強い会社をつくる(6)売上を伸ばし続ける会社の営業戦略
~新規開拓だけでは成長できない~
「新しい顧客を探す」だけが営業ではない
前回は、「社員が育つ会社の共通点」をテーマに、人材育成をコストではなく投資として考え、社員と組織が成長する仕組みについてご紹介しました。
人が育ち、組織が強くなれば、次に必要となるのは、その力を「売上」に結び付けることです。
経営者から、
「もっと新規顧客を増やしたい」
「営業担当者を増やしたい」
「新しい取引先を開拓したい」
という相談を受けることがあります。
もちろん、新規開拓は企業の成長に欠かせません。
しかし、営業戦略を「新しい顧客を探すこと」だけで考えてしまうと、営業活動はいつまでも苦しいものになります。
新規顧客を獲得しても、一度取引しただけで終われば、また次の顧客を探さなければなりません。
一方、一度取引した顧客から繰り返し注文をいただき、その顧客から新しい顧客を紹介してもらえる会社では、営業の効率は大きく変わります。
これからの中小企業に必要なのは、「顧客を獲得する営業」から「顧客との関係を育てる営業」への転換です。
今回は、売上を継続的に伸ばすための営業戦略について考えてみます。
まず「既存顧客」を見直す
売上を増やそうとすると、どうしても新規顧客に目が向きます。
しかし、その前に確認していただきたいのが「既存顧客」です。
現在の売上は、「どの顧客から」「どの商品・サービスで」「どのくらいの利益を」得ているのでしょうか。
例えば、取引先ごとの売上を一覧にしてみるだけでも、多くのことが見えてきます。
売上の大部分を占める重要顧客、最近取引が増えている顧客、逆に以前は取引があったのに最近注文が減っている顧客などです。
特に注目したいのが、「以前は取引があったのに、現在は取引が減っている顧客」です。
・なぜ注文が減ったのか。
・競合会社に変わったのか。
・担当者が変わったのか。
・顧客のニーズが変化したのか。
・単にこちらから連絡していないだけなのか。
新規顧客を一から探すよりも、既に自社を知っている顧客との関係を再構築する方が成果につながりやすい場合があります。
新規開拓の前に、既存顧客を深掘りする。これが営業戦略の基本です。
「売った後」が次の売上をつくる
売上を伸ばし続ける会社は、商品やサービスを販売した時点で営業が終わりません。
むしろ、そこから次の営業が始まります。
納品後に、
「問題なく使えていますか」
「何かお困りのことはありませんか」
「ほかに改善したいことはありませんか」
とフォローする。
こうした活動から、追加受注や別の商品・サービスの提案につながることがあります。
例えば、最初は小さな仕事から始まった取引でも、信頼関係ができれば別部門の仕事や、より大きな案件につながる可能性があります。
一回の取引金額だけを見るのではなく、顧客との長期的な関係を見ることが重要です。
LTVという考え方
そこで知っておきたいのが「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」という考え方です。
LTVとは、一人または一社の顧客が、取引期間全体を通じて自社にもたらす価値を捉える考え方です。
例えば、最初の受注が10万円だったとします。
その10万円だけを見れば、小さな取引かもしれません。
しかし、その顧客が毎年20万円の仕事を10年間発注してくれれば、売上は累計200万円になります。
さらに、別の顧客を紹介してくれる可能性もあります。
このように考えると、「今回いくら売れたか」ではなく、「この顧客とどのような関係を築くか」という営業に変わっていきます。
これはBtoCだけでなく、中小企業のBtoB営業でも非常に重要な考え方です。
リピートされる理由をつくる
一度購入した顧客が再び自社を選んでくれる。
これがリピートです。
しかし、「良い商品を提供していれば、また注文してくれるだろう」と待っているだけでは十分ではありません。
リピートには仕組みが必要です。
例えば、
- 定期的に顧客へ連絡する
- 購入・契約後のフォローを行う
- 新商品や新サービスを案内する
- メルマガなどで有益な情報を届ける
- 顧客の課題に応じた追加提案をする
などです。
重要なのは、「売り込み続ける」ことではありません。
顧客にとって役立つ情報や提案を継続的に提供し、「何かあれば、まずこの会社に相談しよう」と思ってもらうことです。
この関係を築くことが、安定した売上につながります。
「紹介」は中小企業の強い営業チャネル
中小企業にとって、非常に有効な営業方法の一つが「紹介営業」です。
特に専門性の高いサービスや、信頼が重視される仕事では、広告よりも「知っている人からの紹介」が大きな力を持ちます。
紹介された顧客は、最初から一定の信頼を持って相談してくれるため、商談も進みやすくなります。
しかし、紹介は偶然を待つだけでは増えません。
まず、既存顧客に満足していただくこと。
そして、「このようなことで困っている会社があれば、ご紹介ください」と、自社がどのような顧客の役に立てるのかを明確に伝えることも大切です。
税理士、金融機関、士業、取引先、地域の経営者などとのネットワークも重要な営業資産になります。
中小企業では、広告費を大量に使うよりも、「信頼のネットワーク」を広げる営業が大きな成果を生むことがあります。
営業を「個人技」から「仕組み」に変える
中小企業の営業でよくあるのが、「顧客情報は社長の頭の中」「営業担当者しか商談内容を知らない」という状態です。
これでは、担当者が退職した場合に顧客との関係まで失う可能性があります。
そこで重要になるのが、営業情報の共有です。
顧客名、担当者、過去の商談、受注履歴、問い合わせ内容、次回の提案時期などを会社として管理します。
その手段として活用できるのが、CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)などの営業DXです。
最近では、AIを活用して商談記録を整理したり、顧客への提案内容を検討したりすることも可能になっています。
ただし、大切なのは高価なシステムを導入することではありません。
Excelや共有ツールなどから始めても構いません。
まず、「顧客情報を会社の財産として蓄積する」という考え方を持つことが重要です。
営業DXは「営業担当者を楽にする」だけではない
営業DXというと、業務効率化のイメージが強いかもしれません。
しかし、本当の目的は「営業の再現性を高めること」です。
例えば、
・どのような顧客から問い合わせが多いのか。
・どの商品がリピートされているのか。
・どの顧客にしばらく連絡していないのか。
・どの営業活動が受注につながっているのか。
こうした情報を蓄積・分析すれば、「売れる営業」のパターンが見えてきます。
これまで営業担当者の経験や勘に頼っていたものを、会社の仕組みに変える。
これこそが営業DXの大きな目的です。
売上だけでなく「利益」を見る
営業戦略でもう一つ忘れてはいけないのが、利益です。
売上が大きい顧客が、必ずしも会社に最も利益をもたらしているとは限りません。
・値引きが多い。
・細かな対応に時間がかかる。
・遠方で物流費が高い。
・回収条件が悪い。
こうした取引では、売上が大きくても利益が残らないことがあります。
第2回でもお伝えしたように、重要なのは「売上を増やすこと」そのものではなく、「利益が残る売上を増やすこと」です。
顧客別・商品別の売上と利益を見ることで、「どの顧客との関係を深めるべきか」「どの商品・サービスを伸ばすべきか」が見えてきます。
営業戦略と利益戦略は、別々に考えてはいけません。
「売り続ける会社」から「選ばれ続ける会社」へ~
売上を伸ばすために、新規顧客の開拓は必要です。
しかし、新規開拓だけに頼る営業には限界があります。
・既存顧客との関係を深める。
・リピートを増やす。
・紹介を生み出す。
・LTVを高める。
・そして、顧客情報を蓄積し、営業DXによって組織の営業力を高める。
こうした仕組みができれば、営業は「毎月ゼロから顧客を探す活動」ではなくなります。
新規顧客 → 継続取引 → リピート → 紹介 → 新たな顧客
という循環が生まれます。
強い会社とは、単に「売る力」が強い会社ではありません。
「顧客から選ばれ続ける仕組み」を持っている会社です。
~事業パートナー九州からのご提案~
会社が強くなれば、事業再生は不要になります。
私たち株式会社事業パートナー九州は、経営改善や事業再生の支援だけではなく、「そもそも経営危機に陥らない会社づくり」を目指したご支援を行っています。
営業についても、「もっと営業してください」「新規顧客を増やしてください」というだけでは、本当の経営改善にはなりません。
現在の顧客構成、商品・サービス別の利益、既存顧客との関係、営業方法などを分析し、「どこで利益を生み、どこを伸ばすのか」を明確にすることが重要です。
資金繰り、利益、財務、人材、そして営業。
これらはすべてつながっています。
人が育ち、その人材が顧客との関係を築き、利益を生み、その利益を再び人材や新しい事業へ投資する。
この好循環をつくることが、10年後も選ばれる「強い会社」につながると私たちは考えています。
次回は、「新しい市場に挑戦する経営 ― 第二の柱を育てる会社が生き残る ―」をテーマに、新規事業や新市場への挑戦について考えていきます。
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