事業再生相談(1)廃業の仕方
コロナ禍の影響、原材料費・人件費の高騰、人手不足、後継者不在など経営環境が悪化している中で、事業の継続が難しくなっている企業が増えてきています。
事業パートナーグループにも、事業再生や廃業の相談が増えています。
これらの相談の中の幾つかを紹介していきます。
経営課題をお持ちの企業の方々に「事業再生」や「先の姿が見える廃業」に向けた参考になれば幸いです。
企業の経営支援を行っている士業・コンサルタントで、解決が難しい案件がありましたらご相談を承ります。連携して対応することも可能です。
事業再生相談(1)廃業の仕方
相談者
A社 食品卸業及び小売業
相談内容
長年にわたって仕事をしてきたがコロナ禍の影響で事業の継続が難しく、家族と話し合って廃業することに決めた。
その対応として、銀行からと知人からの借入金の返済のために自宅を売却しようと考えている。
初めてのことなのでどのように進めたらよいのかを指導してもらいたい。
現在の状況
・創業:35 年 ・社長:61歳 ・社員:5名
・年商:1.5 億円 ・営業利益:△1,000 万円
・現預金残高:120 万円
・銀行借入残高:2,700 万円 ・リース会社:3社で 250 万円
・住宅ローン残高:1,800 万円 ・自宅時価:3,700 万円
・個人のカードローン:4 社 160 万円
対策
・自宅の時価は住宅ローン残高よりも高いので、廃業前に売却して、住宅ローンを支払った後の現金を確保する。これは銀行等からの仮差押、支払督促を避けるためもある。
・会社・個人の資産、負債の棚卸をして、一覧表を作成する。支払う負債と支払わない負債に分ける。支払うものについては優先順位を付ける。
・まずは自宅売却で残った資金で知人からの借入金を返済する。銀行は廃業後に長期の返済とする。
・自宅売却後の賃貸住宅の目処をつける。
・会社がある小売店舗の事業譲渡先を探す。
・在庫の棚卸をして廃業までに廉価販売計画を作る。
・社員の転職先を探す。
・リース会社に廃業の旨を伝えて、残金に対して和解交渉をする。
・個人のカードローン 4 社に廃業の旨を伝えて、残金に対して和解交渉をする。
留意点
・銀行の借入残金に対しては、全額が保証協会へ代位弁済となる。保証協会に対しては年齢が 61 歳ということ、資産が無いということ、当面は収入がないということを勘案すると毎月の返済は 1 万円程度となることが予想される。
・大切なことはすべての支払よりも、今後の生活費を確保することを優先しなければならないということ。
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