債務免除益と繰越利益欠損金の関係
事業再生において銀行等が債務免除を行った場合、その会社には「債務免除益」が発生します。この債務免除益は通常の収益と同様に課税対象となりますが、繰越欠損金がある場合、その取り扱いが重要です。
● 通常の利益 会社の通常の営業活動などから得られる利益を指します。
● 債務免除益 銀行等からの債務免除により発生する特別利益であり、これも課税対象となります。
● 繰越欠損金 過去の会計年度において発生した損失のうち、まだ控除されていない部分を指します。繰越欠損金は、将来の課税所得から控除することができます。
税務上の取り扱い
通常の利益と債務免除益がある場合、それぞれの金額は以下のように計算されます。
・通常の利益と債務免除益を合計します。
・合計した額から繰越欠損金を控除します。
これにより、課税対象となる利益が決定されます。具体的な計算手順は以下の通りです:
・通常の利益 + 債務免除益 = 総利益
・総利益 – 繰越欠損金 = 課税所得
課税所得がプラスの場合、その金額に対して法人税が課されます。もし、繰越欠損金が総利益を上回る場合、課税所得はゼロとなり、その年の法人税は発生しません。
<例>
・通常の利益: 1,000万円
・債務免除益: 500万円
・繰越欠損金: 1,200万円
この場合、計算は以下のようになります:
・1,000万円 + 500万円 = 1,500万円(総利益)
・1,500万円 – 1,200万円 = 300万円(課税所得)
したがって、300万円が課税所得となり、この額に対して法人税が課されます。
繰越欠損金の注意点
繰越欠損金には繰越期間の制限があり、日本では原則として繰越期間は10年間です。また、税務上の条件や制限事項もあるため、具体的な取り扱いについては専門家の助言を仰ぐことをお勧めします。
その他の事業再生時の繰越欠損金の活用
(1)再生中の利益と法人税の相殺
(2)グループ内での損益通算
(3)資本政策との連携
これらについては別の投稿記事にまとめています。
前後の記事
- 前の記事
- 松本社長の経営に役立つ話(18)自宅を担保にした場合
- 次の記事
- シニア起業の注意点