【特集13】(リスケの出口)借金(債務)の整理・事業再生
借金(債務)の整理:法的整理 or 私的整理
これまで、銀行に借金の返済を一時的に止めてもらったり、減額してもらったりする「リスケジュール(リスケ)」について説明しました。
また、リスケの出口として、経営改善計画が順調にいった場合とうまくいかなかった場合について示しました。
<リスケの出口>
ここでは、(5)~(7)のうまくいかなかった場合について何回かに分けて説明します。今回は(7)の法的整理・私的整理に関して紹介します。 *(1)~(4)は別記事に記載しています。
借金(債務)を処理するしかない
「うまくいかなかった場合」というのは、銀行に借金を返せない場合です。返せない場合は、当然、借金(債務)の整理を行う必要があります。
企業の危機的状況を抜本的に解決するためには、各債権者に債権放棄をしてもらう方法がより効果的です。
債務整理の分類は、
・目的別には、「再建型」と「清算型」
・手段的には、「法的整理」と「私的整理」
があります。
「破産」は清算型の法的整理で、「民事再生」は再建型の法的整理です。
私的整理についても、再建型と清算型に分けられます。
★当社が取り組んでいるのは「再建型の私的整理(私的再生)」です。
法的整理と私的整理
法的整理は、裁判所の介入によって、債権者と債務者との間の債務について調整を行う方法です。
一方、私的整理は、裁判所の介入を必要とせず、債権者と債務者の直接的な折衝によって債務の処置・処分を決めていく方法です。
これは、手続き(手段)による分類であり、裁判所が介入した債務整理の手続きの仕方が詳細に定められているか、それとも裁判所の介入を要せず、直接的な債権者と債務者の折衝による手続きかによって区別されます。
法的整理の場合、企業の信用力やブランドが著しく毀損される場合があります。一方、私的整理は、債務者のブランド力や商品供給が確保されるなどの事業価値の減少を最小限にしながら再建できる利点があります。
法的整理と私的整理をまとめたものを示します。
信用力の低下を極力抑えて企業再建を行うためには、私的整理によるべきといえます。
しかしながら、私的整理による債権放棄については、透明性や公平性に疑義が生じる可能性があり、債権者の合意を取り付けることに相当な労力と時間を要します。
また、取組中に債権者などからのプレッシャー、先行きの不安などから、経営者が精神的に疲労することもあります。
そのため、私的整理に関しては、事業再生の専門家と一緒に取り組むことをお勧めします。事業再生の専門家であれば必要なときは事業再生に詳しい弁護士との連携も可能です。
何のために事業再生を行うのか?目的とゴールの設定
これまで、経営に行き詰まった際、特に銀行に借金を返済できなかった際の対応方法や債務(借金)整理について紹介してきました。
ここでは、事業再生、特に「債務整理を私的整理で行う事業再生」について紹介します。
事業再生の目的・ゴール
最も大事なのが、何のために、誰のために、事業再生を実施して、最終的にどんな姿を実現したいかを明確にすることです。事業再生に取り組む誰しもが初めての経験であり、苦難の道を進まなければなりません。その道を歩み続けるためには「強い信念」が必要です。その信念を維持するためにも「何のために、誰のために、どうしたいか」を明確にする必要があります。
・自分(社長)や家族がどう生きていきたいのか?
・事業をどうしたいのか?続けたいのか、やめたいのか、譲りたいのか?
・従業員及びその家族をどうしたいのか?
・取引先をどうするのか?
特に自分がどう生きて行きたいのかが重要です。従業員は働けなくなって一時的に生活が苦しくなるかもしれませんが、再就職することが可能です。社長は、借金を抱えたまま就職するのはほぼ不可能です。自分で現状を打破していくしかありません。
この「事業再生の目的とゴール」を決めないと、どの手法で事業再生を行うかを判断することはできません。
事業再生の条件
事業再生ができる条件は2点です。
1 再生させる「価値のある事業」があるかどうか
2 その価値ある事業で「利益を出して資金繰りが回ること」
現在実施している事業が、社会的に必要なものであるとか、市場で多くの販売が期待できるものであることが必要です。その次に、その「価値ある事業」で利益を出すことができることで資金繰りが回ることになります。資金繰りが回れば、打つ手は出てきます。状況によっては、「利益が出る価値ある事業」を切り出して第二会社に移して、借金を元の会社で処理する方法も選択肢としてでてきます(第二会社方式)。
*第二会社方式:別の記事で紹介します
事業再生の進め方
事業再生の一般的な進め方を示します。事業再生は個々の案件の状況(借金の額、事業の内容、個人資産の状況など)によって進め方が変わりますが一般的な流れを示します。
【1】経営状況の把握
まずは、苦境に陥った原因を突き止めることです。そのためには現在の状況を正確に把握することを徹底的に行います。
多くの企業では、まずは、財務面と事業面を行い、必要に応じて法務面や労務面などの調査(デューデリジェンス:DD)を行います。
財務DDの主要点
財務DDで重要な観点は、「実態バランス」と「正常収益力」です。
(1)現実に合った「貸借対照表」の算出(実態バランス)
中小企業の場合、銀行や得意先に経営状況をよく見せようと細工をしている場合があります。
・回収が不可能になっている売掛金の計上
・架空の在庫の計上、売れない在庫を計上 など
また、持っている財産(資産)の中でも、土地や株式・ゴルフ会員権など、帳簿に示されている価値よりも下がっている場合もあります。
これらを調べて、現在の価値に直します。
また、この財務DDで他の重要な点は、借入金や担保の状況を明確にすることです。特に、決算書などに示されていない借金(簿外債務)があることがありますので注意が必要です。
(2)現在の稼ぐ力(正常収益力)
中小企業の「損益計算書」の中には、
・架空の売上の計上
・減価償却費の未計上
・妥当でない役員報酬
・節税対策のための生命保険 など
があり、真に稼ぐ力(利益)が不明確になっている場合があります。
損益計算書の売上、各経費を精査して、真の姿を算出します。この真の姿を使って、「借金が何年で返済できるか?」などの検討を行います。
事業DDの主要点
事業DDでは、外部環境(市場・顧客・競合先の動向:3C分析、社会・政治情勢の変化など)と内部要因(会社の資産である保有技術や人材など)に分けて調査します。
外部環境では、調査で抽出した内容が自社にとってチャンス「機会」になるのか、不利な状況「脅威」になるのかを判断し、また、内部要因では、競合先と比べて優位な点「強み」と「弱み」を検討します:SWOT分析。
この事業DDから、事業が上手くいかなくなった原因を検討します。この原因が後に策定する事業計画の実施内容につながっていきます。
【2】再生手法の決定
上記で現状を明確にした上で、どのような再生手法をとるべきかを検討します。内容によっては「運動療法」で良いのか、「投薬治療」が必要か、さらに「外科手術」が必要なのかを検討します。
再生手法は、幾つもの手法があり、個別案件によって最適な進め方を決めていきます。
*再生手法については次号で紹介します
【3】事業計画の策定
上記で再生手法を決定したら、先の現状調査も含めて事業計画を策定します。これは事業再生のための「実施内容(アクションプラン)」と今後3~5年の売上や利益などの「数値計画」をまとめたものです。
この計画の中には、借入金の返済計画もまとめて、銀行などに示し、了解を得る必要があります。
【4】再生計画の実施
先の「事業再生の条件」で示したように、再生計画の実施では、「利益を出して資金繰りを回す」ことが必須になります。
そのためには、最初の段階では、「資金(キャッシュ)の流出」を防ぐ必要があり、そのため、銀行と調整をして「元金の返済を止める:リスケジュール」ことを実施したり、経費の削減を行います。
また、状況によっては、人員削減を伴う大幅なリストラ(事業の再構築)を行う場合もあります。
また、計画の進捗については、銀行などの関係者に定期的に報告することも要求されます。
事業再生をやり抜くには社長の強い意志
事業再生に取り組むには、最初に示したように「目的とゴール」を明確にして、強い意志で取り組むことが必要です。
強い意志があれば、手法は何とでもなると考えています。
事業再生の種類と特徴 ~法的再生~
先に、事業再生では「目的とゴール」を明確にして進めることを記載しました。
ここでは、事業再生の種類とそれぞれのメリット、デメリットを示します。まずは、「法的再生」を中心に紹介します。
事業再生の種類
事業再生を大きく分けると「法的再生と私的再生」があり、その中で幾つかの種類(方法)があります。
法的再生
法的再生は、裁判所の関与下で行われる法的整理手続きを利用して再生する手法で、「民事再生」と「会社更生」があります。
法的再生は、裁判所が手続きに関与するので、手続きの透明性や公平性が担保され、債権者に対して法的拘束力を及ぼすことができます。
<法的再生のメリット>
1.債権者による権利行使を一時的に禁止することで、債権者の強制執行等によって事業継続に必要な資産が差し押さえられ事業の継続が困難になることを防止できる。
2.法的に多数の債権者等が同意をして裁判所が認可すれば、債権者全員の同意を得ることができなくても、再建計画を成立させ事業の再生を図ることができる。
3.事後的に否認や詐害行為を主張されるリスクや届出されなかった債権は失効することによって簿外債務などの負担リスクがないので、スポンサー企業から支援を得やすくなる。
<法的再生のデメリット>
1.法的再生を行っていることが公表されることで、イメージ的にも経済的にも損失が生じ、経営基盤が弱くなる。
2.裁判所への予納金や弁護士費用などを負担しなければならない。民事再生の予納金は、「負債の総額」によって異なり、5億円~10億円未満の場合は、500万円になります。
法的再生は、倒産というマイナスイメージがつくと事業運営に差し支えるような企業や、法的再生先との取引をしないという取決めがある取引先が多い企業などでは、利用しにくい制度になっています。
ただし、単独の再建では法的再生を用いると事業基盤が損なわれるおそれがあるものの、スポンサー企業があることで新たな信用供与を受けることにより、取引関係の維持継続を図ることができる場合もあり、状況によっては活用を検討する価値があります。
「民事再生」
民事再生は、経営破綻の恐れのある企業の再建手続きを定めた法律である「民事再生法」にしたがって、裁判所や監督委員の監督の下、債務者自身が主体的に手続きに関与し、企業の再生を図っていくものです。
<手続き>
裁判所へ再生開始申立がなされると、通常、債務(借金)の弁済禁止などを内容とする保全処分命令の発令とともに監督委員が選任されます。
1)監督委員が再生手続開始ができるかの調査・審査を行い意見書を裁判所に提出
2)裁判所が意見書に基づいて再生手続きの開始を決定
3)裁判所が、債権(借金)調査や財産調査を行い現状を把握する
4)債務者が今後の事業・借金の返済計画(再生計画案)を策定して裁判所に提出する
5)監督委員がこの再生計画案についての意見書を提出し、債権者に提示される
6)債権者の決議で承認され、裁判所が認可すれば、再生計画が確定
*債権者の決議要件:議決権を有する再生債権者について、議決権行使者の過半数の同意、かつ議決権総額の2分の1以上の多数で承認
<スケジュール>
・申立~開始決定:1~2週間
・再生計画の提出期限:申立後3ヶ月(場合によっては延長可能)
・再生計画の承認:再生計画提出後、2~3ヶ月
申立から、5~6ヶ月後から本格的な再建施策が行われることになります。
<民事再生の特徴>
1)経営者の地位に変更がない
・手続きが開始されても原則として経営陣は引き続き経営を続けることが可能。
2)監督委員の承認が必要
・監督委員は、再生債務者の業務を監督し、重要事項の決定を行う場合の同意権を有している。
3)担保権の行使ができる
・担保権行使そのものを制限する規定はなく、担保権者は担保権の行使は可能。ただし、事業継続に必要な資産に対しては一定期間の権利行使の中止の場合はあり。
4)従業員の雇用は維持できる
・ただし、再建過程でのリストラの一環として解雇となる可能性はあり。
5)債権調査・確定制度がある
・認められなかった債権は失効するため、スポンサー企業はリスクを回避することができる。
6)破産への移行手続きがある
・再生計画案が認可されない場合、債務者が再生計画の履行を怠った場合などでは、裁判所が裁量で破産に移行できる。
会社更生
会社更生は、窮地にある株式会社について利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更正を図る手続きである「会社更生法」にしたがって、裁判所の監督のもと、裁判所が選任した管財人(更正管財人)により企業の再建を図っていくものです。
<民事再生との違い>
民事再生は、再生債務者の再建を迅速に図ることを目的にしていて、経営者の交代を含む会社組織の変更は含めていません。
一方、会社更生は、広く関係者の権利調整を行い抜本的な再建を図ることを目的としており、更生手続きの中で経営者や株主の交代をもたらし、担保権者の担保権行使にも制限があります。
更正手続きは、手続きが複雑であり、民事再生よりも手続きに時間を要します。そのため、中小企業では適用は難しく、大企業でもあまり利用されていません。*中小企業への適用は難しいため、ここでは手続きや特徴などの具体的なことは記載しません。
民事再生と会社更生の比較を示します。
裁判所が介入する「法的再生」について紹介しました。次は、多く用いられている、裁判所が介入しない「私的再生」について紹介します。
法律・制度に準じた私的再生の進め方
事業再生を大きく分けると「法的再生と私的再生」があり、その中の「法的再生」について紹介しました。
事業再生の種類を再度示します。
私的再生
「私的再生」は、債務者が、債権者との直接交渉により、債務(借金)の整理を進めながら事業再生を行うものです。債権者との協議や私的な債権者集会などにより再建計画の同意を得つつ、事業の再生を図ります。
私的再生では、民事再生などの法的手続きと異なり、再生計画が成立するには債権者全員の同意が必要となるため、反対者がでないように慎重に進める必要があります。
しかし、法律で定められた手続きを行わなくてもよいので、非常に柔軟に進めることができます。
例えば、金融機関に債権放棄を要請しても、事業継続をする上で継続取引が必要な仕入先企業に対しては債権放棄を要請しない、といった措置が可能です。
また、私的整理であれば、関係者だけの話し合いによって行われるので公表が控えられるので、社会的信用を維持しながら再生に取り組むことができます。
その一方で、債権者の中でが一人でも反対していると、再生計画案が成立しないというデメリットがあります。また、裁判所のような公権力が介入しないため、手続きに不公正なふるまいが紛れ込んだり、あらぬ妨害が生じたりする可能性があります。
私的再生には、危険性もありますが、社会的信用を保ちながら再生に取り組める点で、当社では、安易に法的再生に行かずに、私的再生を徹底的に検討し最善の道を探ります。
ここでは、私的再生の各種の方法を紹介します。
準則型の私的再生
私的再生は、裁判所の関与はありませんが、一定の規則にのっとり債権者と債務者の交渉を進めやすくする「準則型」があります。
私的整理ガイドライン
2001年に全国銀行協会などの金融機関や有識者により作成された私的整理(私的再生)に関するガイドラインであり、私的整理の準則、手続きの方法について定められています。このガイドラインは、その後に作成された様々な「準則型」のベースになっているもので、中心となる考え方や手順はこれに準じています。
しかし、中小企業に適さない内容や主要債権者(主にメインバンク)が債務整理の実行主体として大きな役割を担っていますが債権カットなどの対応ができなく、実際の運用事例はさほど多くありません。
中小企業再生支援協議会による支援協議会スキーム
私的整理ガイドラインを踏まえつつ、より中小企業の特性や地域の特性を考慮したものがこのスキームです。全国の中小企業再生協議会に持ち込まれた案件のすべてに適用されており、事例が多くてノウハウも蓄積されているところに特徴があります。
私的整理ガイドラインとの大きな違いは、債務整理の実行主体として、主要債権者が大きな役割を果たすのではなく、第三者となる中小企業再生支援協議会が担う点です。中小企業再生支援協議会は公的な行政組織なので、公平性が担保されており、法的再生に近い制度といえます。債務超過の解消も5年以内を目処としており、3年以内を目処とする私的整理ガイドラインよりも緩やかな制度になっています。
また、中小企業融資の多くに関与している信用保証協会を債権者として明確化しているのも特徴で、各都道府県の信用保証協会の承認を得やすいため、中小企業の事業再生に適しています。
特定認証ADR手続き
ADRとは「裁判によらない紛争解決手続きのことです。公表の必要がないため、重要な取引先との関係を維持しつつ、 第三者的立場の組織がADR機関になり、裁判所に代わって債務整理を進めるので、比較的公正性を担保しやすい制度です。
現在は、「事業再生実務家協会(JATP)」がADR機関となって、事業計画の検証や金融機関との調整を行っています。
特に上場企業は再生期間中も上場の維持が可能であり、大企業の再生に活用されています。
地域経済活性化機構(REVIC)
2009年10月に設立された「株式会社企業再生支援機構(ETIC)」を前身とする官民ファンド(2013年3月に商号変更)であり、経営人材の投入や投融資など総合的な再生支援を行います。金融機関への債権の買取りや金融機関調整も行います。
地方の中堅企業、大企業を対象にしています。
各準則型の私的再生のまとめ
上記に示した3つの準則型の私的再生(推進機関)を表に示します。
非準則型の私的再生
当社が行っている事業再生は、この「非準則型の私的再生」に分類されます。
「非準則型」の私的再生は、債務整理の手続きなどについての規則はありません。会社法や債権法、民法などの関連法律を活用しながら進めるものです。「非準則型」ですが、基本的には、「私的整理ガイドライン」に沿ったルールで進めます。
企業規模が大きく、債権額も大きく、債権者と債務者との調整に大きな問題がある場合は「準則型」を使う場合がありますが、多くの中小企業の事業再生は「非準則型の私的再生」で行われています。
事業再生が必要と感じたら
まずは、当社にお問い合わせ下さい。素人の判断で金融機関や上記の中小企業再生支援協議会などに相談すると、画一的な対応により、結果的に再生ができなくなる可能性があります。当社では、これまでの経験に基づく、各企業の現状・将来に適合した事業再生の進め方を検討します。
優良な事業を移して再生を図る ~第二会社方式~
債務整理・事業再生の最後に「第二会社方式」による事業再生について紹介します。
第二会社方式による事業再生とは?
第二会社方式とは、経営が悪化している会社が実施している幾つかの事業のうち、利益が出ている事業を事業譲渡や会社分割により切り離し、他の事業者(第二会社)に承継させるとともに、利益が出ていない不採算部門は元の会社に残す方法です。元の会社に残した債務(借金)は、破産や特別清算等の手続きで消滅させます。
第二会社方式のメリット
(1)事業再生ができる可能性が高くなる
過剰債務(多額の借金)が切り捨てられる優良な事業(利益が出る事業)だけで再生を図るために再建の可能性が高くなります。
(2)スポンサーの支援が受けやすい
第二会社方式では新たな会社を利用するので、簿外債務(隠していた借金など)や過去の法令違反の問題を回避することができ、その結果スポンサー(金融機関含む)による資金援助が受けやすくなるというメリットがあります。
(3)債務免除益の課税を回避できる可能性がある
事業再生後も払えない債務については、債権放棄(債務免除)になる場合があり、その場合は「免除益の課税」が問題になりますが、第二会社方式の場合、その処理は旧会社の処理となりますので、分離した第二会社は影響を受けません。併せて、旧会社について、破産・民事再生などの法的整理手続きが取られるのであれば、債権者(金融機関など)にとっても無税償却が可能になり協力しやすくなります。
第二会社方式の難しさ
第二会社方式による再生を行う場合、次の課題があります。前述のメリットの裏返しになります。
(1)優良な事業があるか?
この再生方法は、利益を出すことができる「優良な事業」を持っているかが一番重要になります。第二会社に移した事業の採算性が悪い(利益が少ない、赤字)場合は、いずれ第二会社も経営に行き詰まってしまい、第二会社に移した意味がなくなります。第二会社による再生の場合、優良な事業があるかないかが最も重要です。
(2)スポンサーが得られるか?
優良な事業を切り離す場合は次の2通りの進め方があります。
・事業譲渡などにより、他の会社に優良な事業を移す(M&A)
・切り離した事業のための新会社を設立する
いずれの場合も資金などを拠出してくれるスポンサーが必要になり、このスポンサーが見つかるかも重要になります。
(3)金融機関などの債権者の合意が得られるか?
金融機関にとって、第二会社から借金の回収ができなく、旧会社には有望な資産が残らない状態なので、債権放棄に応ずるのはなかなか難しいことになります。ただし、対象の会社が「第二会社方式による再生」しか選択肢がない場合は、債権放棄などに応じてもらえる可能性はあります。
事業再生をどう考えるか?
これまで、「事業再生」について紹介してきました。実際の事業再生では、これまで紹介してきた基本的なことを踏まえた中で、個々の案件については多くの再生手段があります。現在、相談した先(税理士や金融機関、商工会議所など)から、「打つ手がない」「打つ手を思いつかない」などと言われても、現状をよく整理してみると、まだまだ打つ手がある場合が多いと考えています。
ただし、経営が悪い状態を放置しているとますます悪くなり、再生がより難しくなりますので、早めに行動することが必要です。
<事業再生を成功させるためには>
(1) 社長が「再生をやり抜く強い意志」を持ち、成功するまでその意志を継続すること
これが最も難しいことです。
(2)信頼できる支援者を得ること
実施する社長は事業再生については素人です。的確な方向性を示し、伴走してくれる支援者が必要です。
弊社では、これまでの実績と多方面の専門家との連携により、個々の企業の現状を把握して、最適な事業再生の進め方を決定し、支援します。