【特集01】『経営者の姿』2015年に思っていたこと
本記事は、2015年9月に書いたものです。
行政書士事務所を立ち上げたばかりの頃に書きましたので、(2023年1月)と違う部分もありますが、サラリーマンをやめて独立した際の気持ちとしてお読み下さい。
今回は、会社支援、経営者に関して、これまでの経験・学習をベースに自分の思い入れも加えて紹介させて頂きます。
皆さん、一度でいいから社長になって下さい
「皆さん、一度でいいから社長になって下さい」この言葉は、私の出身校の「長岡技術科学大学」の初代学長の「川上正光先生」の約40年前の卒業式での言葉です。
他の内容は全て忘れていますが、なぜかこの言葉だけが印象に残り忘れることができません。
川上学長は、電子工学の大家で、母校の学長の前は「東京工業大学の学長」をされていたと記憶しています。
私が大学には「2期生」で入り、まだ建築工事が併行して行われていて、実験装置もまだまだ整備されていない状態でした。
大学は「産学協同」を重視し、そのため、教授をはじめ半数以上の先生が企業出身者で、私の大学院の研究室の先生も東芝出身者でした。
「皆さん、一度でいいから社長になって下さい」の言葉の前と後を付け加えると、「皆さん、どんな小さな会社でもよいので、一度でいいから社長になって下さい、社長になると全てがわかります」。
この言葉を聞いた時は、普通の製造会社に就職し、そのまま定年まで勤める気持ちでしたので、当然、理解することはできませんでしたが、なぜか心の奥に残っていました。
その後、会社の中では、組織の一員(開発部門の一技術者)としてスタートし、この言葉とは全く縁がない「同じ目的に向かった、ごく少数の集団の中」で過ごしていました。
社会全体の動きにも自分が担当する分野しか興味がなく、会社の業績も「ボーナス額」がどうなるかぐらいしか関心がなく、会社の仕組み、社会保険のこともわからず、ひたすら、実験をし、結果をまとめ・報告、次の実験の繰り返しでした。
それでも経験を積んでいくと、他の会社や国の研究機関との共同の研究開発を担当させて頂いて、その中で、いろいろな方と触れ合うようになりました。
その中で、いままでの自分が「ごく狭い社会」の中にいて、「非常に視野が狭い人間」であることを実感しました。
このことが契機で、通信教育で「中小企業診断士講座」や「MBAマネジメント講座」を勉強し、ビジネス面の雑誌も定期購読したりしました。
これらの中で、少しだけ、「学長の言葉」を意識するようになりました。
といっても、会社での仕事は、多少広くなりましたが、ごく限られた「閉鎖社会」の中ですので、学んだことを実践に使うこともない状態でした。
大きな転機は、北九州市の戸畑に、他のメーカーと共同で、今まで開発していた製品を事業化するために、製造会社が設立され、そこに技術部長として出向したことです。
大きな会社の「傘の下」にいる子会社なので、単独で成り立っている中小企業様と比べると恵まれている環境なので同じとは言えませんが、従業員が「150人位(パート社員含む)」でしたので、その中で、社長や経理部長、営業部長、購買部長、製造部長など、今まで縁がなかった方々と近い距離で接して、会社の中での自分の部門の立場、会社の業績に与える影響を意識することができました。
会社経営としては、非常に厳しい状況で、技術の検討遅れが、直接的・間接的に経営に影響を与えるので、その重要性も再認識しました。
この会社の中で、3人の社長と、何人かの役員と一緒に仕事をさせて頂いて、だんだんと学長がおっしゃった「社長になると全てがわかります」という言葉が、多少理解できるような気になりました。
会社運営に必要な「さまざまな手続き」「資金調達」「経営分析」「現場の管理」「お客様との関係」「各種の仕組みの構築」「人の管理」「アウトソーシング(外部委託)」・・・・を知ることができました。
また、社長をはじめてとした「経営者」の責任の重さ、判断の重要性、一言の重さ(影響力)、そして精神的な苦しみ・楽しみを直接的、間接的に知ることができました。
会社を辞めて「行政書士として独立」し、その後2社の会社を設立し、その代表として「全てを理解すること」が要求されるようになりました。
学長がおっしゃったのは、表面的な面だけでなく、「人間的な面、社会での存在意識」も含んでいると思います。
全責任を持つ、その中で、苦しみも味合うが、楽しみも感じ、夢も持てて、社会に貢献させて頂いて、自分が成り立っていく、「社長になると全てがわかります」、この言葉を意識しながら取り組んでいきたいと思っています。
(株)事業パートナー九州は、中小企業の経営支援、特に「事業再生(経営改善)」「事業承継・M&A・廃業支援」を中心に行っています。
現在、「新型コロナウィルス感染拡大」による影響で、「経営の見直し・ビジネスモデルの再構築」を検討されている企業が多いと思います。
当社にご相談頂ければ、現状をお聞きして、方向性を見つけ出すように、ご支援をさせて頂きます。
サラリーマン時代に感じた経営者像
先に、大学の卒業式での学長のお話を紹介しましたが、本号では、32年間の会社生活での上司やお付き合いが有った会社の社長さん・幹部の方と接した中で感じた、経営者像に関して紹介します。
なお、ここでの上司は、管理職ではなく、経営判断を行う立場にいる方を示します。
会社員生活では、何人もの上司のもとで働きましたが、いろいろな意味で上司には恵まれていたと思います。
今では、パワハラと思われる上司もあり、その上司のおかげかどうかはわかりませんが、2回ほど「軽い胃潰瘍」にもなりましたが、学ぶことも多くありました。
お世話になった上司のタイプを次に示します。
これは私の私見で、他のメンバーがどう思っていたかはわかりません。
(1)自分では決断をせず、メンバーの意見を聞いてまとめ上げていく
部下(社員)としては、非常にやりがいを持てて、経営に参加しているという満足感を得ることができます。
ただし、決定事項がうまくいかなかった時に、部下に責任を押し付ける場合があります。
あくまでも決めた主体は部下であるが、最終責任は経営者が持つことにより組織(会社)としての力が向上します。
気を付けなければいけないのは、何でも部下に相談を持ち掛けるのではなく、経営者が決めるべきことは自らが決める必要があり、部下に相談したことにより自分の考えと違う決定になった場合、その後の実施で意見対立などの問題が生じます。
(2)自分では決めていて、一応メンバーの意見を聞くが、最終的には自分の意見を押し通す
部下(社員)には、儀式的に意見を聞く場を持つが、あらかじめ自分で決めていて、結論を自分の意見に集約させていくパターンです。
最初は良いですが、何回も繰り返していくうちに、部下は「儀式」に気づき、意見を言ってもしょうがないという気持ちになって、組織(会社)の活力が低下する可能性があります。
経営者のリーダーシップは当然必要なので、意識的に部下の意見も入れた結論に持っていけば良い方向になります。
(3)その上司、あるいはお客様から言われたことを、部下(社員)に押し付ける
「お客さんが言うからこれをやるしかないんだ」のパターンです。
主体を自分ではなく、その先にして、その威光を使って組織を動かすパターンです。
過去の経験では、お客さんが言うことが必ず良い方向とは限りません。
当然お客さんは正しいと思って言っていますが、その背景まで考慮しないと、いざ言われる通りに実施したら、お客さんの中の検討した手段の中の一つでしかなく、それも本命の手段でない場合もあります。
お客さんと「WIN=WINの関係」を築くためには、会社の総意として「対案」を提案するような関係を築くべきで、やはり皆が納得して実行するのが最も力を発揮します。
このパターンは会社の中間管理職に多く見られます。
上司に逆らえないので、それを部下に押し付けて、無駄なことをさせてしまうことがあります。
(4)問題がある部門の管理職を責めて、強引に改善をさせる
最悪のパターンと思います。
私も管理職の会の中で経験しました。
社長(経営者)は、よかれと思っていると思いますが、やられた者はたまったものではありません。
これが繰り返されると、部下(社員)は何も報告しなくなり、どんどん悪い状態に落ち込んでいきます。
私はたまらず個別の場を設定してもらい話し合いを行いました。
その内容は、仕事のことだけでなく、プライベートの面も含めてかなり話し合いをして、「蛇に睨まれた蛙」の関係から「ボス蛙と平蛙」位の関係には持ち込みました。
社長(経営者)は、個人的には優れた人間性を持っています、弱い面もあります、それを表に出せないので行動面で暴走してしまうことになると思います。
(5)何でも自分で決めて、それを部下に説明もなく実施させる
②のパターンで、部下(社員)に議論の場を与えず、強引に進めるパターンです。
非常時には有効な手段ですが、平常時にこれを繰り返すと、良い結果の場合は問題ない場合もありますが、結果が悪い場合は「やらされ感」が浸透し、組織(会社)としての総合力が低下してしまいます。
(6)超現実的で、先のことは考えずに現状の成果にこだわる。先のことは、その時に考えれば良い
一応、中期計画(3年程度の計画)を策定するが、資源は「現状」にばかりつぎ込んでしまう。
上司にこのことを確認したら「3年先はその時に資源がある」との回答、変に納得したことがあります。
ある程度の会社では、資源が豊富なので可能ですが、長期的に獲得すべき資源もあるので、先が読めない状況で走るのは部下(従業員)にとって不安になると思います。
(7)将来のビジョンも示し、その中で現状を判断し、どうするかを示す
「人はビジョンに付いていく」ということを聞いたことがあります。
これまでの経験の中で「しっかりとしたビジョン」を示して、その中での「現状をきちんと位置付け」ができて、「現状やるべきこと」を明確に示した上司に最も従う気がおきました。
当然、人間性も優れた方でしたので。
(8)経営者像・まとめ
以上、思いついたまま書き出しましたが、その場の状況で対応はさまざまなので、どのタイプが良いのかはわかりません。
当然、平常時と非常時では対応が異なり、「みんなの意見を聞きたいのだが、切羽詰まっているので、強引に突破するしかない」場合も多くあると思います。
平常時、余裕があるときは、人財育成もあり、社員の意見をある程度尊重した方が良いと思います。
私としては、「ビジョンを示せる経営者」「決断ができる経営者」「実際に行動する経営者」であれば、付いていける気がします。(結論が簡単になりましたが・・・・)
中小企業の経営者から見ると、大企業の部門の責任者の話で、その責任者の代わりは幾らでもいるので、実績が良くなければあるいは経営環境が変われば責任者を代えればいいだけの話と思うと思います。
実際、その通りで、会社組織はよくできていて、部門の責任者を代えることにより現状を打破する場合もあります。
部下も、上司はいずれ代わるので、暫く我慢したらいい場面もあります。
中小企業では、当然、経営者が代わることは簡単にはできないし、社員を異動させるにも限界があります。
中小企業の経営者(社長)は、常に、企業の存続・発展を考え、最善の策を選択し、決断をしていかなければならない苦しさ・楽しさがあると思います。
中小企業の経営者は、会社の規模にもよりますが、ほとんど一人の場合が多いと思います。
当然、従っている社員の方、特に長く付き合っている社員の方は、社長さんのお考え、行動をよく理解されていると思います。
その中で、変化のために、他の人格を出すことは難しいと思います。
また、長年のご経験により、身についた「経営者としての独自の実力」がおありなので、なかなか自分を変えることは難しいと思いますし、逆に変わらない方が良い場合もあります。
会社運営の中で、現状を変えていかなければならない場面が多くあると思います。
会社運営を継続されている経営者の方は、これまでの間、多くの事案で適切な対応をして、乗り切ってきたと思います。
その上で、更に、外部の力を必要とした方が有効に実施できる場合は、ぜひ、お問い合わせ願います。
違った視点でお手伝いさせて頂ける可能性があると思います。
「コンプライアンス」今でも迷う15年前の判断
ここでは、コンプライアンスに関して、15年前に判断したことで、今でも迷っていることを紹介します。
コンプライアンスとは、狭義では「法令遵守」で、会社が法律や社内ルールに従って活動することですが、広義には「社会的規範」や「企業倫理(モラル)」を守ることも含まれます。
会社の中の一部の法令違反により、それを原因とした法律の厳罰化や規制の強化が行われ、結果的に、善良な会社の事業活動にまで影響を与えています。
食品の産地偽装・成分の偽装、耐震強度の偽装、会社資金の私的流用、粉飾決算、残業代の不払い、秘密情報の流出、欠陥商品のリコール隠しなど、直近では東芝の粉飾決算や、学校法人の学園長の私的流用など、連日のように騒がれています。
コンプライアンス違反が発生すると、会社は信用・信頼を失墜し、信頼回復のためのコストは計りしれないものがあり、会社の体力によっては廃業に追い込まれることもあります。
信頼を築くことはかなりの労力を要しますが、信頼を失うのは一瞬です。
一人の担当者が引き起こした、あるいは判断ミスをしたことが、会社全体に影響を与え、最終的には社長(経営者)が責任を負うことになります。
個人的には、高い倫理観を持っていても、「何らかの原因によって、冷静さを失い、判断基準が誤ってしまう危険」は、どの会社にもあると思います。
対処的には、「問題が発生しても最小限に抑えられる体制作り」が必要ですが、最終的には、「問題が発生しない」組織・仕組を作っていく必要があります。
重大な不良の発生
15年位前のできごとですが、今でも、その時の判断が適切だったのか迷うことがあります。
私が勤務していた会社は「大量製品の製造会社」でした。
ある一定間隔で製品がどんどん作り出され、昼夜連続で稼働している工場です。
原材料の投入から製品として完成するまで数日を要し、最終の検査で不良が発見されると、それが比較的最初の段階に原因があると、莫大の不良が発生することになります。
それを防ぐために、途中で検査を入れて、多量に不良が発生することを防ぎ仕組みを設けますが、予期せぬことでその関所を通り抜けることがあります。
経験した不良は、社内の検査を全て通り抜けて、お客様の組立工程で問題が発生しました。
お客様も多少原因調査に時間を要し、納入したものに原因があることがわかった時点では、お客様での在庫や社内在庫、製造途中のものと莫大な数が対象になりました。
これが全部使用できないとなると、約3,000万円の損失になります。
製造していたものは、加工製品のため、組立製品のように一部の部品を交換して直すことができるものではないので、全て廃棄処分にしなければなりません。
当時、品質保証部長でしたので、お客様に提供する製品に対して責任を持つ立場です。
「お客様に不良を出してしまうのは、社内の品質保証体制ができてないため」ということになります。
不良の発生原因が製造部門の管理不足であっても、それを流出させた責任は重大です。
不良発生に対する対応
不良の報告を受け、社内調査を行い原因を特定し、不良になる対象範囲を特定し、それ以外は問題ない確証を得てお客様に報告しました。
今回の不良は、お客様の最終検査で問題がなくても、将来、お客様の先のエンドユーザーの使用時に発生する可能性も考えられるものなので、当然、お客様も慎重になります。
お客様の品質の責任者は「少しでも怪しいものは受け取れない」との一点ばりで話も聞いてもらえない状況でした。
その責任者とは比較的長い付き合いで、人間関係も構築していましたが、さすがに今回の件は厳しいとのことでした。
私も、その状況、立場はわかるので、対応に悩みました。
対象の製品は、ある一定時間で、お客様で使用しないと使えなくなる、工業製品ですが、生ものに近いので、時間的な制約もあり、短期での対応も必要になりました。
この時に思った対応は次の2点です。
①.お客様の指示に従って全て廃棄する、この場合、約3,000万円の損失が発生する
②.粘り強く、交渉して、問題がないと判断したものは使用して頂く、この場合は、約100万円の損失に抑えられる
結果的には、組織の一員として考え(会社のため)、②の対応をしました。
お客様の固い扉を開いてもらった方法は紹介できませんが、何とか、話は聞いてもらえるようになりました。
その後、お客様の意見も取り入れて、問題ないものを確実に特定する作業を行って何とか使ってもらいました。
当然、後で不良が発生した場合の「ペナルティー」も定めました。
その結果、損失は約300万円に抑えることができ、その後、本件での、市場(エンドユーザー)での不良報告は入っていません。
選択は正しかったのか?
社長からも今回の対応に関して一定の評価を得られましたが、その後も、この時の判断について迷っています。
救済に関しては、お客様、特に尽力して頂いた方に対して多大な労力を費やして頂いて、その方々はお客様の社内から「対応が甘い」と言われた可能性もあります。
今回の件で、お客様からの「信頼」は確実に低下しました。
また、自社内でも、損失が抑えられたことにより、危機感が低下したことも否めません。
大きな損失を計上した方が、その後の組織の体力強化になったかもしれません。
品質保証部長として、社内からの批判はあるが、「お客様のため」と「社内の品質管理体制の強化の面」では、①の対応を選択した方が良かったのではないかと今でも迷っています。
今回紹介した内容は、コンプライアンスの観点では、少し異なるかもしれませんが、会社のさまざまな活動の中で、コンプライアンスにつながることは多いと思います。
経営者に求められる役割
(株)事業パートナー九州は、主に、中小企業支援を主な業務としています。代表者の32年間の製造メーカーでの経験と経営コンサルタントのスキルで、中小企業様あるいはこれから創業される方を幅広く誠実に支援させて頂きます。
これまでは、「経営者」に関して、主にこれまでの経験を基に思うところを紹介させて頂きましたが、ここでは、まとめとして、これまで読んだ「書籍」に書かれていることに若干の私見を加えたものを紹介します。
なお、参考とした書籍は最後に紹介します。
(1)経営理念の設定、承継、浸透
以前の「北九州アシスト法務事務所の創業支援(1)」の際にも述べましたが、創業者が設定した「経営理念」は、「会社の社会的存在意義」を定めたものであり、創業者だけでなく、承継した経営者もその経営理念を引き継ぎ、従業員への浸透だけでなく、対外的にも発信していく必要があると思います。
最近、この経営理念を逸脱した経営により、社会的信用を失っている会社が見られます。
経営者は常に「経営理念」設定の創業者の想いを意識して行動すべきと思います。
(2)利害関係者への説明
会社は、お客様、従業員だけでなく、会社を取り巻く全ての「利害関係者(ステークホルダー)」に正確な情報を提供しなければなりません。
業績が悪い時、問題が発生した場合、人は隠したり、陰で処理したりしてしまいます。
以前のように、隠蔽工作がうまくいかなく、思わぬところから情報が流出してしまいます。
きちんと説明できるように、後で紹介する施策を行い、問題が発生しない「強い会社」を作る必要があります。
(3)環境変化への対応
経営者は、環境変化に敏感であり、それに適切に対応する必要があります。経営が順調であっても、過信することなく、将来発生する可能性があるリスクを速く察知し、また、逆に新たなビジネスチャンスを掴む施策を考えていく必要があります。
32年間の会社勤めの中で、主に「薄型ディスプレイ(壁掛けテレビ)」に関する開発や製造に関わってきましたが、今振り返ると、環境変化(技術動向、お客動向)に対して、結果的に適切な対応が自分自身ができていなかったことを反省しています。
(4)経営ビジョンの明示
前々回に自分がお世話になった「上司」に関して、私的な感想を紹介しましたが、やはり「ビジョンを明確に示す上司」のもとで仕事をした時が、最も充実していたように思います。
従業員は、現状だけでなく、先のことも考えています。
会社の力を結集させる面(ベクトルを合わす)でも、経営者が明確に適切でぶれない「経営ビジョン」を提示することが必要と思います。
(5)経営目標の設定
上記の「経営ビジョン」の提示は、定性的の面では良いですが、従業員が実際に行動するには目指すべき「定量的」な目標を示す必要があります。
また、銀行など(資金調達先)から借り入れがある場合、返済の根拠を示す必要があります。
ただし、この数値目標、特に短期(1年または半年)に関しては、根拠がある「現実的な数値」が必要で、従業員を含めて、会社関係者で共有することが重要と思います。
無理な目標だと、最近騒がれている会社もありますが、会社内で変なひずみが生じる可能性があります。
(6)戦略策定
経営者は、現状や会社を取り巻く環境をよく把握して、会社が存続、発展するために、「戦略」を立案し、関係者に示し、実行することが必要です。
戦略がしっかりしていると、それに基づく、「戦術」が有効に機能すると思います。
個別の方向性がない「戦術」ばかりですと、効果は限定的で、また失敗する可能性が高いと思います。
経営者は、各対象(相手、利害関係者)、例えば、「お客」「競合先」「仕入先」「資金調達先」ごとに、適切な戦略を考え、実行する必要があります。
(7)仕組みの構築
会社は、当然、人やさまざまな資源によって運営されます。
その人、資源をいかに有効に使用できるか、その仕組み作りは有用です。
先に示した「経営ビジョン」「経営目標」「戦略」を遂行するにも、「PDCA」が回る仕組み作りが必要です。
そのためには、会社業務をフローで考え、アウトプットを明確にして、それに必要なインプットを定め、そのインプットを有効に効果があるアウトプットにするための仕組みが必要です。
組織がない個人経営においても、業務について「仕組みの構築」は必要と思います。
(8)利益とキャッシュフローの確保
会社は、ボランティアだけでは、当然、存続することができません。会社を存続させるためには、利益を出して、CF(キャッシュフロー:利益+減価償却費)を確保しなければなりません。
利益、CFを確保しなければ、借入金の返済もできないし、新たな設備投資も、新規に雇用することもできなく、結果的に会社が存続できなくなります。
(9)適切な投資
いくら利益、CFによるお金を持っていても、それを次の成長・発展のために有効に使わなければ意味がありません。
設備投資(あるいは新店舗の設立)、人的投資(新たな雇用、従業員の能力向上)、研究開発投資(新製品、新技術、仕組みの再構築)に、目的を明確にして、適切な投資をする必要があると思います。
当社の中小企業支援
(株)事業パートナー九州は、主に、中小企業支援を業務としています。
「経営者に求められる役割」に関して、書籍に書かれていた項目に関して、これまでの経験も含めて紹介させて頂きました。
32年間の会社生活で、多くのことを学ばせて頂きました。
中小企業の経営者の方は、当然、さまざまなことをお考えになり、実行されていると思います。それがあることにより、長年に渡り、会社を運営されていると存じます。
当社では、良き相談相手として、少しでも、会社の発展にお役に立ちたいと願っています。
会社運営に関して、困ったことがありましたら、お問い合わせ願います。
中央経済社発行「経営コンサルティング・ノウハウ1:経営の基本」
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