経営改善・事業再生 2020年(5)
本記事は、以前のホームページに記載したものを整理したものです。
【1】労働生産性を上げるには「社員のやりがい」を高める
(20200829)
企業の経営資源として「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」と言われています。
中小企業の最大の経営資源は「ヒト」です。他の要素はこの「ヒト」の上に成り立っています。
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、経済活動が停滞、変化している状態だからこそ、「ヒト」に関することを徹底して考え、実行すべきです。
そのポイントは、次の3つです。
1 労働生産性を高めるためには社員のやりがいを高める
2 優れた従業員を育てるには「期待する」こと
3 人件費が最大のコストであり、投資でもあることを認識すること
これらを、3回に分けて説明していきます。
労働生産性を高めるための基本的な考え方
働く人々がやる気になる仕組みを創る
労働生産性とは一人当たりの従業員の利益高です。
中小企業の社長の中には「うちの従業員の中には優秀なやつはいない」という方もいますが、個々の従業員が「やる気」になれば、能力が上がり、その結果として労働生産性は高くなります。
「やる気になる仕組み」が必要で、具体的なものの例を次に示します。
風通りがよく、働く人々が自由にものを言える労働環境
会社の改善のための意見は、誰でも自由に言えるように、意見箱や提案欄を設置する。
頑張って成果を上げた分だけ報われる仕組み
給与と役職(ポジション)に関して成果報酬型の仕組みと歩合等の報奨金制度を取り入れる。
働く人々が社長や会社と話し合って、一人ひとりの自己の目標設定ができている
従業員が入社した時から、定期的に社長や上司らとともに自分の人生目標と会社での業務目標を定めて相互に目標管理していく。将来の「(自分の)素晴らしい姿」が見えるようにする。
会社として倒産の心配がない
若いときに入社して、50歳代で会社が倒産して職を失った場合には、その後の就職は大変苦労する。働く人々にとっては人生を狂わせる一大事である。ゆえに社長は会社を倒産させてはならない。
社長がリーダーシップを発揮して、尊敬されている
中小企業の生死と成長は、「社長一人」にかかっていると言っても過言ではない。しかし、一定の段階を経ると社長一人では会社は動かせない。その時に「組織」が必要になる。組織が機能するためには、社長の「リーダーシップ」と「尊敬される人間性」の二つが必要となる。
働く人々が自分の仕事に誇りを持てて、やりがいが持てる
人間が生きるうえで支えになるものの一つに誇りがある。それは「生きがい」とも言える。生きがいの始まりは「やりがい」である。これがあると現在の収入は絶対的な条件ではなくなる。つまり「給料分だけ働く」ではなくなる。では、「やりがい」とは何か?それは「自分の行動の成果を適正に評価してもらえる」ことである。
「がんばれ」と言うだけでは人は動きません。動いても成果はでません。
同じ仕事を行うにも、「自分で納得して行う」場合と「言われたなりに行う」場合では、仕上がりに大きな差があります。
また、仕事の成果を適切に評価して、納得してもらうことが、次の仕事の「やりがい」につながります。
中小企業、特に小規模零細企業では、きちんとした人事制度・評価制度を運用しているところは少ないですが、社長・上司が、「経営理念」に基づき、筋が通った考え方で従業員の評価を行うことが必要です。これにより、社員の「やる気」「やりがい」が高まり、労働生産性が向上し、定着率も高くなっていきます。
本内容は、(株)事業パートナーの松本光輝の著書も参考にして紹介しています。
【2】優れた社員を育てるには「期待する」
(20200906)
会社として夢があることが従業員の士気の源泉です。夢のない会社には人は集まりません。社長の第一の仕事は夢を創ることです。
無能な経営者の愚痴
・うちには「いい人」が来ない
・うちは「イエスマン」ばかりで自分で考えようとしない人間ばかりだよ
・うちには仕事を取れる奴はいないから、俺が一人で仕事を取っている
・どこかに「いい人」がいないかな
これらの愚痴を言う暇があるなら「人を育てる」ことを考えましょう。人を育てる最大の恩恵は「社長が楽できる!」ことです。
・(従業員が育つと)社長にとって事業承継が楽にできる
・会社の利益が増える
・従業員一人ひとりが、働くことに「やりがい」を持つようになり、辞めないで長く働くことになる
・何よりも社長はゆとりの時間を手に入れることができる
優れた社員を育てる『3つのポイント』
1 入社前にやるべきこと
会社の考え方、事業内容、理念・目標、本人のやるべき仕事と期待等をしっかりと何度も話し合って共感してもらう。
2 入社直後にやるべきこと
本人の考えや希望を「見える化」して、会社の仕事に合わせて「10年後のなりたい姿」「今後5年間のなりたい姿に向けての自分計画」を本人と経営陣と一緒に作る。その達成のために何かの資格が役にたつなら取得費用等を援助する
3 その後にやるべきこと
1と2で作られた計画が確実に達成されるようにフォロー体制を作る。
・入社後1年目は3ヶ月ごとに定期面談をする
・入社後2年目から5年目は6ヶ月ごとに定期面談する
・入社後6年目以降は、将来の目標を改めて考えるための面談を定期的に行う
これらのことは、社長も必ず一緒に行うことが肝心です。「教えることは教わること」にもなります。
「働く人を一人にさせない」「会社での本人の存在感を認識させる」ことがポイントです。
人は期待して育てることが大切です。
本内容は、(株)事業パートナーの松本光輝の著書も参考にして紹介しています。
【3】人件費は最大のコストであり、投資でもある
一般的に日本の社長は社員の給料を経費と考えて、できるだけ安く使うことに考えを巡らせています。「人件費」というように給料は「費用」という概念があります。例えば、「広告宣伝費」は少なければその効果も少ない。「家賃」も安ければ場所が悪く機能性が低く、「車」も安い車はそれなりに機能性が低くなっています。つまり、すべて高いのにはそれなりの理由があります。
では、なぜ人件費は「できるだけ抑える」という考え方が定着してしまったのでしょうか?
大企業と中小企業の人件費の考え方の違い
大企業と中小企業の「人件費」に関する考え方の違いをみてみます。
大企業
人件費を投資として考えて優秀な人材を高給で雇う
中小企業
会社が儲かっても儲からなくても従業員の給料は平均並みで、あとはすべて社長が取るという考え方
上記の2つの違いからも分かるように、スタートの地点から会社が成長するかしないか、儲かるか儲からないかは決まっています。
対策として
・中小企業は大企業を見習って、人件費をコストと考えず、投資と考える
・最初から従業員全員を対象とせずに、始めは管理職や専門職の人から投資対象として給料を上げることを考える
・外部から稼げる人材を高給で雇うことを考える。その時の阻害要因として「現在いる従業員との調和が取れない!」等の言い訳をしてグズグズとためらってはならない。会社の業績は良くても悪くても社長の全責任であるので決断が必要
3回シリーズで、「新型コロナウィルス感染拡大」の中での経営について、「人」の資源の活用について、(株)事業パートナーの松本社長の著書をベースに紹介しました。
中小企業の資産(財産)は「人」が全てです。優秀な人材を集めることができれば良いのですが、中小企業では難しいのが現状で、そのため今いる貴重な従業員のレベルを上げ、定着してもらうことを継続的に行うことが重要です。
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