【特集03】5S活動の各ステップの内容
(本記事は、2015年9月に記載したものを、2022年12月に一部を修正しています)
別投稿記事で「経営・業務の改善」として、「5S活動」に関して、その必要性、業績向上に関する効果などについて述べさせて頂きました。
本号では、「5S活動」の各ステージについて紹介します。
第1ステップ:整理
最初のステージの「整理」について紹介します。
「5S活動」のメインは「整理・整頓」です。
ほとんどの組織は、この段階をクリアーできずに挫折または中途半端な状態で満足してしまっているかもしれません。
整理の基本
「整理」とは、「いらないものといるものを分けて、いらないものを捨てる」ことです。とにかく捨てることです。
「せっかく会社のお金で買ったものは簡単に捨てられない」「愛着があって捨てられない」「また使うかもしれない」「自分では判断できない」といろいろな意見がでると思います。
ただ言えるのは、「不要なものがあると必要なものが見えなくなる」ことです。
不要なものがあると当然ですが次の弊害が生じます。
1 必要なものが見えなくなる:ひどい例えとして「ゴミの山からお宝を探す」
これにより、必要なものを探すのに時間がかかり、業績向上に充てるべき貴重な時間を無駄にしてしまいます。
パソコンの中も不要なファイルが多いと必要な情報を見つけずらくなります。
2 不要品で場所が占領される
場所には当然お金がかかっています。例えば、新しい設備を入れようとしても、使わない設備が占拠していると当然入れられません。
また、通路に無理やり棚を置いたり、段ボールを積んでいたら、物の運搬に支障が出ますし、いろいろな事故の原因になる可能性もあります。
保管場所がなくなったので、「倉庫を増設しよう」あるいは「外部倉庫を借りよう」とする前に、「整理」を実行してみて下さい。
整理の進め方:捨てる判断基準が重要
整理の第1ステップ:現状把握
整理の第1ステップは、現状を把握することです。
例えば、机の中を整理する場合、各自の机の引き出しを開けて、状況をメンバーで確認することです。
その際に、「整理前の状態として画像に残しておくこと」をお勧めします。これは、整理後の効果を肌で実感し、達成感、やる気を得るためにも必要です。
5S活動に限らず、改善や対策を行う場合、まず実施前の状態を記録に残し(Before)、改善後(After)に同じ視点で記録を残し、比較することにより、実施の効果が一目でわかります。
整理の第2ステップ:必要、不要の判断⇒不要品の廃棄
現状を把握した後は、今あるものの、必要、不要の判断です。
机の中にあるものを、机の上に並べて見て下さい。同じ種類の何本もの筆記用具、数年前の配布資料のコピー、整理されていない名刺、業務に必要のない私物など多くでてくると思います。
その段階で、「捨てる判断基準」を決める必要があります。一度出したものをきれいに収納し直す(整頓)のも多少の効果はありますが、「整理」の目的は、「不要なものを捨てる」ことです。
不要なものを捨てることにより、次の有用なものを収納、あるいは収納しなければならないが入らないので他の場所においてあるものを収納するスペースが生じます。
捨てる判断基準は各個人によって当然異なりますが、「5S活動の整理」には、共通の判断基準が必要です。
この判断基準を作成する際に、「対話」が生まれ、「円滑なコミュニケーション」を形成する助けになります。
この判断を行う場合、「今、必要なもの」だけを残すことです。
「今は必要がないが、将来使うかもしれない」ものは、他の場所に置いて、一定期間経過後に捨てるような運用が有用です。
何本もある同じ筆記用具は、1本だけにして、残りは共通の予備品棚に入れて下さい。もしかすると半年は事務用品の新規購入をしなくてよくなるかもしれません。
また、自部門で必要がないものは、赤札(レッドカード)品として、一定期間他部門に提示し、引き取り手がない場合に処分する方法もあります。
この判断基準を決める時には、その部門の責任者(社長、経営者)も参加して下さい。
先に示したように、捨てる基準は各個人によってまちまちです。部門の責任者は、その部門の統一基準を作るときの最終判断者です。
個々の意見をまとめて、あるいは社会常識、会社方針、個人の考えを説明し、各メンバーの合意を得て決めて下さい。
整理の思い出(1)
整理のステップ(順序)としては、通常、まず、見えるところから開始します。
中には捨てられない人が出てきます。
① まず、机の上を整理しましょう。
通常は、机の上のものの「必要・不要」の判断をして、不用品を捨てます。
ここで捨てられない人は、机の中に無理やり押し込みます。
② 次に、机の中、机の下を整理しましょう。
ここで捨てられない人は、自分の個人ロッカーや倉庫の中で死角を見つけてそこに持って行きます。
③ 次に、ロッカー、倉庫の整理をしましょう。
ここで捨てられない人は、自分の通勤用の車に持って行きます。
ここで、「就業規則違反」になる可能性があります。
不要な書類であっても会社の書類です。
シュレッダーで破砕するなどの適切な処理をしなくて、社外に持ち出すことは大問題です。
人事異動で他の職場に移動した後で、倉庫の片隅に書類の入った段ボールが見つかり、それの処分に困ったことがあります。
整理(必要・不要の判断)ができていないので、廃棄してはいけない書類があるか再度判断しなければならないからです。
ここで無駄な時間を費やし、業績に悪い影響を与えてしまいます。
整理の思い出(2)
次に問題になったのは、「公私の区別」です。
個人の思想や嗜好・趣味は当然尊重されるべきですが、会社の中で、どの程度許されるかが問題になります。
例えば、「あるべき姿」として、帰宅時には「机の上には何も置かない」として、活動に入った時に、いろいろな意見がでます。
「子供の写真」「愛着のあるぬいぐるみ」「デスクカレンダー」「ティッシュペーパー」「ペン立て」・・・・・。
この中には判断に迷うものがありますが、これは「5S活動」以前の問題かと思います。
「子供の写真」「ぬいぐるみ」などの私物は会社に持ち込まない、「デスクカレンダー」「ティッシュペーパー」「ペン立て」などは、帰宅時には机の中やロッカーにしまう。
「子供の写真」は同情する余地はありますが、一つを許すと全てが崩れるので、厳格な対応が必要になります。
今はスマホでいつでも見れますので(スマホ持ち込み禁止のところもありますが・・・・)。
その点、個人事務所として開業したら、これらの点は自由になっています。
ただし、訪問して頂いたお客さんや同業者の気分を害することや「整理・整頓ができない人は仕事もできない」と思われるのは避けるようにしたいと思っています。
今回は、「5S活動」の最初の「整理」についてごく一部を紹介しました。
「5S活動」の考え・根本思想は、単なる物理的、表面的なものを対象にするのではなく、会社運営、あるいは個人生活に適用できます。
「情報5S」「経営5S」「事務5S」「研究開発(R&D)5S」など、目的に合わせて取り組んでいるところもあります。
「5S活動」は、会社の基礎体力を高める有用な考え・手法と思っています。
現在の状況を打破し、発展を目指す中で、「5S活動」が有用な可能性ありますので、お問い合わせを願います。
実際に現場で確認をさせて頂いて、経営者の方と一緒に取り組ませて頂きたいと考えています。
第2ステップ:整頓
「5S活動」の第1ステップの「整理:いらないものといるものを分けていらないものを捨てる」に引き続き、第2ステップの「整頓」について紹介します。
整頓の基本
「整頓」とは「必要なモノが、いつでもすぐに取り出せるようにすること」「必要なモノを使いやすく配置すること」です。
先の「整理」で、「必要なモノ」だけが残った状態が必要です。「整理」が不十分で実施しても効果が少ないです。
このときに最も大切なことは「検索性」(スピーディーに取り出せること)です。
また、継続性を考慮して、複雑なシステムにせずに、なるべくシンプルに、更にコストをかけない工夫も重要です。
寸法ぴったりの細か過ぎる仕切りや、使うたびに崩れて誰かが時間をかけて整頓し直さなければならないようの収納は適切ではありません。
「整理」によって不要品がなくなったので、以前よりも「スペース」に余裕が出ると思いますが、これは将来の有用なモノの保管のために確保すべきものでスペースがあるからといって制限なくモノを購入すると元の「整理前」の状態になってしまいます。
「整頓後」のモノの占有率が「60~70%位」に管理できるように、定常的に不要品を廃棄していく必要があります。
前号で「整理前の状態を画像で残す」と示しましたが、今度は、この「整頓後の状態を画像に残して」下さい。そうすると前後で、効果が一目で確認でき、達成感を得ることができると思います。
さらに「整頓後の画像」を「あるべき姿」として、掲示などの方法で共有することにより、その後の乱れを防ぐ対策になります。ただし、あまり掲示し過ぎると美観の面で問題になることもあるので注意が必要です。
見て、皆が「美しい」という状態が理想です。
整頓の進め方:「3定」と「見える化」
「3定」で整頓
「3定」とは、「定品」「定量」「定位置」のことです。「定められた品物(必要なモノ)を、定められた量だけ、定められた場所に置く」ことです。
「整理」によって必要と判断したものを、使用状況により算出した必要な量を、使いやすさや作業の流れから決めた場所に置くことです。
この「3定」は、実際に関わる人が「対話」により決めていくのが良いと思います。
「整理」の段階では、「廃棄基準」を設定する判断が必要でしたが、この「整頓」の段階は、現場の人が中心になって、経営者や管理職はアドバイザーに徹した方が良いと思います。
「見える化」で常に関心を
「常に自分で見ている」あるいは「人に見られている」ときは、継続するものです。
例えば書類を収納するキャビネットは、中が見える方が「整頓」の状態が継続します。
機密書類以外は、オープンの棚か、ガラス扉のものが良いと思います。中が見えない扉の場合、見た目は良いですが、中がひどい状態になり、乱れに気付くことが遅れてしまいます。
清掃用具もロッカーに入れるのではなく、壁に定位置を決めて、見えるようにした方が乱れが少なくなります。
机の引き出しは、中が見えるようにはできないので、各引き出しにいれるものを決めて、開けたらその整頓状態が一目でわかる工夫が必要です。
机の引き出しやかばんの中は、入れる場所を決めていないと「ごちゃ入れ状態」になり、探すのに時間がかかることになります。
たまに、名刺交換の際に、かばんの中のどこにあるかをその場で探す人に会いますが、定位置を決めて、習慣化されていればそのようなみっともないことにはなりません。
整頓の思い出
東日本大震災の時ですが、その時、千葉県にいて、会社でデスクワークをしていました。最初は大したことはないと思っていたのですが、これまでと違い、どんどん揺れが大きくなって、さすがに恐怖を感じました。
確か「震度5」だったと思います、東北の被災地に比べたら軽い揺れですが、これまでにないことなのでかなり驚きました。
幸いにも、負傷者もなく、設備の被害も大したことはありませんでした。
その地震の時に「ある管理職のキャビネット」だけが、扉が開いてなだれのように書類が流れ出しました。配布された会議資料を「整理・整頓」せずに、見えない場所に山積みしていたのが原因です。
個人に割り振られたキャビネットの中は、各個人に任されていて、見えない扉でしたので、誰も平常時は気が付きませんでした。
これは一例で、中が見えない扉の中は、どうなっているか、個人任せにしているとひどいことになります。
第3ステップ:「清掃」
「清掃」とは「職場をきれいな状態にして、いつでもすぐに仕事(作業)ができるようにすること」です。
「整理・整頓」で「必要なものを、使いやすい状態」にしたことで、より清掃し易い状態になっていると思います。
工場で機械を扱う場合、「清掃は点検なり」と教えられました。
始業前に、装置を清掃することにより、油漏れやさび、金属粉飛散などを気付くことができ、その装置に大きな故障が発現する前に、装置の機微な故障を見つけることが可能になります。
当然、単に機械的に「清掃」するのではなく、注意深く「清掃」を行う必要があります。
先のブログでも示しましたが「1作業1片付け」で、時間をかけずにこまめに清掃をすることが長続きするこつです。
この「1作業1片付け」は、人によっては、できそうでなかなかできないものです。
例えば、出張に行った後、カバンの中の書類や交換した名刺をすぐに出して処理すること、直後に処理すれば、記憶も薄れてないのでより良い報告書などが書けるのですが、戻ると、他の仕事が気になって、そちらに手を付けるために出張の処理が後回しになってしまいます。
そのため、記憶をたどって、より時間がかかり、また、その報告書などの内容が不十分になってしまいます。
また、出張先で名刺交換をした方にすぐに、メール連絡や電話連絡を入れたらビジネスチャンスが高まるのに、時間が経過したことにより、ビジネスチャンスを失うこともあります。
私は、名刺交換をした方には、メールやフェイスブックで、なるべく直ぐに、ご挨拶を入れることを心がけていますが、これを継続することを定着させるにはかなり労力を要しました。
ほとんどの方は、すぐに、連絡を受けた方が「好印象」を持って頂き、多少、覚えて頂けるようになると思っています。
私のような士業の場合、並列で業務の処理をする場合が多くあります。
その際に、やっている業務の「小片付け」を行って、次に開始したときに、すぐに思い出してスムーズに取り掛かれるようにしておかないと時間の無駄が生じてしまいます。
少し話が脱線しますが、「清掃状態の評価」で実践したことを紹介します。
会社勤務のときに、「クリーンルーム」で仕事をすることが多くありました。
クリーンルームといっても、清掃を継続的に実施しないと「ほこり」が堆積していきます。
その清掃状態を確認する時に、「白いクリーンルーム用の布(ワイパー)」と「強い光の懐中電灯」を用意します。
「白い布」で装置の上や裏側を拭くと「ほこり」の付着状態が良くわかります。
また、部屋の照明を消して、「懐中電灯」で装置の上や、床を照らすと、ほこりが光って、清掃状態が一目で判断することができます。
「清掃」で気をつけたいのは、まとまった時間を設けて実施するのではなく、こまめに実施することが重要です。
その際に、始業から10分間、あるいは昼休み後に10分間と時間を決めて、一斉に、全員参加で継続すると効果がでます。
たまにスーパーで「○○時になりました」「従業員の皆さんは一斉に身の周りの点検、清掃を実施して下さい」とアナウンスを聞くことがあります。
この時に、従業員がきちんと実施していれば好印象を持ちますが、実施しないと逆に悪い印象を与えますので注意が必要です。
また、担当エリアを決めて、役割と責任を明確にして、清掃状態をチェックする仕組みを構築し、習慣化できればより効果がでます。
「清掃」は継続が大事で、先の「整理」「整頓」を活かす上でも、粘り強く定着させたいものです。
第4ステップ:「清潔」
「清潔」とは、「整理、整頓、清掃(3S)を維持すること」です。
きれいな職場であると、汚すのが申し訳ない気持ちになり、きれいな状態を維持しようとする意識が働きます。
いかに少しの労力で「3Sを維持できる」かは、各自の少しの「意識」、「行動」によって決まります。
「意識」の三原則
① 見せる
他の人に、「見られている」という消極的な意識よりも「見られたいように見せる」という積極的な意識を持つと維持が継続します。
② 汚さない
各自が汚さないように気をつけて振る舞うだけで汚れは減っていきます。
③ 広げない
あらかじめ段取りを考えていれば、机の上や作業場にむやみやたらとものを広げる必要はないはずです。
「行動」の三原則
① 整える
書類や工具の置き方で見た目の印象が良くなります。
同じものを乱雑に置くよりも、角を揃えるとか、一列に同じ方向で並べるとかの少しの配慮で見た目がよくなります。
② もとに戻す(・・・ぱなしの防止)
使ったらその都度元に戻すことを意識して実行しましょう。
「出しっぱなし」「点けっぱなし」「使いっぱなし」になりがちですが、前に示したように「1作業1片付け」を実施しましょう。
③ 汚れはその都度取る
汚れは時間が経つと、除去し難いものがあります。特にテープや接着剤は固まってしまった後は、特殊な薬剤が必要になることもあります。
だいたいの汚れは、すぐに拭き取るなどの処理を行えば除去できます。
従業員の中に、作業服が汚れていることを自慢する人がいます。本人は「油が付着」「インクが付着」した作業服を「自分は仕事をしているんだ」と誇示していると思いますが、これは考えものです。
この場合、汚れる部分に適切な保護具(エプロン、腕カバーなど)を付けて、作業服を汚さないことが必要です。
また、身体に有害な物質に触れる場合は、マスクや手袋などの保護具を用いることは当たり前のことです。
汚れた作業服で職場から出て、例えば食堂に行った場合、他の人に迷惑をかけることになります。
3S(整理・整頓・清掃)が少し乱れた段階で、修正できるようにする環境が重要になります。
乱れがわかるように、設備の塗装色を明るい色にしたり、玄関マットも汚れがわかるようなものにするとか工夫が必要です。
その中で、担当者だけでなく管理者あるいは他のメンバーが気付いて、良い意味で指摘し合える環境をつくることが重要です。
この「清潔」段階では、これまでの「3S(整理・整頓・清掃)」各ステージで、各メンバー間で「対話」を通じた信頼感ができてますので、指摘されても素直に対応できるものと思います。
第5ステップ:「しつけ(躾)」
「しつけ(躾)」とは、「決められたルールをきっちり守るよう習慣化すること」です。
「4S(整理・整頓・清掃・清潔)」を継続することができると、決められたことを守る習慣が組織に根付きます。
これを継続させるには、先にも述べましたが、「経営者の5S活動継続の意思」が必要です。
社長や経営者、管理職が「5S活動に関心」を持ち続ければ、しつけは自然とできますが、熱意がなくなると元の状態に戻ってしまいます。
「しつけ」が定着すると「当たり前のことを当たり前にできる会社」になり、会社の基礎体力は強くなります。
ただし、トップ層からの「掛け声」だけでは定着は難しく、それを維持する「5S推進委員会」のような組織をつくり、役割を明確にして、日々活動を継続するしくみが必要になります。
ここで気をつけなければいけないのは、あくまでも「5S活動」の主体は「全員」であり、「5S推進委員会」だけが行うのではないことです。
このため、「5S推進委員会」のメンバーは、半年や1年で交代し、多くのメンバーに経験してもらうことも有効です。
これまで、「5S活動」について、「活動の効果」と各ステップ「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ(躾)」の内容について紹介しました。
(株)事業パートナー九州は、中小企業の経営改善を支援します。
32年間の製造メーカーで経験した事、学んだ事をベースに、中小企業様のお役に立てることを願っています。
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