経営改善・事業再生 2017年(5)
本記事は、以前のホームページに記載したものをまとめたものです。
【1】産学連携を使って自社の発展を加速!
(20170809)
2017年4月から、国立大学法人「九州工業大学」の「産学連携コーディネータ」を務めさせて頂いてます。
現在、九州工業大学では、地域企業の皆様との連携をこれまで以上に積極的に進めていく方針です。
「産学連携コーディネータ」は、企業と大学の研究者(先生)の橋渡しを行う役割です。
企業で「困っていること」や「新しく行いたいこと」をお聞きして、その内容に関係する研究をしている研究者を選定して、まずは両社の打合せの場を持ちます。
その打合せの結果、後で示す連携方法を実施していきます。
「大学は敷居が高い」「相談するには知識不足」のように思っている方もいらっしゃるかと思いますが、そんなことはありません。
ご気軽にご相談にいらして下さい。
現在保有の技術・製品に大学のエッセンスを加えることで、より魅力的なものを造り出せる可能性があります。
ぜひ、プロの力を活用して下さい。
こんな場合はご相談を
● ○○先生の「××に関する技術」について聞きたい。
*九州工業大学の各研究者の研究内容を調べることができます
http://www.kyutech.ac.jp/research/researchers.html
● 現在、××を開発しているが、□□の面で行き詰まっている。○○に知見を持っている先生を紹介してほしい。
● 当社の製品××に□□という機能を持たせたい。
● ××は△△という物質でできており、傷を防ぐために表面を強化したいので、表面処理に知見を持つ先生を紹介してほしい。
● 当社では○○と××の接合を行っているが、特定の場合に強度が出ない。この原因を知りたい。
※ 具体的であればあるほど、マッチングの可能性が高まります
まずは「技術相談」(無料)
まずは、産学連携コーディネータとの「技術相談」を行い、次のステップの対応を両者で検討を行います。
ホームページに記載の「技術相談依頼票」をメールかFAXでお送り頂ければ、相談内容に対応できるスタッフを選定して、相談日の連絡を致します。
可能な限り、ご説明できる資料(構造図、プロセス図、製品の資料、写真など)をお持ちいただければ、より最適な対応を取ることができます。
http://www.ccr.kyutech.ac.jp/ask/
4つの連携方法
最初の「技術相談」の段階やその後の関係する「先生との相談」の中で、次のステップを行うにあたり、次に示す4つの連携方法を用意しています。
各費用については、開始前に見積もりを提示して、その後協議の上決定します。
共同研究
企業等の研究員と大学の教員が共通の課題について対等の立場で行う研究です。
受託研究
企業等から委託を受けて大学の教員が行う研究です。
学術指導
企業等からの相談を受け、大学の教員が専門知識に基づき助言、指導等を行うものです。
知財(特許)の活用
ライセンス等で、九工大の特許等をご活用いただきます。
会社の業績を伸ばすために、「新製品」や「差別化」が必要と言われますが、中小企業が大企業の真似をして安易に新製品開発や新技術開発に手を出してしまい、途中で行き詰まってしまうケースが多くあります。
現在保有の製品や技術をベースにして、これまでにない組み合わせで再構成して、付加価値が高い新製品や新技術を生み出せる可能性があります。
この組み合わせの一つとして、大学をぜひご活用下さい。
【2】「労働分配率経営」で社員のやる気向上!
(20170811)
皆さん、会社の業績をどのように判断してますか?
また、社員の給料をどのように決めていますか?
いくら売上が上がっても、利益が出ていないと会社は発展しません。
また、業績が上がったにもかかわらず、給料が上がらないと、働いている人は「やる気」や「やりがい」を持てません。
会社の利益と社員の給料を連動させることができるのが、「労働分配率経営」です。
前号までに、人手不足とその対応(経営者の変革、社員の「やりがい」)について紹介してきましたが、「労働分配率経営」は社員の「やる気」「やりがい」を引き出し、人材を「人財」にすることができる管理手法です。
労働分配率とは?
労働分配率とは、「付加価値」に占める人件費の割合であり、多くの経営指標がある中で、「利益」と「人件費」が連動しているのは、この指標だけです。
式で表すと次のようになります。
● 労働分配率 = 人件費 ÷ 付加価値
*付加価値とは、中小企業庁方式では、
● 付加価値 = 売上高 - 外部購入価値
*売上から外部に支払う費用を引いたものです
製造業の場合、1,000万円で「材料や部品」を購入し、機械的な加工や組立を行って、5,000万円で製品(装置)を売却すれば、付加価値は「4,000万円」になります。
小売業や卸売業の場合、商品を1,000万円で仕入れて2,000万円で売れば、「1,000万円」が付加価値になります。
労働分配率の意味するところ
先に示した「労働分配率の式」で各要素を確認しましょう。
各要素とも、経営に密接に関係していて、内部要因が大半を占めていて、つまり内部努力(意思決定・行動)で改善が可能であることを示しています。
ただし、「売上」だけは景気やお客様の状況に影響を受ける外部要因になり、「売上至上主義の会社」は外部要因のみで経営を改善することになり、非常に難しい経営になります。
売上を上げることを改善策として考えることも可能ですが、「少子高齢化」「人口減少」「経済成長率の鈍化(デフレ感)」の中で、売上が上がる前提で経営を考える時代ではすでになくなっています。
付加価値(売上ー外部購入価値)は、主に利益を意味しますので、これが減少すると、人件費が同じであれば「労働分配率」は増加していきます。
倒産企業の大多数は、倒産前に労働分配率が増加するという共通点があります。
業績が悪化し、利益・資金がどんどん減っていくのに、最大の固定費である人件費は据え置き・高止まりで最終的には払えなくなり倒産に至ってしまいます。
社員に与える影響
労働分配率経営とは、「付加価値(利益)の変動に応じて人件費」も変動させる手法です。
労働分配率を例えば「50%」に固定した場合を例に説明します。
人件費 = 付加価値(売上ー外部購入価値) × 労働分配率
・付加価値が「2,000万円」の場合、人件費は「1,000万円」になります。
・付加価値を「10%上げて」2,200万円になれば、人件費は「1,100万円」になり、社員の給料の原資は100万円上がり、さらに会社としては「100万円」の資金を得ることができます。
・逆に付加価値が「10%下がり」1,800万円になれば、人件費は「900万円」になり、社員の給料の原資は100万円下がり、会社の利益としても「100万円」減少します(200万円は減少しない)。
労働分配率を一定にし、付加価値(利益)に応じて人件費を変動させることで、会社としてはどのような業績でも一定幅の利益を確保することができます。
この場合、社員はどう思い、どう行動しますか?
「利益が増えれば、給料も増える」「自分が希望する給料をもらうためには、これだけの利益を出さなければならない」、これが明確になると、社員はいかに利益を残し、増やすかを自分から考え始めます。
経営を意識した社員が育つ会社になります。
そのためには、「労働分配率経営」の意味をよく理解してもらい、更に必要な全ての経営データを開示し、「見える化」を行わなければなりません。
それは、経営者として強い決意が必要になります。
なぜなら、自分にとって都合が悪いデータも開示しなければならないからです(役員手当、接待費など)。
会社と社員の間に、「労働分配率」という共通のものさしができることで、社員が自ら知恵を出して行動し利益(昇給原資)を上げるようになります。
その結果で給料が上がると更にやる気が出て、良い成果を出す「人財」になり、定着率が高くなり人手不足の解消にもなります。
会社としての魅力も高まり、良い人材も集まり、その人材が「人財」になり、会社の業績も上がっていきます。
これからは、「増収・増益」ではなく、売上が伸びなくても「増益・昇給」になる経営が求められます。
【3】日本はビジネスがしにくい国?
(20171119)
2017年11月に「ビジネスのしやすさ」の順位付けが公表されています。
日本は、190ヶ国中の「34位」、
この順位を見ますと、ビジネスがしやすい国ではなく、その原因は、各種の「規制」が強くて動きずらいためと推定されます。
順位の抜粋を示します。これを見て皆様はどう感じますか?
1位:ニュージーランド、2位:シンガポール、3位:デンマーク、
4位:韓国、5位:香港、6位:アメリカ、
34位:日本、35位:ロシア、78位:中国
判断に使われた評価項目と各項目の順位について紹介していきます。
なお、詳細を知りたい方は、次のホームページをご確認下さい。
https://www.globalnote.jp/post-12031.html
ここでは、他の「国際比較統計データ」も示されています。
評価項目と日本の順位
この「ビジネスのしやすさ」は、10項目について調査して集計した結果で順位を出しています。
日本の評価が高いものから順に示します。
◎ 破綻処理:1位
◎ 電力事情:17位
● 建設許可取得:50位
● 貿易環境:51位
● 契約執行状況:51位
● 不動産登記の容易性:52位
● 少数株主の保護:62位
● 納税環境:68位
● 資金調達環境:77位
● 事業設立の容易性:106位
個別ランキングから思うこと
「事業設立の容易性:106位」、なぜ何でしょうか?
最近、「創業」や「第二創業」の促進が言われ、国や地方自治体、銀行などの機関が「補助金や創業塾の開催」で力を入れているのに不思議です。
開業のためのお金の調達、現状では自己資金や銀行の借入に頼るしかなく、事業の先行きや経営者の人柄でお金を出してくれるところはまだまだ少ないです。
クラウドファンディング(事業や製品に賛同してくれる方から、主にインターネットでお金を集める方法)もだいぶ使用されてきていますが、まだまだ調達している額は少ないです。
現在、「高齢者の方々」の中にはお金をお持ちの方が多くいらっしゃいます。
例えば、それらの方々が有望なベンチャー企業にお金を出した場合(出資)に、それによる利益に対して税制上の優遇措置を行うとか、出資した株式を相続する際は相続人に負担をかけないとかの政策を実施して、蓄えられたものが市場に有効に出回るようなことも必要かと思います。
先に示した項目の中の「50位以下」のほとんどは規制に関係しているものです。
これから、人工知能、IoT、フィンテックなどの「第4次産業革命」が進められる中で、更に「少子高齢化社会」「労働力不足」の中では、従来の枠の中では対応できずに、「規制緩和」は進めざるを得ない状況になると思います。
現在でも、既に民間で進んでいて、政府や地方自治体の対応が遅れていることも多く見られます。
情報なくして戦略なし、戦略なくして売上なし
このように日本は「ビジネス」がしにくい国であり、その原因は昔からの慣習や各種の規制にあると思います。
昨今、「各種の経済特区」などで「規制緩和」が言われていますが、所詮、一個人や一企業で規制を変えることはほぼ不可能です。
ただし、「現状を的確に捉えて、他者に対して先手を打つ」ことはできます。
このためには、「正確な情報を早く取り、それを基に戦略を立案する」ことが重要になります。
「戦略」は「手持ちの資産(人やお金)」の「選択と集中」です。
ただ漠然と時間を費やすのではなく、アンテナを張り巡らせて、情報をキャッチして適切な判断を繰り返していく、これが会社の経営向上につながります。
状況を嘆くのではなく、前向きに考えて行動していきましょう。
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