外部環境分析の重要性
以前の投稿「中小企業の淘汰が進む」の中の最後に、今後も事業を継続し発展させるためには、「事業ドメインの再設定」が必要であることを示しました。
事業ドメインが大事(再掲載)
既存事業では、成熟期あるいは衰退期に入っていて、今後の成長が難しい場合があります。ほとんどの企業は「今後の展開」について不安を持っていると思います。
現在、多くの中小企業が将来に対して不安を抱いている背景には、急速な市場環境の変化や競争の激化、さらには技術革新によるビジネスモデルの変化があります。不安を解消するためには、目の前の問題に対処するだけでなく、長期的な視点で自社の立ち位置を見直し、意味のある事業計画を立てることが重要です。事業計画を立案するための前段階として「事業ドメイン」の再設定が必要です。
「事業ドメイン」とは、企業が「何を(商品・サービス)」「誰に(市場・顧客)」「どのように(生産や販売の展開方法)」を提供するのかを定義するものであり、企業活動の基盤となるものです。しかし、市場の変化や顧客のニーズの多様化に伴い、一度設定した事業ドメインが陳腐化(時代遅れ)になることもあります。これを放置すると、企業は競争力を弱めて、経営の持続が困難になるリスクが生じます。
中小企業が将来の不安を解消し、持続的に成長するためには、まずは自社の「事業ドメイン」を再設定することが重要です。そして、この事業ドメインの再設定を基盤とし、実効性のある事業計画を立てることで、経営の安定性を向上させ、発展させることが可能になります。
外部環境分析が重要
事業ドメインの再設定には、自社で行っている事業に関する外部環境分析を行うことが重要です。外部環境を間違って把握して、「事業ドメイン」の設定、「事業計画の策定」を行うと、その内容は方向性を間違ったものになります。
以下に外部環境分析の進め方について記載します。
1 PEST分析でマクロ環境を理解する
PEST分析は、政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)という4つの課題から外部環境を分析する手法です。広い視点で自社の事業に関する外部環境の影響を知ることができます。
・政治:規制や法律、政府の政策が業界に与える影響を考慮します。
・経済:消費者の購買力や考え方、経済成長率などの経済的懸念を評価します。
・社会:人口動態やライフスタイルの変化、文化の動向を見据え、顧客ニーズの変化を捉えます。
・技術:技術革新やデジタル化がや市場に与える影響を分析します。これにより、新たなビジネスチャンスを発見できる場合があります。
2 現状分析で差別化戦略を見出す
現状分析を行うことで、自社がどのような立ち位置にいるか、また競争性優位を持つ領域を特定することができます。
代表的な分析手法はSWOT分析やポーターの5フォース分析です。
・競合の強みと弱み:競合先が提供している製品・サービスや戦略、マーケティング手法、ブランドの強みを調べて、自社と比較して、自社の「強みと弱み」を抽出します。
・顧客ニーズの認識:各種の統計データから顧客の購買状況を調査し、評価することにより、現状や今後のトレンドを把握し、自社が提供できる商品・サービスを考えます。
3 顧客の声を聞く(VOC:Voice of Customer)
顧客のニーズや市場トレンドを正確に把握するために、顧客の声を直接収集することが重要です。アンケート調査、インタビュー、SNSでのコメント分析、カスタマーレビューの収集など、様々なチャネルを活用して実施します。
・顧客セグメンテーション:顧客層を詳細に分け、各顧客ごとのニーズや問題点を把握します。
・ニーズの変化:従来の製品やサービスが顧客の期待に応え、また新たに登場しているニーズにどう対応できるかを検討します。
4 技術トレンドの調査
最新の技術トレンドや新しいツールの活用により、事業運営の効率化や新たなビジネスチャンスを見つけることができる可能性があります。
・業界レポートの確認:業界レポートや技術白書を活用し、業界全体の技術動向を把握します。
・業界イベントやカンファレンスに参加:技術革新の最前線に触れることで、今後の展望や他の企業がどのように対応しているかを学ぶことができます。
5 スケジュールプランニングで将来を予測する
外部環境は変化するため、複数のシナリオを描いて対応策を検討する暫定プランニングが有効です。
・複数のシナリオを考える:最善のシナリオ、最悪のシナリオ、そしてその中間のケースについて戦略を準備しておけば、柔軟に対応できます。
6 データの定量・定性分析
市場データや顧客調査の結果を統計的に分析し、数値としての裏付けを行うことが重要です。例えば、売上データの分析や市場シェアの推移、顧客満足度のデータなどを活用します。定量的なデータだけでなく、顧客からのフィードバックや業界の動向など定性的なデータも含めた分析がより確実な結果が得られます。
これらの分析手法を組み合わせて活用することで、外部環境を広く把握し、事業ドメインの再設定に視点を得ることができます。
次回は、外部環境と自社が保有する資産(強み)のマッチングとそこからの施策立案について紹介します。