事業承継・M&A・廃業 2021年(3)
本記事は、以前のホームページに記載したものを整理したものです。
【1】認知症になったときの財産管理 *民事信託
(20210629)
中小企業の経営者は60歳を過ぎても、まだまだ元気で「事業承継」のことを考えない方が大半だと思います。
では、認知症になって判断能力がなくなってしまったらどうなるでしょうか?
・会社の株式を100%保有しているので重要事項に対して議決ができない(会社の機能が停止)
・個人名義の銀行口座が凍結され、これを防ぐには「成年後見人」を立てなければならない
・賃貸物件として運用している経営者所有のマンションを「介護施設の費用」捻出のために売りたいが売れない
などなど、問題が多発します。
*河合保弘著:家族信託活用マニュアル(日本法令)から転記
人の一生には、様々なライフステージがあり、そのステージごとに様々な悩みがあります。
亡くなった際は、「精神(心)」と「肉体」はなくなりますが、「財産」は残り、その財産に対しては責任をとることはできません。
上図のように、それぞれのステージに対応した「代理」「後見」「遺言」などの制度がありますが、必ずしも財産の願い・悩みを解決することはできません。民事信託は、使い方によっては、各ライフステージの課題に関して対応ができる方法です。
現在、経営者が高齢になり、後継者が不在の会社が多く存在します。「事業承継」「M&A」が注目を集めていますが、「民事信託」も「大承継時代」の有力な方法です。
民事信託とは?
民事信託は、財産の管理と承継を合わせて行うことができます。
委託者が自分の財産(不動産、株式等)の運用を、信頼がおける受託者(例えば長男)に委託し、その運用で得られた収益(マンションの賃料や株式の配当など)を受益者が受け取る仕組みです。
受益者は、委託者でもそれ以外でも可能です。最初の契約(信託契約)で決めておけば、委託者が亡くなった場合、受益権を他の方(委託者の妻や子ども)に移動することができます。
【2】事業承継に民事信託を活用
(20210704)
こんな場合は、民事信託の検討を
次のようなお悩みをお持ちの経営者の方、ぜひ、お問い合わせ下さい。民事信託が活用できます。
*河合保弘著「家族信託活用マニュアル」(日本法令)から引用
信託の事例
事業承継は様々な視点で検討を
事業承継は、経営者にとって最大のイベントです。「事業を始めた」あるいは「引き継いだ」時から「事業承継」は始まっています。
事業承継には、
・後継者の選定、後継者の育成
・後継者が不在(M&Aか廃業か?)
・後継者への株式の引渡し、相続人間の調整、相続税の問題
・引継ぎ後の自分の生活
などなど、多くの課題が発生します。
中小企業では、経営者を中心とした同族関係者が自社株式の大半を所有しており、会社の所有と経営が一致しています。また、経営者個人名義の不動産を事業のために使用するなど、経営者の資産と自社が密接な関係を持っています。
そのため、現経営者から後継者への事業承継では、自社株式と事業用資産を後継者に集中して譲ることが必要となり、その点において税金(相続税、贈与税)の問題と他の家族との資産分割(相続、遺留分など)に問題が生じます。
自身が亡くなったときに、所有する資産の割り振りは遺言で行うことができます。遺言を書く人は年々増えて、最近は「自筆証書遺言」の法務局での保管制度も開始されました。しかし、前号で示したように、遺言には遺言者が意図する財産の承継の実現に必ずしも万全ではありません。
家族の財産管理や承継を目的とする民事信託は、遺言や成年後見などの従来の制度では実現できなかった点を実現できるという点で注目され、特に、事業承継の面では、課題の解決の一つとして期待されています。
弊社の事業承継の取組みでは、まずは現在の状況(後継者の面、事業内容、財務状況など)をお聞きして、民事信託を含めて最適な進め方を提案します。
【3】「大廃業+コロナ禍」時代を救うM&A
(20210719)
現在の中小企業の課題
後継者不在企業の増加
・日本の中小企業数は、「380万社」
・「245万社」の経営者が70歳を超える
・その内、「127万社」の後継者が決まっていない
廃業の増加
これにコロナ禍が加わり、休廃業・解散が増えています。
下図は、「東京商工リサーチ」がまとめた「休廃業・解散」「倒産」の最近の件数を示しています。
倒産は減少傾向にありますが、休廃業・解散は増加しています。特にコロナ禍によって、廃業を前倒しで実施しているところが増えているとのことです。
経営状況が悪くて廃業?
廃業を選択した企業は、業績が悪くて追い込まれて廃業に至るところもありますが、黒字で、財務的に余裕がある内に廃業する場合の方が多いです。下図に示すように、60%以上の企業が黒字の状態で廃業しています。
やはり後継者がなく廃業が多い
廃業した企業の経営者の年代を示します。2020年は60歳代以上が「84%」、70歳代以上が「60%」であり、後継者が不在で廃業せざるを得ない方が多いことを示していると推察されます。
M&Aへの期待が高まる
上記の黒字企業を引き受ける「企業」や「新たな経営者」がいれば、地域の雇用を守り、企業を存続させることが可能です。次に示すようにM&Aは、様々な役割を担っています。
「後継者がいない」「先行きが読めない」と諦めないで、M&Aを検討する価値はあると思います。
M&Aは企業が購入するという形が多いですが、個人、特に会社を辞めて新たに起業したいと考えている方も多くいます。この場合、資金的に難しい場合もありますが、最近では金融機関等がサポートする事例もありますので、創業を計画されている方は、M&Aを含めた事業計画を策定して金融機関と相談することも方法の一つとしてあります。
M&Aに関しては国策として推進
2020年3月に公表された「中小M&Aガイドライン」も2021年4月公表の「中小M&A推進計画」も、中小企業存続のためにM&Aを活用していこうという方針に基づいています。
この流れを受けて、M&A仲介大手が業界団体の設立に向けて動き始めるなど、業界全体をレベルアップしようという活動もあります。
また、中小企業のM&Aをより効率よく実施できるように、マッチングサイト(プラットホーム)が次々に構築されています。
当社では、現在最も会員数が多く、実績も多い「バトンズ」(日本M&Aセンターの関連会社)と連携して、M&Aに取り組んでいます。売手、買手の各々の状況を把握し、M&Aに限らず他の方策も考慮して、事業発展を進めていきます。
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