コロナ・物価高・人手不足・・・倒産の現状
コロナ・物価高・人手不足、これらの要因による倒産の増加が話題になっています。
ここでは、2023年上半期(1月~6月)の状況に関して、東京リサーチが公表している各種の報告をまとめて紹介します。
*本文中の図や表は、東京商工リサーチの公表資料からの転記です。
2023年上半期の全国倒産件数
2023年上半期(1月~6月)の全国の倒産件数は「4,042件」で、前年の「3,060件」に対して、約30%増加しています。
過去20年間の同期間の倒産状況の推移を示します。
2018年・2019年のリーマンショック以降は倒産数は減少し、更にコロナ禍では政府の金融支援策もあり倒産数は低い状態にありましたが、2023年は増加に転じコロナ禍前の状態になっています。
今回の紹介のように、各種の要因により倒産数は今後も増加することが予測されます。
2023年上半期の倒産の概要
2023年上半期(1月~6月)の倒産の概要を示します。
倒産増加の主な要因としては、次の3点があります。
(1)コロナ禍の影響:ゼロゼロ融資の返済が開始
(2)物価高の影響
(3)人手不足の影響
業種別の状況
*サービス業では、飲食業が最多になっています。飲食業は支援策の終了と同時に、仕入れ価格や光熱費の高騰、人手不足に見舞われ「息切れ」倒産が増えています。
*卸売業・小売業では、アパレル関係が多くなっています。
上記に示した(1)~(3)の要因別の内容を示します。
(1)コロナ禍の影響
「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」を利用した企業の倒産は、「322件」で前年同期の「174件」に比べて約1.8倍と急増しています。
ゼロ・ゼロ融資は、コロナ禍で傷んだ中小・零細企業の資金繰り支援策として実施され、倒産の抑制に大きな効果を見せました。ただし、売上が戻らず、支援策により過剰債務に陥った企業は多く、返済開始とともに倒産に追い込まれる企業が増えています。
なお、倒産には至らないが、「リスケジュール(リスケ)」や「代位弁済」の対応を行っている企業も増えており、これらの企業が今後倒産に追い込まれる可能性もあります。
コロナ禍の影響・産業別
最多はサービス業で、特に飲食業の倒産が増えています。コロナ禍後に人の動きが活発になりかけた頃に、仕入れ価格や光熱費の高騰、人手不足・人件費のアップもあり、販売価格に十分な転嫁ができなく赤字に陥り、これに「コロナ借入金の返済」が加わり、耐えられなくなり倒産に追い込まれています。
(2)物価高の影響
2022年2月のロシアのウクライナ侵攻や円安(輸入価格の上昇)の継続、異常気象等により、資材や原材料の価格が上昇しています。
下請け的な業務が多い中小・零細企業においては、原材料の高騰分を販売価格に十分に転嫁できなく、利益が減少しているところも多いかと思います。
物価の高騰により、これが原因になる倒産も増えてきています。
物価高の影響・産業別
資材・原材料費の高騰により、「製造業」「建設業」、更に「飲食業を中心としたサービス業他」で、倒産の件数が増えています。
直近も円安の状況が続き、今後も物価高が幅広い産業に影響を及ぼすことが懸念されます。
(3)人手不足の影響
人手不足倒産の要因としては、次の3点が挙げられます。
(1)求人難
(2)従業員の退職
(3)人件費高騰
コロナ禍で市場が縮小したこともあり、一時的に人手不足倒産は減少していましたが、経済活動が復活すると人手不足が表面化してきています。
少子高齢化で「人手不足」が広がる中で、業績回復が遅れて資金余力が乏しい中小企業は簡単に賃上げができない状況です。そのため、人材流出が進み「従業員退職」、これを補おうとしても人が集まらず、業務を遂行できなくて倒産に至るという悪循環に陥っています。
今後、最低賃金の改定(増額)が予定されており、人件費の高騰は更に深刻になっていき、利益を出せない企業は厳しい状況に追い込まれていきます。
人手不足の影響・産業別
運輸業、サービス業他、建設業などの労働集約型産業は、コロナ禍前から慢性的な人手不足に陥っていました。コロナ禍により、一時的に業務量が減って人手不足のひっ迫感が薄れていましたが、コロナ禍から経済活動が復活すると人手不足が表面化し、一気に倒産に至るケースが多く発生しています。
今後、「運輸業」「建設業」に関しては、残業規制、いわゆる「2024年問題」が控えており、人手不足はますます厳しい状況になっていきます。
中小企業の経営状況は良くないと思われるが・・・
このように、データを見る限りでは、現在の中小企業の状況は全体的には良くないと思われます。
今回、典型的な3つの状況(コロナ、物価高、人手不足)を示しましたが、各企業によって、当然、抱えている経営課題は異なります。
経営に行き詰まって、当社に相談に来られる企業や個人事業者の多くが、従来の事業(コロナ前)に固執し、外部環境(市場、お客様の要望など)の変化を感じず、調べることなく、成り行きで事業を進めている場合が多いです。
今一度、立ち止まって、現状分析を行いましょう。財務面、事業面の現状を把握することにより、進むべき方向が見えてきます。
直近3年分の決算書と、借入一覧をご提示頂ければ、進むべき方向性をご検討させて頂きます。
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