事業承継・M&A・廃業 2018年 - 事業パートナー九州 北九州市(福岡県)経営コンサルタント

事業承継・M&A・廃業 2018年

本記事は、以前のホームページに記載したものをまとめたものです。

【1】消えるGDP22兆円 ~大廃業時代:事業承継待ったなし~

(20180319)

高齢化の波が押し寄せてきて、あらゆる分野の中小企業を飲み込んできています。

日本の企業数の「99%」を占める中小企業の多くが廃業の危機に立たされています。

日本経済新聞の2月27日から3月2日まで4日間にわたり掲載された特集記事をベースに紹介します。

 

中小企業の事業承継の現状

経営産業省の調査では、中小企業の経営者で最も多い年齢層は「65~69歳」、平均引退年齢は「70歳」とのことで、経営者の高齢化に伴い廃業する企業は急増しています。

東京商工リサーチの調査では2017年の休廃業・解散企業数は「約28,000件」で、この10年間で3割増えています。

中小企業の70歳以上の経営者245万人のうち、約半数の後継者が未定で、このままでは「約22兆円の国内総生産(GDP)」が失われる恐れがあります。

 

黒字経営でも廃業の選択

中小の町工場がひしめく東京都大田区でも、高度成長期に活況を呈した町工場が続々と姿を消しています。

かつて1万近くあった工場数も現在は3千程度になっています。

代替製品や代替技術の出現などの技術の変革による廃業もありますが、黒字経営でも後継者がいなくて廃業になるケースも多く、今後更に増えていくことは確実です。

 

製造業だけではなく、物流も危ない

サプライチェーンの要である物流業者にも廃業の波が押し寄せています。

大手の物流メーカも運転手不足が深刻になっていますが、中小企業で制作した部品を大手の工場に供給(運搬)しているのは、個人経営の配送会社が多く、この廃業により物流の再構築を迫られている企業も多くあります。

 

政府の対応

今は中小企業の「事業承継」は、大きな政策課題になっています。

政府も全国に「事業引継ぎ支援センター」(主に商工会議所の中に設置)を設置し、弁護士・税理士・中小企業診断士などの専門家と連携して、相談から実際の承継の支援を行っています。

今後10年を事業承継の集中実施期間と定めて、年間5万件の事業承継診断の実施や、年間2千件のM&Aなどの事業承継の成約を目標にしています。

※先に示したように年間の休廃業・解散件数が「年間28,000件」ですので、事業承継の成約目標は1割にも達していません。

このため、民間の専門家やコンサルタントの力が必要と考えています。

 

金融機関の対応

先日、福岡県の地方銀行が主催する「事業承継セミナー」を聞く機会がありました。

約70人の聴講者で、60歳~70歳代の方が多く参加されていました。

地方銀行、信用金庫、信用組合は地元の企業をこれまで支えてきましたので、その企業の実状はよくわかっているので、事業承継の橋渡し役としては最適かもしれません。

ただし、銀行に事業承継を相談するのは敷居が高いようで、まずは身近な税理士商工会議所のような公的機関に相談される方が多いようです。

これからは、特に税理士が専門家への橋渡しができることが必要と思っています。

 

海外資本の参入

証券会社が定期的に企画する外国人投資家向けのセミナーのテーマを募集したところ「中小企業の事業承継について知りたい」との要望が寄せられたとのこと。

中小企業の事業承継で海外資本が引き受け手になる案件が増えているとのことで、「M&A助言のレフコ」によると、2017年に外資企業が日本の未上場企業を買収した案件は「前年に比べ23%増の90件」とのことです。

外資企業に事業承継を行うことにより、日本の中小企業が海外展開を行うきっかけになる可能性はあります。

輸出を手がける日本の中小製造業の比率は2014年に「3.7%」、産業構造が似ているドイツの「約20%」と比べて非常に低い状況です。

ただし、外資企業に事業承継することは、技術流出をまねき、国力が低下するとの懸念もありますが、もう議論している時間はないようにも思えます。

 

国内企業の集約が必要

事業承継をスムーズに行うには、各企業が個別に考えるのは限界があると思っています。

これまで同じ分野(市場)で競合として切磋琢磨していた企業が、まずは緩やかな連携をして、各企業の強みを結び付けて更なる強みを形成していく動きが必要かと思います。

その連携の中で、事業承継が必要な企業を吸収して、事業規模を拡大していく流れが望ましい姿と考えています。

 

事業承継には「事業再生」と「後継者教育」

事業承継を行う場合、特に他の企業に売却する場合には、準備段階として「高く売れる企業(商品)」にしておく必要があります。

「経営者の高齢」が理由で売却するには、売却後の生活資金を確保する必要があります。

「高く売れる」ためには、最低でも2~3年かけて「会社の価値」を高めて(事業再生)、購入先と交渉する必要があります。

また、特に「親族間承継」の場合は、「後継者教育」が大きなテーマになります。

中小企業基盤整備機構の調査では、後継者教育には「5年以上必要」との結果が出ています。

「事業再生」と「後継者教育」を考慮すると、早い段階で「事業承継」を考えて取り組む必要があります。

 

【2】迫る大廃業時代 ~4つの視点の紹介~

(20180826)

日本経済新聞で、2018年8月20日~24日の4回シリーズで「迫る大廃業時代」と題した特集が掲載されていましたので、その記事をもとに「事業承継」の現状を紹介します。

特集での各回の見出しは、

(1) 死ぬまでやるしかない  *後継者がいない

(2) 国籍は問わない  *外国人に経営を任せる

(3) 融資先が消えていく  *地方の金融機関の疲弊

(4) 子離れができない  *事業承継税制の使い方

 

(1) 死ぬまでやるしかない

日本企業の99%を占める中小企業の多くが廃業の危機にあります。

中小企業経営者の平均引退年齢は「70歳」とのことですが、70歳を超える経営者の半数は後継者が未定の状態です。

未定の企業の多くが黒字の状態で、このままでは黒字企業の廃業が相次ぎ、2025年までに約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる可能性があるとの報告もあります。

かつては、「家業を継ぐ」のが当たり前の風潮でしたが、現在はそれが崩れ、事業承継も多様化しています。

事業承継の分類としては、

① 親族内承継、主に子供が承継

② 親族外承継、主に従業員が承継

③ M&A、企業を第三者に売却

がありますが、これができない場合は、廃業を選択するしかありません。

最近は、子供への承継は減少しています。

その代わりに、「従業員への承継」や「M&A」が増えていますが、事業承継が必要な企業の全体に占める割合は低いです。

事業承継がうまくいかない企業の中には、「代替製品・技術などで将来的には衰退する可能性がある企業」もあります。

また、黒字ではあるが、金融機関からの借入金が多く、従業員がこの借金までも引き継ぐことができない場合もあります。

そうなると、お客様のためにはやめるわけにはいかず、真面目な経営者は「死ぬまでやるしかない」となるのが現状です。

当社では、事業承継に関して、最適な方法を一緒に検討させて頂いてますが、承継ができない場合は、「経営者の今後の生活」を第一優先にした「廃業支援」にも取り組んでいます。

 

(2) 国籍は問わない

以前に近隣にある「大型の金属加工会社」の経営者の方とお話をしました。

その会社は、以前から、ベトナムから多くの「技能実習生」を採用し、また、技能実習生の受入れの「事業協同組合」の中心的な役割をしています。

更に最近は、「設計部門」に外国人の技術者を雇い入れています。

その社長には、お子様はいらっしゃいますが、「外国の方に会社を継がせたい」、「日本人よりも優秀でやる気がある」と真剣に話されていました。

農業分野でも日本人の後継者を確保するのが難しく、外国人を後継者として考えるところも出てきました。

また、外資系の企業が日本企業を買収する例も増えています。

「日本の企業の承継問題」は日本、日本人だけでは解決できなく、世界的な視点で考えていく必要があるようになってきました。

 

(3) 融資先が消えていく

これまで地方銀行が「M&A」を仲介するのは、「企業価値が10億円以上の案件」が中心で、中小・零細企業を相手にはしませんでした

迫りくる「大廃業時代」は、金融機関の融資先が消失していく時代の到来です。

そのため、最近は、「融資先である地元企業に後継者がいなくて廃業することへの懸念」と「国の事業承継への取組み強化」の影響で、地方銀行も中小・零細企業のM&Aに取りくむようになってきました。

地方銀行を含めて金融機関が単なる仲介以外の方法も実施し始めました(新聞の記事を転記)。

・あおぞら銀行は取引先の事業承継を橋渡しする目的で、小規模案件のファンドを地方銀行といっしょに運営 *後継者難に悩む企業をいったん買収して財務を整理し市場価値を高めてから他社に譲渡する。

・オリックスが中小企業を買収し、時間をかけて承継先を探す取り組みを開始。

 

(4) 子離れができない

これまで事業承継の障害になっていたのが、事業承継に伴う「贈与税」でした。

その贈与税の負担を取り除いて事業承継を円滑に進めようと2018年4月に導入されたのが「新・事業承継税制」で、これにより事業承継が一気に進むことが予測されました。

しかし、予測に反して、新制度の利用をためらう経営者が多く、利用が進んでいません

その理由は、税優遇の濫用を防ぐために、自分の子がその先の孫にまで事業を引き継いだ時点でようやく「贈与税が免除」されるためです。

多くの経営者が「孫の生き方までしばれない」と戸惑い、利用をためらっているとのことです。

新聞に記載の弁護士に相談に来られた約10人の経営者のほとんどが、事業承継税制を選ばなかっただけでなく、種類株を発行して事業承継の後も親に一定の支配権を残す方法をとったとのことです。

子供の手腕を信じ切れず、最後の最後で事業を完全に手放す決心ができない経営者が多くいます。

当社では、「新・事業承継税制」を考慮しつつ、種類株式の利用や「民事信託」の利用も含め、事業承継を最適に行うことを検討します。

事業承継に関して、日本経済新聞の特集記事を基に4つの視点を紹介しました。

この特集の中で、4回目の「新・事業承継税制」があまり利用されていないという内容には驚きました。

本税制と国家施策の各都道府県「事業引継ぎ支援センター」の設置、更に、地方自治体や商工会・商工会議所、並びに金融機関が一丸となって事業承継に取り組むことにより一気に効果がでてくると思っていましたが、まだ進んでいないのが現状のようです。

当社、「(株)事業パートナー九州」では、「事業承継」の実施には「事業再生」が必要と考えています。

「事業承継」を機に、現在の経営状況を把握して、整理すべきものは整理して、取り入れるべきものは取り入れて、事業の再構築をして承継することが必要と考えています。

 

 

【3】事業承継税制の優遇拡大~2019年度税制改正~

(20180827)

先の投稿で「迫る大廃業時代~4つの視点の紹介~」と題して、事業承継の現状について紹介しました。

この中で、特に「親族内承継」を促進させるための2018年度の「事業承継税制」について触れましたが、政府は更なる拡大を検討しています。

2018年8月27日の日本経済新聞の記事の一部を紹介します。

経済産業省は事業承継を円滑に進めるため、2019年度税制改正で次の2つの優遇措置を財務省に要望するとのことです。

(1) 個人事業主を対象にした「個人版事業承継税制」

(2) M&A(売却)を支援する措置

 

(1) 個人版事業承継税制

土地や建物、機械設備など事業用資産を対象に、先代経営者から後継者への承継を円滑にする措置を講じます。

資産移転で生じる税負担を軽減し、資金不足などで承継に踏み切れない経営者を支え、高い技術やノウハウを持ち、意欲のある個人事業主の廃業を防ぐのが目的です。

 

(2) M&Aを支援する措置

一定の要件を満たす事業承継ファンドから出資を受けた際も中小企業税制の適用を可能とする要件緩和を要望します。

現在、親族や従業員に対して事業承継を行うことが難しく、会社の売却や一部の事業を譲渡するケースが増えてきている中で、選択肢を増やす目的です。

経済産業省によると、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は全国で「245万人」になり、このうち約半数の127万人が後継者未定の状況です。

この問題を放置すれば、技術の喪失に加え、今後10年間累計で約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われると試算しています。

そこで事業承継を促すため、2017年度から2021年度までの5年間を事業承継政策の集中実施期間に位置付け、税制改正や補助事業などを通じて抜本的な支援策を講じていきます。

個別の企業・個人事業者で「事業の内容」「経営状況」「家族の状況」など様々であり、事業承継も個々によって様々な対応が必要です。

当社では、個々の企業・事業主の状況を把握して、最適な事業承継を考えていきます。

 

 

 

 

お困りの経営者様お電話いますぐOK!!

093-873-9120

平日 9:00 - 18:00

お問い合わせ・資料請求

メールは24時間受け付けております。

PAGE TOP