
売掛先にも債権譲渡について通知・承諾してもらい、支払期日になると売掛先がファクタリング会社へ直接代金を支払います。
ファクタリング会社にとっては、利用企業を経由せず売掛先から直接回収できるため、回収リスクが低くなります。
そのため、一般的には2社間方式より手数料が低くなる傾向があります。
ただし、「ファクタリングを利用していることを取引先に知られる」という点には注意が必要です。
特に元請との関係を重視する建設会社では、この点を考慮して利用方法を検討する必要があります。
7.保証型ファクタリング
保証型ファクタリングは、これまで説明した資金調達型とは目的が異なります。
こちらは、売掛先が倒産するなどして売掛金を回収できなくなるリスクに備える仕組みです。
例えば、ある会社に対して1,000万円の売掛金があり、「この会社の経営状態が少し心配だ」という場合があります。
保証型ファクタリングを利用していれば、一定の条件のもとで、売掛先が倒産した場合などに保証を受けることができます。
したがって、
買取型=「早くお金にするための仕組み」
保証型=「売掛金の貸倒れに備える仕組み」
と整理すると分かりやすいでしょう。
8.注目されている「クラウドファクタリング」とは
最近、中小企業や個人事業主の間で利用が広がっているのがクラウドファクタリングです。
クラウドファクタリングは、まったく新しい種類の金融商品というより、「従来の買取型ファクタリングをオンライン化したサービス」と考えるとよいでしょう。
従来のファクタリングでは、電話で相談し、必要書類を提出し、担当者との面談を経て契約するといった手続きが一般的でした。
これに対してクラウドファクタリングでは、
・Webから申込み
・請求書や決算書等をオンライン提出
・オンラインで審査
・電子契約
・指定口座への入金
という形で手続きを進められるサービスがあります。
AIやデータを利用した審査を導入する事業者もあり、従来型に比べて審査や資金化までの時間を短縮できることがあります。
少額の売掛債権にも対応するサービスがあるため、小規模事業者や個人事業主にとっても利用しやすい資金調達方法になっています。
9.なぜ建設業でクラウドファクタリングが注目されるのか
建設業とファクタリングは比較的相性のよい組み合わせです。
建設業では、仕事を受注すると、
材料の購入
↓
外注費の支払い
↓
従業員への給与
↓
工事完成
↓
元請への請求
↓
工事代金の入金
という流れになります。
つまり、売上代金を受け取るよりも前に多額の資金が必要になる場合があります。
特に、電気工事業、内装仕上工事業、とび・土工工事業、設備工事業、塗装工事業など、材料費や外注費の負担が大きい業種では、この問題が顕著です。
さらに、大型案件を受注すると売上は増えますが、それと同時に先行する支払いも増えます。
その結果、「仕事が増えたのに資金繰りが苦しくなる」ということも起こります。
こうした入金と支払いの一時的なズレを埋める手段として、クラウドファクタリングが注目されているのです。
10.どのような場合に利用するとよいのか
ファクタリングが特に有効なのは、「資金不足の原因と、資金不足が解消される時期が明確な場合」です。
例えば、
「大型工事を受注し、材料費が一時的に増えた」
「外注先への支払いが先に来る」
「元請の支払サイトが長い」
「複数の工事が重なって運転資金が一時的に増加した」
「急な追加工事を受注した」
「銀行融資の実行までのつなぎ資金が必要」
といったケースです。
例えば、「3か月後に元請から1,000万円が確実に入金される。しかし今月、材料費と外注費として600万円必要」というケースなら、ファクタリングを検討する意味があります。
つまり、「利益は出ている。しかし、入金より支払いが先に来る」という資金ギャップへの対応です。
11.ファクタリングを利用するメリット
第一のメリットは、資金調達までのスピードです。
特にクラウドファクタリングの場合、銀行融資に比べて短期間で資金化できるサービスがあります。
第二は、一般的な買取型ファクタリングは借入ではなく債権売買であることです。
第三は、担保や代表者保証を必要としないサービスが多いことです。
第四は、自社の信用力だけでなく、売掛先の信用力が審査上重要になることです。
そのため、例えば大手企業や信用力の高い元請企業に対する売掛債権がある場合には、自社の財務内容だけでは銀行融資が難しい企業でも利用できる可能性があります。
12.注意したい最大の問題は「手数料」
ファクタリングは便利な反面、最大の注意点があります。
それが「手数料」です。
例えば、売掛金500万円、手数料5%、資金化まで2か月前倒し、とします。
この場合、手数料は25万円です。
会社は2か月早く475万円を手に入れるために25万円を負担することになります。
ファクタリングの手数料と銀行融資の金利は、法的にも商品性としても同じものではありませんので単純比較はできません。
しかし、経営上の「資金調達コスト」として考えれば、決して小さな負担ではありません。
13.毎月ファクタリングを利用する会社は要注意
ここは非常に重要です。
ファクタリングは、「一時的な資金ギャップを埋める」ためには有効です。
しかし、
「毎月給料を払うために利用している」
「毎月材料費を払えないので利用している」
「前月にファクタリングしたため、今月の入金が減り、また利用する」
という状態になると注意が必要です。
例えば毎月500万円の売掛債権を5%の手数料で売却すれば、25万円×12か月=年間300万円の資金が手数料として会社外部へ流出します。
これが、
ファクタリングを利用
↓
手数料負担
↓
翌月の資金不足
↓
再びファクタリング
という悪循環につながる可能性があります。
したがって、ファクタリングの利用回数が増えてきた場合には、単なる資金調達の問題としてではなく、「なぜ毎月資金が足りなくなるのか」を分析する必要があります。
14.悪質なファクタリング業者にも注意
もう一つ注意したいのが、ファクタリングを装った違法な貸付けです。
契約書には「債権譲渡」と書かれていても、実態として利用会社に強い買戻義務や返済義務を負わせている場合などには、実質的な貸付けと判断される可能性があります。
特に、
・極端に高い手数料
・契約内容が分かりにくい
・売掛先が支払わない場合に利用会社へ全額負担を求める
・契約書を十分に説明しない
といった業者には注意が必要です。
利用する場合には、
「手数料はいくらなのか」
「売掛先が倒産した場合は誰がリスクを負うのか」
「買戻義務はあるのか」
「追加費用は発生しないか」
などを契約前に確認することが重要です。
15.ファクタリングは銀行融資の代わりではない
資金調達を考える場合、重要なのは「どの方法が一番早いか」だけではありません。
資金の目的と期間に応じて調達方法を使い分けることが大切です。
例えば、
長期設備資金 → 長期の銀行融資
通常の運転資金 → 銀行融資・制度融資
恒常的な運転資金 → 当座貸越・短期継続融資等
一時的な売掛金回収までの資金不足 → ファクタリング
急ぎ・少額・オンラインで完結したい → クラウドファクタリング
という考え方です。
ファクタリングは銀行融資に全面的に置き換わるものではなく、資金繰りを補完する選択肢の一つとして考えるべきでしょう。
16.ファクタリング利用が「経営改善のサイン」になることも
私たちが経営支援を行う立場から特に重視したいのは、ファクタリングそのものよりも、「なぜファクタリングが必要になったのか」という点です。
一時的な大型受注による資金不足なら、それほど問題ではないかもしれません。
しかし、毎月のように資金が不足している場合には、
・売上不足
・粗利益率の低下
・原価管理の問題
・過大な固定費
・借入金返済負担
・売掛金回収期間の長期化
・過大な在庫
・採算の悪い受注
など、別の経営問題が隠れている可能性があります。
特に建設業では、「売上は伸びているのにお金がない」というケースがあります。
この場合には、工事別の原価管理、粗利益率、外注比率、支払条件、回収条件などを確認する必要があります。
ファクタリングによって一時的に資金不足を解消できても、その原因が解消されなければ、いずれ再び資金不足になります。
17.大切なのは「資金調達」ではなく「資金繰り管理」
経営者にとって最も重要なのは、「お金が足りなくなったら、どこから調達するか」を考えることだけではありません。
本来は、「いつ、いくら足りなくなるのかを事前に把握すること」が重要です。
そのためには資金繰り表を作成し、少なくとも数か月先まで、
・売掛金の入金
・材料費
・外注費
・人件費
・社会保険料
・税金
・借入金返済
などを把握しておく必要があります。
例えば、3か月後に500万円不足することが分かっていれば、銀行と融資の相談をする時間があります。
ところが、支払日の1週間前に、「500万円足りない」と気付けば、選択できる資金調達方法は限られてしまいます。
その結果、高コストな資金調達に頼らざるを得なくなることがあります。
まとめ ファクタリングは「使い方」が重要
クラウドファクタリングの普及によって、中小企業でも売掛債権を利用して短期間で資金調達できる環境が整ってきました。
特に建設業のように、「支払いが先、入金が後」になりやすい業種では、有効な選択肢になる場合があります。
ファクタリングは決して「悪い資金調達方法」ではありません。
重要なのは、
何のために使うのか
いくら必要なのか
いつ入金されるのか
手数料はいくらなのか
今回限りで終わるのか
を明確にしたうえで利用することです。
逆に、毎月のようにファクタリングを利用しなければ資金繰りが回らないのであれば、それは資金調達の問題ではなく、経営改善が必要になっている可能性があります。
ファクタリングは「借金ではない」という点が強調されがちですが、手数料という形で確実に会社の利益と資金を減少させます。
だからこそ、「ファクタリングを使えるか」ではなく、「ファクタリングを使うことが会社にとって本当に最適なのか」という視点が重要です。
当社では、単なる資金調達方法の紹介だけではなく、資金繰り表の作成、収益性の分析、金融機関との交渉、借入金の見直し、経営改善計画の策定などを通じて、中小企業の資金繰り改善・経営改善を支援しています。
「売上はあるのに資金が残らない」
「借入金の返済が重い」
「資金繰りが徐々に厳しくなっている」
「ファクタリングを利用すべきか迷っている」
という場合には、資金が完全に不足してからではなく、できるだけ早い段階で経営全体を確認することが大切です。
資金調達は目的ではありません。
会社が継続して利益と資金を生み出せる状態をつくること。
それが、本当の意味での資金繰り改善ではないでしょうか。
🔹 初回相談(無料)
資金調達、経営改善等の経営上の課題の相談をお受けします。
現状整理・経営改善・再生可能性・出口戦略整理から対応しています。
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