【特集07】当社の創業支援
事業計画の検討
当社は中小企業の支援を主な業務としています。
ここでは、「(株)事業パートナー九州」が行う中小企業支援について、思い入れを含めて紹介します。
当社では、手続きの代行だけでなく、その前提となる「事業計画」「資金調達」の面も、創業者の立場に立ち、経営論、手続き面だけでなく、精神面も含めて、さまざまな視点で支援をさせて頂きますので、ご気楽にご相談をお願いします。
説明は株式会社設立を前提としていますが、個人経営の場合も参考にして下さい。
なお、「創業支援」に関する内容は、「赤沼創経塾」で学んだ内容をベースにこれまでの経験内容、考えを加えたものです。
まお、本記事は、2015年に記載したものを、2022年12月に再編集しています。
1 .創業環境の整備(周囲の理解)
創業を思いついて直ぐに会社を設立することはできません。
また、事前の準備が不十分だと、創業後にさまざまな問題が発生し、経営が軌道に乗るまで時間がかかり、最悪早期に廃業することになってしまいます。
(1) 家族、周囲の理解
創業、その後の会社運営にはさまざまな問題が発生し、心を痛めることも多くあります。
その際に、支えになってくれるのが周囲の方、特に家族です。
創業するに当たっては、相互に助け合えるように、十分に話し合いを行い、家族の理解を得ることが重要です。
その場の勢いだけでなく、一歩立ち止まって、よく家族と話し合って、合意を得て、家族を良き理解者として下さい。
また、業種によっては、以前勤めていた会社や商店(飲食店、美容院なども)を辞めて、同業の事業を始めようと思っている方も多いと思います。
当然、過去に経験したことを継続することは成功する確度を上げることができますし、創業融資の面でも有利に働く可能性があります。
辞める際は円満に、辞めた後も良好な関係を築けるように努めて下さい。
困った時に、精神面、場合によっては、物資の面で助けてもらえることもあります。逆の場合は、強力な競争相手になる可能性もあります。
(2) 資金面の安心
後の資金調達の項目でも述べますが、創業での初期投資、経営が安定するまでの運転資金・生活資金、不足の事態に対応する余裕資金と、準備する資金が多い方が当然安心です。
特に、今、安定した収入を得ている場合は、決断を慎重に行ってください。
自分の置かれている状況、周囲環境から最適な場合もありますが、「今、実施すべきなのか」資金面も含めて良く検討して下さい。
私も定年退職を待たず退職をしましたが、やはり、資格取得後、1年間待ちました。
その間に、仕事に影響がでない範囲で、セミナー参加、周辺の資格取得の勉強、人的ネットワークの構築を行い、資金面のシミュレーションも行いました。
最後の決断の際は、資金面で不安は解消できませんでしたが、それでも、1年間待ったことは有益だったと思っています。
「資金ゼロから出発し、(苦労して)(幸運に恵まれて)(人に助けられ)、こんなに成功しました」との話、書籍がありますが、当然、成功したから表に出る話であり、陰には、失敗した事例の方が多く存在しているのが実際の姿と思います。
また、資金がある方が、より有効な投資ができますし、精神的にも安定しますので自己のレベルアップの投資もすることができます。
2.事業計画の立案(構想)
(1)創業者の想いの整理、決意の確認
まず「自分が何をしたいのか?」「その事業が社会・人のためにどのような貢献ができるのか?」、この自問自答を紙に書き出して、何回も繰り返して整理してみて下さい。
段々と自分の決意、存在意義が明確になってきます。
それを、「経営理念」として、表現にこだわらずに文書にしてみて下さい。
今後の検討の中で変わっていく可能性がありますが、「強い意志として」今後の精神的な柱になると思います。
(2)創業する事業の客観的な評価
「ただやりたい」「できるはず」だけでは、不十分で、冷静に「創業する事業」を眺めてみることが重要と思っています。
参考として、私が会社勤めの時及び行政書士として開業に当たっての考え方を紹介します。
・「自分が何をしたいのか?」 *①で整理済み
・その中で、「自分が何ができるのか(自分の強み)?」、「自分に何が足りないのか(自分の弱み)」を明確にしてみて下さい。
創業される方は、当然、自信をお持ちなので「自分の強み」は良く理解されていると思いますが、「自分の弱み」に関しての認識が不十分、あるいは「あえて考えない」方も多いと思います。
今一度、冷静に考えてみて、紙に書き出してみて下さい。
「弱み」は必ずあるもので、これを認識しておくことで、先に生じる可能性がある「不測の事態」を未然に防げる可能性がでてきます。
・次に創業する事業の市場の中を分析してみて下さい。
「市場(競合)に対して優れたものがあるか?」「市場(競合)に対して劣っているところは何か?」、事業の業種によっては、立地条件によって逆になる場合もあります。
先の項目で「自分を知って」次に「相手(お客様、競業者)」を知ることを検討して下さい。
・これらの整理がつくことにより、次に示す、戦略・戦術の立案につながります。
その後の会社経営も意識して、創業時に十分検討することは、今後発生するさまざまな問題に対して、あわてることなく冷静に対応できると思います。
なお、ここで示した考えは、企業経営理論の「SWOT分析」「4P分析」「5つの力分析」などを基にしていますが、症状・原因によって処方する薬が違うように、事件によって適用する法律が違うように、創業も個々に状況が異なり、各ケースごとに、検討(分析)する有効な手法が異なると思っています。
当事務所では、創業者のお考えを十分理解して、経営理論を参考にしつつも、現実に合った検討を支援していきたいと思っています。
(3)戦略・戦術の検討
上記で検討した結果を基に、戦略を検討するステージです。
戦略検討のポイントは「自分の強み、市場での強み」をどう活かしていくか、「自分の弱み、市場での弱み」をどう対応するかを検討することです。
保有している資源(技術・技能、資金など)は限りがあります。
それをどう有効に、損失を少なく使っていくかです。
この戦略の立案に関しても、企業経営理論では、幾つもの手法がありますが、やはり、有効な手法は個別案件ごとに異なります。
ここでは、私の過去の経験として、一般的な流れを紹介します。
・創業時、その半年後、1年後、3年後の「目標とする姿」を描き、それを文書化する。
目標は、売上(利益)、会社規模(従業員数)、業務内容(新たな業務の追加)など幾つかを設定しても構いません。
5年、10年先はまだ読めないと思いますが、融資の返済の面でも3年後の姿は設定しておきたいものです。
・その各時期の目標を達成する大まかな実施項目を明確に設定する。
その項目を短期、中期に分類して、日程に落とし込む。
この際は、先の「②の事業の客観的な評価」で認識した「強みの活かし方」「弱みの対応」を考慮して検討することになります。
「強みの活かし方」「弱みの対応」を決めることが「戦略」であり、それを実現する方法・日程が「戦術」になります。
以上、創業に関して主に「事業計画の考え方」に関することを述べましたが、事業を成功させるには、「しっかりとした考え」を持つことが重要と思います。
ここで決めた考えをその後も継続できることはなく、節目で「修正・変更」していくことになると思いますが、一度、「しっかりとした考え」を自分のものとすることにより、「修正・変更」も誤ることが少なくなると思っています。
当社は、表面的な事業計画を作成するのではなく、十分に検討した事業計画の作成を支援させて頂きます。
会社設立の手続き
会社設立の手続きの流れを示します。
(1) 会社の基本事項の決定 *主要なポイントをあとで示します
(2) 定款の作成・認証
(3) 資本金の払い込み
(4) 登記の申請 *登記の申請は司法書士の業務となります
(5) 各官公署への届出
この中で、重要な会社の基本事項の決定について紹介します。
会社の基本事項の決定
次に決定すべき項目を示しますが、その後の「会社経営を意識」した決定が必要であり、当事務所では、創業者様との面談を通じて、適切なアドバイスをさせて頂きます。
① 発起人を決める
発起人とは、株式会社の設立の企画者として定款に署名した人のことです。
設立に関して責任を負う立場でもあり、「株主」や「役員」になる可能性もありますので、信頼がおける人を選任することが必要です。
なお発起人は1人でも可能なので、創業者だけでも問題ありません。
② 機関設計を行い、役員(取締役・監査役など)を決める
現在の会社法では、株式会社の機関設計のパターンは全部で43種類もありますが、小さな会社の場合は、「定款に株式の譲渡制限の規定を設けるか?」「取締役会を設けるか?」の2点を考慮して、3通りのパターンが考えられます。
なお、全ての株式会社で、「株主総会」と「取締役」は必要です。
パターンA:株式譲渡制限会社で取締役会を置かない場合:取締役1名でも可能、取締役の任期は10年まで伸長可能です。
パターンB:株式譲渡制限会社で取締役会を置く場合:取締役は3名以上必要で、監査役も必要になります。役員の任期は10年まで伸長可能です。
パターンC:株式譲渡制限会社でなく(公開会社)の場合:取締役会が必要(取締役3名以上)で、監査役も必要になります。役員の任期は、原則、取締役2年、監査役4年になります。
機関設計、役員の選定は、今後の会社運営や資金調達の面で重要であるので、慎重に検討を行う必要があります。
③ 商号(会社名)を決める *同一商号調査を行う
会社名は、その会社全体を印象付ける「顔」とも言え、創業者の思い入れも入り、重要なものです。
基本的には自由に決めて良いのですが、最低限のルールが定められています。
また、「同一の住所地に同一の商号を用いることは禁止されている」ので、念のため同一商号調査を実施しましょう。
④ 事業目的を決める
会社の目的は、「何をする会社なのか」を明確にするもので、定款のなかに必ず記載しなければならないものです。
創業時の事業だけでなく、将来に実施する可能性がある事業も考慮して決定する必要があります。
また、許認可申請が必要な場合、融資の場合の「対象外業種」は、特に注意が必要です。
⑤ 本店所在地を決める
本店とは会社の事務所を置く本拠地のことで、ここが営業活動の拠点となります。
会社の本店所在地は定款で示す必要があり、その方法には2通りあります。
・「当会社は、本店を福岡県北九州市に置く」というように最小行政区画までを記載する方法
・「当会社は、本店を北九州市戸畑区浅生1丁目3番20号に置く」というように番地まで記載する方法
将来、本店を最小行政区画内で移転する予定がある場合は、「最小行政区画」までの方が良いです。
なお、登記申請の際は、本店の番地まで届けなければなりません。
⑥ 資本金を決める
現在の会社法では、資本金は「1円」でも会社を設立することができます。
ただし、資本金が少ない場合、財務指標の中の「自己資本比率」が低い評価になり、また、赤字になった場合「債務超過」になってしまいます。
業種によりますが、事業を始めてから実際に入金があるまでの期間も考慮して、また、資本金が1000万円未満の場合、2年間は消費税の免除があるので、これも考慮すると、300万円~900万円が望ましいと思います。
⑦ 事業年度を決める
個人事業者の場合の事業年度は、「1月~12月」ですが、株式会社の場合は、任意に設定することができます。
株式会社の場合、3月と12月が多いですが、次の点を考慮して、総合的に設定することが必要です。
・事務処理の関係上、業務の繁忙期と決算処理がかぶらない方が良い
・資本金のところで示したように、消費税の免除の面で、1期目を長く取る方が良い
・税理士の確保の面で、決算が集中する、3月、12月は避ける方が良い
会社の設立の手続きは、決めるべきことを決めていけば、そんなに難しいことはありませんが、それぞれの項目は、創業後の会社運営も考慮して慎重に決める必要があります。
創業者の資金調達方法
これまで、創業(会社設立)について、事業計画の検討、創業の手続きについて紹介しましたが、ここでは、創業者にとって最も関心が高い「資金調達」に関して紹介させて頂きます。
北九州市の各種の機関の方々とお話しさせて頂き、「北九州市は中小企業の資金調達支援」に関して非常に熱心で、支援体制が充実していると感じています。
この中で、各機関とも連携させて頂いて、中小企業・創業者の資金調達の支援をさせて頂きたいと思っています。
創業者の資金調達には、主に次の方法があります。
① 自分で必要資金を貯める(純粋な自己資金)
② 親族・友人等から援助してもらう
③ 金融機関から融資を受ける
④ 助成金・補助金を受ける
①の自己資金だけで賄うのが理想ですが、創業に必要な資金全てを用意するには時間を要し、待っていたら「ビジネスチャンス」を逃してしまう可能性があります。
また、親族・友人から借用は、万が一事業が失敗した場合、「金の切れ目が縁の切れ目」になり、精神的にダメージを負う可能性があります。
助成金・補助金は、ほとんどが「後払い」のため、創業資金としては時間的に当てにできない可能性があります。
自己資金だけでは足りない場合は、③の「金融機関からの融資」が最も現実的で有効な資金調達方法になります。
<金融機関からの融資>
創業者が金融機関から融資を受けられる「選択肢」は、次の2つに限られます。
① 日本政策金融公庫(国民生活事業)の融資
② 自治体(北九州市、福岡県)制度融資(信用保証協会の保証付き融資)
両機関からの融資の詳細については、今回は省略しますが、無担保・無保証人での融資もあり、使いやすい制度になっていますので、不明な点は当事務所にご相談願います。
<創業融資での重要ポイント>
1.自己資金を用意する
前回の会社設立の資本金のところで、自己資金に関しては触れましたが、融資を受ける際、特に無担保・無保証人の場合に重要視されます。
「自己資金」とは「事業に投資する予定の純然たる自己所有の資金」であり、金融機関に対しての「創業への本気度」「準備の度合い」を意思表示になります。
最近の創業融資の流れは、要件上は、自己資金の重要性を下げていますが、実質的には重要な審査ポイントです。
最低でも必要資金の「3分の1」、できれば「2分の1」を用意したいものです。
*全体で「1,500万円」必要な場合は「自己資金:500万円」、「融資金額:1,000万円」
自己資金については、その額に加え、蓄えたお金の流れを、金融機関に示すことが必要になります。
また、「お金をきちんと管理できる人」かを判断するために、金融機関は通帳を確認します。
・「自己資金」は「預貯金」で管理:定期的に積み上げたことが目に見えるように *タンス預金は認められないときがあります
・「公共料金」は支払い期日を守る *振り込みよりも「口座からの引き落とし」が良い
・「家賃」は滞納しない
・「税金」は完納しておく *例えば北九州市から融資を受けるのに、市税を滞納していたらまず融資は受けられません
2.資金の必要性・返済の見込み
金融機関が融資申込者に対して、何を審査しているのかの観点でみた、次のことを明確にして、これを申請書類に示す必要があります。
① 必要金額(いくら貸して欲しいのか?)
金融機関に、「借りれるだけ借りたい」「いくらまで借りれるか?」は、相手にしてもらえません。
「●●の設備を購入するために資金が必要だが××円足りないので」「足りない△△円を融資して欲しい」と具体的に金額を提示する必要があります。
② 資金使途(何に使うのか?)
友人から「100万円貸してほしい、理由は聞かないで、必ず返すから、信用して」と言われても、すぐに貸す人はいないと思います。
金融機関も同じで、何に使うのかを明確に示さないと、融資はしてもらえません。
資金使途は「運転資金(給与支払い、原材料費購入など)と「設備資金(製造装置、パソコンなど)」がありますが、それぞれに対して根拠となる資料を提示する必要があります。
③ 返済財源(貸した後は、どうやって返してくれるのか?)
融資の返済財源とは、借りたお金を返すために何をもって返すかの「何を」ということを示します。
返済は事業活動から出た「利益」からしか返済できないので、「利益」がでる根拠(ストーリー)を提示する必要があります。
提示する資料が「毎年赤字」になるようでは、融資を得ることはできません。
事業内容をよく検討し、返済できる「利益」が出る「事業計画」にしなければなりません。
なお、創業当初はなかなか利益がでないので、返済の「据置期間」を設けて、しばらくは「利息の支払い」のみで、その間、元金の返済はしないでも良いという制度があります。
④ 保全(もしもの時に担保のようなものがあるのか?)
通常、金融機関は融資をする際に「担保」や「保証人」を求めます。
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、無担保、無保証人の制度ですので、創業する方で、担保も保証人も用意できない方にとってはありがたい制度です。
また自治体の制度融資も「信用保証協会」の信用保証が必要ですが、連帯保証人や不動産担保を必要としない融資なので、創業者には助かる制度です。
⑤ 期間(いつ返すのか?)
借りている人の中には、「早く返したい人」逆に「返したくない人」がいるかと思います。
各融資の場合、幅がありますが「返済期間」が定められています。
事業内容・計画をよく検討して返済期間を決める必要があります。
創業時は、売上を十分に上げるまでに時間がかかり、資金繰りが厳しいことが多いので、なるべく長期で借りて、毎月の返済額を抑えた方が安定しやすいので、期間を長めに借りることをお勧めします。
<申請に必要な書類>
申請に必要な書類は、申請先によって多少の違いはありますが、次のことを示す必要があります。申請先機関の指定の書式だけでなく、必要に応じて補足資料を作成、提示することも重要です。
① 事業説明(創業目的、事業内容(強みの説明)、将来のビジョン)
② 事業開始に必要な資金
③ 資金調達計画(自己資金、融資が必要な金額)
④ 販売・仕入先
⑤ 収支計画(損益計画)
先にも示しましたが、⑤の収支計画は特に重要です。月次に分解して、詳細に検討する必要があります。
以上、「創業(会社設立)」に関して、紹介しましたが、当社では、創業計画の検討から、会社設立の手続き、創業融資まで幅広く支援させて頂きます。
必要な手続きは、行政書士や司法書士に依頼します。