事業再生コンサル(2)事業再生は財務だけでは成功しない - 事業パートナー九州 北九州市(福岡県)経営コンサルタント

事業再生コンサル(2)事業再生は財務だけでは成功しない

本当に必要なのは経営全体を見る力

前回は、「なぜ今、事業再生の専門家が求められているのか」をテーマに、事業再生とは単に経営危機に陥った企業を救済する仕事ではなく、企業の未来をつくる経営支援であることをご紹介しました。

前回の記事はこちら

今回は、事業再生コンサルタントに求められる最も重要な能力の一つである、「経営全体を見る力」について考えてみたいと思います。

事業再生というと、決算書を分析し、資金繰り表を作成し、金融機関と返済条件を交渉する仕事というイメージがあります。

もちろん、財務分析は事業再生の基本です。

しかし、私が実際の事業再生支援を通じて感じるのは、「決算書をいくら詳しく分析しても、それだけでは会社は再生できない」ということです。

決算書に表れる数字は「結果」である

例えば、売上高が減少している会社があるとします。

決算書を見れば、「売上高が前年比20%減少した」という事実は分かります。

しかし、決算書には「なぜ20%減少したのか」までは書かれていません。

・主要取引先からの受注が減ったのか。
競合会社に顧客を奪われたのか。
市場そのものが縮小しているのか。
営業担当者が退職したのか。
商品・サービスに競争力がなくなったのか。
あるいは、会社が利益率の低い仕事を意図的に減らした結果なのか。

同じ「売上20%減少」でも、原因によって打つべき対策はまったく異なります。

利益率の低下についても同様です。

原材料費の上昇なのか、人件費の増加なのか、外注費なのか、価格転嫁ができていないのか、生産性が低下しているのか。

財務諸表は、会社で起きたことを数字として表したものです。

つまり、財務は経営の「結果」であり、その結果を生み出した原因は会社の現場にあるのです。

事業再生コンサルタントには、数字から問題を発見し、その数字の奥にある原因まで掘り下げる能力が求められます。

まず「ビジネスモデル」を理解する

事業再生で最初に理解しなければならないのは、その会社が「どのように利益を生み出しているのか」です。

・誰に、何を、どのように提供し、どこで利益を得ているのか。
・主要顧客への依存度は高くないか。
・商品別・顧客別に採算性はどうなっているか。

一見、売上が大きい取引先が、実はほとんど利益を生んでいないケースもあります。

逆に、売上規模は小さくても高い利益を生み出している事業が存在することもあります。

事業再生では、「売上を増やしましょう」だけでは対策になりません。

「どの売上を増やし、どの売上を減らすのか」まで考える必要があります。

市場と競争環境を見る

会社内部だけを見ていても、再生の方向性は判断できません。

市場そのものが縮小している場合、営業努力だけで売上を回復させることには限界があります。

一方、成長市場であるにもかかわらず売上が減少しているのであれば、会社側に何らかの問題がある可能性があります。

市場規模、成長性、競合企業、顧客ニーズ、価格動向、技術革新などを分析し、この会社は今後、どこで戦うべきなのかを考える必要があります。

場合によっては、既存事業を守ることではなく、新市場への進出や事業構成そのものを変えることが再生への道になることもあります。

「人」と「組織」を見なければ計画は実行できない

どれほど優れた経営改善計画を作っても、実行するのは「人」です。

例えば、「新規顧客を開拓する」という計画を立てたとします。

しかし、営業担当者がいなければ実行できません。

「生産量を20%増加させる」という計画も、人員不足や設備能力の問題があれば実現できません。

事業再生では、従業員数、年齢構成、技能、管理者の能力、採用状況、離職率、組織体制なども重要な分析対象になります。

特に中小企業では、経営者一人に仕事と判断が集中していることも珍しくありません。

その場合、単なるコスト削減ではなく、組織づくりそのものが再生の重要なテーマになります。

生産性とDXも事業再生の重要なテーマ

人手不足が深刻化する現在、「人を増やせば売上が増える」という経営は難しくなっています。

そこで重要になるのが生産性です。

製造業であれば、設備稼働率、段取り時間、不良率、工程、外注比率。

サービス業であれば、業務時間、顧客対応、事務処理、情報共有などを分析します。

さらに、デジタル技術やAIを活用することで、これまで人が行っていた作業を効率化できる可能性もあります。

ただし、DXはシステムを導入すること自体が目的ではありません。

「経営上のどの問題を解決するためにデジタル化するのか」という視点が重要です。

最後は「売る力」がなければ再生できない

事業再生では、経費削減が注目されがちです。

確かに無駄な経費の削減は必要です。

しかし、経費削減には限界があります。

会社を継続的に成長させるためには、最終的には売上と利益をつくらなければなりません。

既存顧客への販売拡大、新規顧客開拓、休眠顧客の掘り起こし、価格改定、高付加価値商品の開発など、「営業力」をどう強化するかが重要になります。

私は、事業再生の最終的な勝負は「本業でキャッシュを生み出せる会社に戻せるかどうか」にあると考えています。

税理士・中小企業診断士・金融機関との違い

ここで、「それなら税理士や中小企業診断士、金融機関でもできるのではないか」と思われるかもしれません。

それぞれ事業再生において非常に重要な存在です。

税理士は、会計・税務の専門家として会社の財務状況を把握する重要な役割を担います。

中小企業診断士は、経営診断や経営改善計画の策定など、経営全般について高い専門性を持っています。

金融機関は、資金供給者として企業の財務状況を分析し、資金繰りや返済条件などについて重要な役割を担います。

しかし、事業再生の現場では、それぞれの専門分野だけでは解決できない問題が発生します。

財務、金融、営業、人事、組織、生産、法務、税務、M&Aなどを横断的に見ながら、この会社を最終的にどこへ持っていくのか」という全体像を描かなければなりません。

ここに、事業再生コンサルタントの役割があります。

他の専門家と競争するのではありません。

それぞれの専門性をつなぎ、経営者とともに会社全体の再生を進めていく「総合調整役」になることが重要なのです。

事業再生コンサルタントに必要なのは「会社を見る力」

事業再生の現場では、決算書を見ることは入口にすぎません。

決算書から問題を発見し、「なぜ、この数字になったのか」と問い続ける。

そして、ビジネスモデル、市場、人材、組織、生産性、DX、営業力まで視野を広げ、問題の本当の原因を探していく。

その上で、実行可能な改善策を組み立てる。

これこそが、事業再生コンサルタントに求められる「経営全体を見る力」だと考えています。

そして重要なのは、分析して終わることではありません。

事業再生は「診断」ではなく「実行」です。

経営者と一緒に改善策を実行し、その結果を確認し、必要であれば計画を修正する。

この繰り返しによって、初めて会社は変わっていきます。

 

次回予告

次回は、「事業再生コンサルに必要な『金融機関との対話力』~数字ではなく“納得”をつくる仕事~」をテーマに、金融機関が企業のどこを見ているのか、経営改善計画をどのように説明すべきなのか、そして事業再生コンサルタントが金融機関との間で果たすべき役割について考えていきます。

 

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