コンプライアンス違反の倒産増加
直近の粉飾決算
2023年10月12日に、東京商工リサーチから「コンプライアンス違反」による倒産が増えてきているとの報告が公表されています。その中に示されている「粉飾決算」による中堅企業の倒産を示します。
堀正工業の場合は、銀行から融資を受けるために、債務超過を偽るために、54行の金融機関ごとに異なる決算書を作成して、これが発覚し、銀行との取引停止になり、その後破産になっています。
なお、(株)トガシ技研は、スポンサー企業による再生が進んでいるとのことです。
コンプライアンス倒産の推移
帝国データバンクが、2023年4月に「コンプライアンス違反倒産」の状況を公表しています。
2022年度は、コンプライアンス違反による倒産が大幅に増えています。
コロナ禍のゼロゼロ融資の返済が開始され、同時期に「資材や原材料費の高騰」「人手不足・人件費の高騰」が重なり、中小企業の経営状況、資金繰りは悪化しています。
帝国データバンクの同報告には、不正内容も示されています。
架空の売上計上や融通手形などの「粉飾」、
過積載や産地偽造などの「業法違反」、
金融機関に提示した用途と異なる使い方をした「資金使途不正」、
これらが、金融機関との返済等の話し合いの中で発覚し、金融機関との取引停止(借換の中止、一括返済の要求等)で、資金繰りが行き詰まり、倒産に追い込まれています。
ほとんどの企業の経営者は「事業の継続」に必死です。その中で先に示したように、銀行から新規の融資を引き出そうと経営状況をごまかす「粉飾決算」を行うところもでてきている状況です。
「粉飾決算」をはじめ、小さなごまかしが、段々と大きくなっていって、気付いたら取り返しができない状態に追い込まれることがほとんどです。
コンプライアンスに関するチェックリスト
以前(2020年9月25日)に、「日本弁護士会」がまとめた「中小企業のコンプライアンス・チェックシート」について報告しました。
この時は、M&Aで「売れる会社」にするためにまとめたものですが、コンプライアンス違反を防ぐチェックシートにもなり得ますので、再度示します。
これをみると、会社のルールをきちんとつくり、そのルールに則って確実に実行することが、不正を防ぐ対策です。
Q1 会社の基本的なルール(株主総会・取締役・監査役)
~株主や役員との間の内部紛争による会社の混乱を防止するために~
1 株主は複数いるが、株主総会を開く予定はない
2 株主総会は開くが、書面で招集通知はせず、一部の株主しか出席しない
3 取締役会はあるが、実際に開く予定はない
4 株主総会や取締役会の議事録を作っていない
5 会社の定款がどこにあるかわからない
6 株主は複数いるが、株主名簿は作成していない
7 親族や知人が監査役になっているだけで会計監査はしていない
8 弁護士は費用が高いイメージがあるので利用したことがない
Q2 職場の基本的なルール(労働時間、セクハラ、パワハラ)
~従業員との間の残業代や解雇等の労働紛争を防止するために~
1 会社の就業規則は作っていない
2 気に入らない従業員や能力のない従業員はクビにしてもよい
3 労働組合に入った従業員には辞めてもらうことにしている
4 従業員が自主的に残業してくれるので、残業手当はないし、「36協定」も必要ない
5 タイムカードや出勤簿などで従業員の労働時間を管理していない
6 セクハラやパワハラは従業員同士の問題で会社の問題ではないと思う
7 結婚や出産をした女性従業員は辞めてもらう
8 「働き方改革」関連の法律は中小企業とは無関係だと思っている
Q3 取引先との契約
~取引先との間の契約関係をめぐる紛争を防止するために~
1 取引先との間で契約書を作成したことがない
2 取引先との間で契約書の締結をしたが中身を見ていない
3 取引先から支払条件や代金について一方的に不利な要求をされている
4 取引先から商品購入の際、不要な商品も一緒に買うよう求められている
5 取引先に暴力関係者がいるので不利な条件で取引を求められている
6 顧客名簿を従業員が自由に社外に持ち出せる
7 名簿業者から顧客名簿を買ったことがある
8 裁判沙汰はないので弁護士は必要ないと思う
Q4 債権管理・債権回収
~資金繰りに困らないように売上金を確実に回収するために~
1 受注のほとんどを口頭で行っている
2 受注した後に契約条件を口約束で変更することがある
3 受発注の内容を社内の帳簿できちんと管理できていない
4 入金予定日に代金が入ってこなくても放置することがある
5 取引を始める際、相手方の経営状況を全く確認しない
6 取引先の会社が潰れたとしても、社長個人に請求すればよいと考えている
7 取引先の社長が口頭で自宅を担保に入れると言っているので安心だ
8 取引先が倒産したときに取引先の商品を勝手に持ち帰ったことがある
Q5 消費者との関係(表示の問題、特定商取引法など)
~商品をめぐる顧客との間のトラブルを防止するために~
1 自社の商品の広告には、正直、少し大げさなところがある
2 クーリング・オフという言葉の意味を知らない
3 認知症の方との契約も署名捺印してもらった以上は全て有効と思う
4 消費者契約法という法律があるのを聞いたことがない
5 契約書に「商品事故は一切責任を負わない」と買いているので安心だ
6 自社商品の取扱い説明書に安全性に関する注意が記載されていない
Q6 営業秘密や知的財産(特許・商標・著作権など)
~会社が保有する営業秘密や知的財産を守るために~
1 顧客名簿や重要なノウハウがあるが、社内で秘密として厳重管理していない
2 重要な営業秘密を提供するにあたって、秘密保持契約を結ばない
3 他社から従業員を引き抜き、他社の営業秘密を入手したことがある
4 他社と製品の共同開発を行うにあたって、契約書を交わさない
5 他人のホームページに良いフレーズがあったので自社の宣伝に使っている
6 他社の売れ筋商品の名前を模倣して販売したことがある
Q7 コンピューターなどのITの関係
~IT化社会において情報の流出等を防止するために~
1 コンピューターウィルスの対策を行っていない
2 メールで添付ファイルを送る際にパスワード設定を行わない
3 フェイスブックやツイッターでの情報漏えい防止を従業員に注意していない
4 インターネットで通信販売をしているが、法律上の規制を意識したことがない
5 販促として電子メール広告を行っているが、法律上の規制を意識したことがない
6 汎用パソコンソフトを複数のコンピューターに使い回している
日本弁護士連合会のホームページでは、チェックシートの各項目に関する解説が記載されています。
当社でもご相談を受付けますので、ご連絡下さい。
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