【特集04】「経営・業務の改善」~課題解決のステップ~
(本記事は2015年10月に投稿したものを2022年12月に一部変更をしています)
今回は、「課題解決のステップ」について紹介します。
製造メーカーに勤めていたので、「製造現場あるいは納入先で不良が発生した」ことが前提となっていますが、ここで示す内容は、製造現場だけでなく他の組織や販売会社、及び「会社の経営課題」に関しても適用が可能と思っています。
<課題解決の基本ステップ>
「課題解決の基本ステップ」を示します。基本的には皆様が定常的に実施しているものと同じだと思います。
Ⅰ.現状分析
Ⅱ.要因分析(原因分析)
Ⅲ.対策の検討
Ⅳ.対策の実施
Ⅴ.対策の効果確認 *結果によっては再度、要因分析や対策の検討に戻る
Ⅵ.再発防止(歯止め)の検討・実施
Ⅰ.現状分析
製造工程や製造した製品で不良が発生した場合、まず、現状分析を行います。
現状分析で大事なのは、「3現主義:現場、現物、現実」です。
「現場」に行き、場を確認する。
「現物」を手に取り、物を確認する。
「現実」をこの目で見て、事実を知る。
よく問題が起きたとき、経営者や管理職は、担当者からの報告だけで、現場に行かなく現物も見ないことがあります。
問題によってはこれで十分な時もありますが、ほとんどの場合、その報告を中途半端に信じたばかりに、判断を誤り、場合によっては更に問題を大きくしてしまうことがあります。
問題の解決のスピードや仕上がりは、この「現状分析」の内容が大きく影響します。
現場に行って、対象の物を、担当者と一緒に見て、状況を把握することが重要です。
また、この段階では、少しの観察結果(判断材料)で、過去の経験などで、推察し、断定しないことです。
現状分析が不十分な状態で、判断してしまい、その後、対策を実施しても全く改善されず、無駄な時間を費やしてしまいます。
若い時に「物が訴えているんだ、それをくみ取らなければならない」と上司に言われました。
「不良品」などを徹底的に見れば(調べれば)、次のステップの「要因(原因)」がわかってきます。
見方として、「マクロ的な見方」と「ミクロ的な見方」があります。
私が製造会社勤務の時に主に扱っていた製品は大面積なガラス基板の上に微細なパターン(構造物)を形成するものでした。
部屋を暗くして、強い光(懐中電灯)を対象物に当てると、異常な個所は、「光輝くとか」「ざらついているとか」、他と違ったように見えます。
人の目は、検査装置で見えないものを見ることができる可能性があります。実際、特に若い人はよく見えます。
機械は、変化がはっきりしているものを見つけることができますが、徐々に変化している、いわゆるアナログ的な変化は目で見つけるしかない場合があります。
また、異常が、「いつ」「どの場所」で発生しているかも併せて調べることにより、その後の要因分析がスムーズに進みます。
これで異常になっている場所を特定することができます。
ここで異常な状態を見つけて、その部分を徹底的に、さまざまなアプローチで見る(調べる)ことです。
その際に、同じ方向だけでなく、違った方向、例えば平面的だけで見るのではなく、立体的に見てみることです。
以前に、ある時から、不良が増えて、同じようなモードの発生率が増えてきました。
原因追及のために、不良個所を光学顕微鏡で見ました。その状態は過去に起こったものと同じように見え、過去にとった対策を暫定的に実施しましたが、ぜんぜん不良率に改善が見られませんでした。
そこで、電子顕微鏡で立体的に見ると、一目瞭然の「画像」が目に入り、明らかに、購入している材料に原因があるとしか考えられないことがわかりました。
当然、材料メーカーにも調査依頼をかけていたのですが、「問題ないとの回答」でしたが、この1枚の画像を見せた瞬間、一瞬で認めて頂きました。
これまで数々の原因に結びつく電子顕微鏡の画像を見ましたが、これは最も印象深い画像で、鮮明に思い出すことができます。
当社では、当然、顕微鏡や電子顕微鏡を保有していませんが、「現状分析」でこのような調査が必要な場合、北九州近郊には、外部分析を受け入れる機関もありますので、ご協力できることもあると思います。
以上「現状分析」を製品の不良を例にあげて紹介しましたが、生産性を上げるために、各工程の作業分析を行う場合も、現場に行って、よく見る、あるいは状況を把握するために「徹底的に見える化」を行うことが重要です。
また、経営状況を把握するために、財務諸表の現状分析、あるいは売り上げの推移をさまざまな視点で分析することにより問題点を明確にすることができます。
財務諸表の見方については、別途、ブログで紹介します。
Ⅱ.要因分析(原因分析)
「現状分析」で状態が把握できたら、「なぜそうなったのか」の「要因分析(原因分析)」のステージです。
この中で重要な視点は「4M分析」と「なぜなぜ分析」です。
「4Ⅿ分析」とは、「材料(Material)、機械(Machine)、人(Man)、方法(Method)」の各頭文字をとったものです。
この各Mの視点で、系統的に、要因(原因)を考える、あるいは調べることです。
これは、「製造会社」での項目設定の観点ですが、経営面の「要因分析」であれば、例えば「社会環境」「お客動向」「営業方法」「仕入方法」などになります。
漏れがないように、大きな項目から、順次細分化していくことが必要です。
この時の整理として特性要因図や系統図が利用され、要因(原因)を見える化して、関係者がわかるようにします。
この要因分析で重要なのは、「なぜなぜ分析」で真の要因を見つけられるように、「なぜそうなのか」をどんどん掘り下げていくことです。
「トヨタ」では、この「なぜなぜ」を5回実施しているとのことです。
「必ず真の要因がある」との気持ちで実施すると、真の要因を掴むことが可能になります。
次のステップとして、要因分析で整理した「特性要因図」や「系統図」から、影響の大きい要因を選定します(重み付け)。
この時は、重要性や緊急性等を考慮して、優先順位を決めて、3点程度を選定します。
この選定した「要因(原因)」に対して次のステップの「対策の検討」に入ります。
この時の要因分析がしっかりできていると、比較的容易に、次のステップの対策立案を行うことができます。
各会社において、日々、「課題」が発生していると思います。
この課題に関して、いかに小さいうちに発見し、速く対応できるかが、その会社の基礎体力の強化、ひいては業績の向上につながります。
これまでの「32年間の製造会社」で習得した知識、経験を「課題の解決」に活かせることを願っていますので、ぜひ小さいことでも、お問い合わせ願います。
Ⅲ.対策の検討
対策を検討するには、その前提の「現状分析」「要因分析」に基づいて行われますが、実際の現場では、どんどん作業が進行していますので、根本的な対策を待っていることはできません。
そのため「出血を止める応急処置」が必要となります。
例えば、「問題が発生した製品の生産を一時中断し他の製品の製造に切り替える」、「暫定の対策を実施し確認を強化して進行させる(これが恒久対策になることもある)」などの対策を行う必要があります。
この応急処置を施した後に、これから示すステップを実施することになります。
「対策の検討」~「再発防止(歯止め)」の流れは、マネジメントサイクルの「PDCA」と同じです。
*Plan(計画)⇒Do(実行)⇒Check(評価)⇒Action(改善)の流れを繰り返してレベルアップを図るマネジメント手法
要因分析(原因分析)で抽出した主要な要因について対策(案)を検討します。
この際は、関係するメンバーでブレーンストーミング行ってアイデアを多く出して、評価を行って、要因1つに対して「3つの対策」を選定して下さい。
要因を3つ選定した場合は、「9つの対策」が選定されることになります。
対策が1つであるとその対策が的はずれであったり、効果が少なかった場合は時間のロスになりますので、次善や代替の対策を用意しておいた方が良いです。
この選定した対策に関して、時間と担当を決めて、計画に落とし込みます。
この時は、全体の推進責任者を設けて、情報が一か所に集まるようにしておくことが必要です。
計画は、横軸を日程に、縦軸を実施項目として、表にまとめて関係者がいつでもわかるようにして下さい(見える化)。
対策の中には、装置の改造や材料の変更など時間がかかるものがありますので、効果の期待が少なくても短期に実施できるものは着手して下さい。
Ⅳ.対策の実施
実施する対策の計画が決まりましたら、決めた担当者を中心に実施していきます。
実施の段階は、定期的に(日々)、進行状況を確認し、推進責任者を中心にして遅れている対策の挽回策を考えて進めていく必要があります。
対策によっては、効果が全くなく、または逆に悪い結果が生じることもあるので、常に実施状況を管理して、変化に対応することが必要です。
Ⅴ.対策の効果確認(フィードバック)
対策実施の段階から、管理項目を設定して、その管理項目の数値が、各対策によって、どうなっているかを把握する必要があります。
朝礼などで共通の書式(フォーマット)を使用して、できれば管理項目の数値をグラフ化して、関係者で対策の効果がわかるように、情報を共有化して進めて下さい。
対策は実施するだけでなく、その各対策がどのような効果(影響)を与えたかを把握することが重要です。
「要因(原因)分析」が十分になされていると「実施した対策」の効果が得られないことは少ないですが、場合によっては、実施した対策が予想に反して効果がでない場合もあります。
この際は、先に実施した「要因(原因)分析」あるいは「現状分析」に戻って(フィードバック)、検討をやり直す必要があります。
また、対策の効果確認で新たなことがわかって、追加対策を行う場合もでると思います。
Ⅵ.再発防止(歯止め)
実施した対策が効果を出して問題が解決すると一区切りになりますが、ここで手綱を緩めると、また、同じ問題が発生する可能性があります。
一度発生し、対策した問題を二度と発生させないことが「再発防止(歯止め)」になります。
製造現場では、先の「要因(原因)分析」で示した「4M(人、装置、材料、方法)」の観点で、「再発防止策」を検討します。
人の面では、教育を重視し、例えば、作業者が交代した場合にも問題が再発しないようにしなければなりません。
装置の面では、点検個所を明確にしてチェックシートを使って異常が発生しないように、異常を直ぐに発見できる仕組みを作ります。
材料の面では、供給メーカーと共同で管理項目と管理値を設定して、異常なものが供給されないようにします。
方法の面では、「作業標準書(作業マニュアル)」の見直し、改訂をして、作業員が間違えないようにします。
チェックシートは単なる「レ点」を入れるのではなく、主要な管理項目には、「数値」や「写真の画像」を点検の際に入れるような確実な運用が必要です。
単なる「レ点」の場合、チェックする人がよく観察しないことが起きる可能性があります。
また、チェックシートには、重要な項目に絞り、作業員の負荷を低減させる工夫も必要です。
現場が安定して運用できるまでは、経営者、管理職がしつこく確認を入れることが、「習慣化」できる効果的な方法です。
「5S活動」と同様に、「経営者、管理職」の熱意が重要になります。
ただし、管理的になるのではなく、現場のメンバーとよく「対話」し、また、対策の効果が出ていたら「ほめる」ことも忘れないようにしたいものです。
対策の実施で不良等が解消あるいは減少すると、または「別の問題が発生」すると、中途半端に終わってしまうことがあり、せっかく対策したのに再発してしまうことがあります。
また、対策の効果を継続的に監視し、安定したと判断できるようになれば、現場の負荷を少なくすることも考えていく必要があります。
これを怠ると、「無駄な作業」が標準になり、コストの面でも負担が大きくなります。
「経営・業務の改善」として「課題解決のステップ」について、主に製造会社の視点で紹介しました。
「課題解決」の最後は「対策を継続できる習慣化」です。
強い会社(組織)と弱い会社(組織)の違いは「習慣化」の違いで、「良い習慣」が当たり前のようにできる会社(組織)が、「会社(組織)の基礎体力」が強くなって、これが業績の向上に結びつきます。
各会社によって、課題は幾つも発生していると思います。
この中で、いかに速く、確実に、「現状分析」と「要因(原因)分析」ができるかが勝負になります。
課題解決に時間がかかると、その分、損失が発生してしまいます。
課題解決は「系統的に、論理的に」進めないと、「行き当りばったりの対処療法」では、不十分な結果になり、損失が多くなります。
32年間の製造会社勤務の中で、数多くの課題に直面し、解決してきました。
振り返ると、効率的に進められたケースだけでなく、失敗と思われる事例もあります。
これまでの経験を、中小企業様の課題解決のお役に立てることを願っています。