新たな借換保証制度(コロナ借換保証)の創設
2022年12月23日に中小企業庁から公表された、2023年1月10日から開始の「コロナ借換保証」について紹介します。
この制度は、2022年10月28日に閣議決定された「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を踏まえ、新型コロナウイルス感染症の影響の下で債務が増大した中小企業者の収益力改善等を支援するため、借換え需要に加え、新たな資金需要にも対応するものです。
コロナ借換保証について(中小企業庁HPより)
コロナの影響の長期化や物価高など、多くの中小企業が引き続き厳しい状況にある中、積み上がった債務の返済負担への対応はもちろん、事業再構築などの前向きな取組の促進など、個々の事業者の実態を踏まえた支援が重要です。
そのため、今後、コロナ融資の借換え保証制度を創設することで、返済負担軽減のみならず、新たな資金需要にも対応します。
そこで、一定の要件を満たした中小企業者が、金融機関との対話を通じて「経営行動計画書」を作成したうえで、金融機関による継続的な伴走支援を受けることを条件に、借入時の信用保証料を大幅に引き下げるコロナ借換保証を1月10日より開始いたします。
制度の概要
次の表に「コロナ借換保証」の概要を示します。
今回の制度の特徴は、借換(融資)の申込みに際して、「経営行動計画書」の策定が必要になり、融資実行後は「金融機関による伴走支援」が盛り込まれている点です。
これまでの政府の方針である「意味がある計画を策定して、その計画をしっかりと実行する」を施策に示したものです。
融資の手続き
ホームページに示されている融資の手続きを示します。
① 融資の申込み
金融機関に「経営行動計画書」を作成し、融資を申込みます。
*「経営行動計画書」の内容については後述
② 与信審査・書類準備
金融機関は、申請を受け取ったら、融資が可能かの審査を行い、可能と判断した場合は必要書類を準備します。
③ セーフネット保証の認定申請
金融機関は、市区町村に「セーフティーネット4号または5号」の取得申請を行います。
④ 保証協会への手続き
金融機関は、セーフネット保証を取得後に、保証協会へ保証審査を依頼します。
この際に、「経営行動計画書」を提出します。
⑤ 融資の実行
保証協会の審査を通過したら、金融機関は、申請した中小企業者に融資を行います。
⑥ 金融機関による伴走支援
融資が実行された後、融資を実行した金融機関はメインバンクとして、「経営行動計画書」に基づき、中小企業の経営を継続的に伴走支援を行います。
経営行動計画書の記載内容
中小企業庁からサンプルとして示されている「経営行動計画書」の記載内容を示します。
サンプルでは、A3書式で1枚になっています。
1 事業者名義
・法人名、代表者名を記載。
・「情報提供の同意(事業者)」、「確認状況(金融機関)」も記載。
2 現状認識
① 事業概要
② 「外部環境」「事業の強み・弱み」、その中での「課題」
③ 「経営状況・財務状況」、その中での課題
3 財務分析
*直近の決算期のローカルベンチマークの6指標を示す
① 売上増加率(売上持続性)(%)
② 営業利益率(収益性)(%)
③ 労働生産性(生産性)(千円)
④ EBITDA有利子負債倍率(健全性)(倍)
⑤ 営業運転資本回転期間(効率性)(ヶ月)
⑥ 自己資本比率(安全性)(%)
4 計画終了時点における将来目標
・「現状課題」を踏まえた計画終了時点(5年)における事業の具体的な目標を記載。
・EBITDA有利子負債倍率の各年の目標値を記載。
5 具体的なアクションプラン
・定めた目標を実現するために、「2 現状認識」に記載した課題を解決するための対策(アクションプラン)を記載。
*各アクションプランについて、指標を設定し、各年度の目標値を記載。
6 収支計画及び返済計画
・アクションプランの実施の効果を反映した「収支計画」とこれによる「借入金返済計画」を記載。
実際の制度の活用をどうするか?
1 現在の状況を把握する
この制度の活用を決める前に、まず、自社の現状を整理しましょう。
自社の経営状況(財務・事業面)と自社の事業の外部環境(業界の状況、市場・顧客の状況)を整理しましょう。
その中で、今回の制度を活用するかを決めましょう。
2 専門家の活用
上記の現状分析や今後の進め方を検討するには、自社だけでは視野が狭くなりがちです。
この際、「経営改善」や「事業再生」に詳しい専門家といっしょに進めることは有効な方策です。
国の制度として、「早期経営改善計画策定の支援事業」があります。この制度を利用すると専門家への計画策定支援に対して補助金が活用でき、自社の負担額を少なくすることができます。
当社の代表が「経営革新等支援機関」に認定されていますので、ぜひ、お問い合せ下さい。
「コロナ借換保証」制度を使う場合、この早期経営改善計画が策定できていれば、「経営行動計画書」の作成が容易になります。
「経営行動計画書」の様式(サンプル)は、「A3サイズ1枚」ですが、ここに有効な内容を記載するには、数十ページの計画書が必要になると考えています。
3 銀行の伴走支援
今回の制度では、各銀行は多くの「伴走支援」案件を抱えることになります。金融庁へ実施報告が盛り込まれると思われますので、かなりの労力が必要になると思われます。
そのため深い内容の支援は難しいと思いますので、当社のような「経営改善・事業再生」の専門家の支援は有用です。