事業再生の手法(7) 経営者保証に関するガイドラインの活用
~会社だけでなく、経営者と家族の生活を守るための重要な制度~
中小企業の経営者にとって、会社の借入金と並んで大きな不安となるのが「経営者保証」です。
会社が金融機関から融資を受ける際、多くの経営者は連帯保証人となっています。そのため、会社の経営が悪化すると、「会社だけでなく、自宅や個人資産まで失ってしまうのではないか」と不安を抱える方も少なくありません。
しかし、このような状況を改善するために設けられた制度が、「経営者保証に関するガイドライン」です。
このガイドラインを正しく活用すれば、一定の条件のもとで経営者保証の負担を軽減し、生活再建を図ることができます。また、事業再生だけでなく、廃業を選択する場合にも重要な役割を果たします。
今回は、「経営者保証に関するガイドライン」の目的や内容、活用場面、注意点について解説します。
これまでの事業再生の手法に関する記事
(5)「活性化協議会に事業再生が受け付けられなかった場合の対応」はこちら
経営者保証ガイドラインが制定された目的
従来、中小企業の融資では、経営者が個人保証を行うことが一般的でした。
この仕組みには、金融機関にとって融資回収の安心感がある一方で、大きな問題もありました。
例えば、
- 会社が倒産すると経営者個人も破産せざるを得ない
- 自宅を失う
- 家族の生活にも大きな影響が及ぶ
- 一度失敗すると再挑戦が難しくなる
こうした状況は、経営者が早期の事業再生や廃業を決断できない要因にもなっていました。
そこで2013年、日本商工会議所と全国銀行協会が中心となり、「経営者保証に関するガイドライン」が策定されました。
このガイドラインの目的は、
- 早期の事業再生を促進すること
- 円滑な廃業を支援すること
- 経営者の再チャレンジを後押しすること
にあります。
つまり、「会社の整理=経営者個人の人生の終わり」ではなく、再出発できる環境を整えることが制度の趣旨です。
経営者保証ガイドラインとは
このガイドラインは法律ではありません。
しかし、金融機関が尊重すべき自主ルールとして全国的に運用されており、多くの金融機関が対応しています。
対象となるのは、
- 銀行
- 信用金庫
- 信用組合
- 政府系金融機関
- 保証協会付き融資に関係する金融機関
- サービサー(一定の場合)
などです。
ガイドラインを活用すると何が変わるのか
最大の特徴は、経営者が一定の財産を残せる可能性があることです。
従来は、会社の借入金を返済するために、個人資産をすべて処分しなければならないケースも少なくありませんでした。
しかし、ガイドラインを活用した場合には、
- 破産手続の自由財産(99万円)
- 一定期間の生活費
- 条件を満たせば「インセンティブ資産」
などを手元に残せる可能性があります。
これにより、生活再建や再チャレンジがしやすくなります。
信用情報への影響
もう一つの大きな特徴は、保証債務を整理したことだけを理由として、信用情報機関へ事故情報として登録されない取扱いがあることです。
もちろん、会社の借入状況などによる影響はありますが、ガイドラインを利用した保証整理には、通常の個人破産とは異なる配慮がされています。
これは経営者の再スタートを後押しする重要なポイントです。
活用する場面
経営者保証ガイドラインは、次のような場面で活用されます。
(1)事業再生を行う場合
私的整理や事業再生ガイドラインによる再建の際、会社だけでなく経営者保証も一体的に整理することができます。
会社が再建できても、経営者個人が多額の保証債務を抱えたままでは、真の再生とは言えません。
(2)廃業を行う場合
近年、廃業支援でも活用されるケースが増えています。
会社を清算する際にも、
- 保証債務
- 個人財産
- 今後の生活
を考慮しながら整理を進めることができます。
これは計画的な廃業を行ううえで非常に重要です。
(3)M&A・スポンサー支援と組み合わせる場合
スポンサー型再生や事業再生型M&Aでは、会社の債務整理とあわせて保証問題を整理することがあります。
会社だけでなく経営者個人も安心して次の人生へ進めるよう支援することが目的です。
活用する際の注意点
便利な制度ですが、誰でも利用できるわけではありません。
例えば、
- 誠実に経営してきたこと
- 財産状況を適切に開示していること
- 不適切な資産隠しがないこと
- 金融機関と誠実に協議していること
などが求められます。
また、金融機関との交渉や必要書類の作成には専門的な知識が必要になるため、専門家の支援を受けながら進めることが重要です。
当社の取り組み
当社では、事業再生や廃業支援の相談を受ける際、「会社だけを見る」のではなく、「経営者個人の生活や将来まで含めて考える」ことを大切にしています。
そのため、
- 私的整理
- 事業再生ガイドライン
- 民事再生
- M&A
- 廃業支援
を検討する際には、必ず経営者保証の問題もあわせて整理しています。
また、
- 財産状況の確認
- 金融機関との協議
- 他士業との連携
を行いながら、経営者が安心して再スタートできる方法を一緒に考えています。
まとめ
経営者保証に関するガイドラインは、会社だけでなく、経営者とその家族の生活を守るための重要な制度です。
事業再生でも廃業でも、保証問題を適切に整理することで、
- 生活再建
- 再チャレンジ
- 円滑な事業承継
につながる可能性があります。
一方で、この制度は適切なタイミングで活用することが重要です。
資金繰りが限界になってからでは、選択肢が狭まる場合もあります。
当社では、事業再生・M&A・廃業支援とあわせて、経営者保証の整理についても総合的にご相談をお受けしています。
「会社をどうするか」だけではなく、「経営者自身の将来をどう守るか」という視点で、最適な出口戦略をご提案いたします。
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