経営改善・事業再生 2021年(4)
本記事は、以前のホームページに記載したものを整理したものです。
【1】「コロナ融資」返済が苦しかったら相談を
(20210327)
昨年の3月から、「日本政策金融公庫」や「各種の金融機関(銀行、信用金庫など)*信用保証付融資」から『コロナ融資』を受けている企業や個人事業主さんが多くあると思います。
その中で、「元金の返済」の「据置期間を1年間」に設定していたところは、返済が始まっています。昨年の3月は「コロナの影響は早期に収まり、短期で業績が回復する」との認識で、据置期間を1年に設定したところがあったかもしれません。4月に緊急事態宣言が発令され、長期化が予測されるようになり、4月以降に借入を行ったところは据置期間を長く設定されたかと思います。
業績が回復しているところは返済を開始しても問題ありませんが、返済を開始すると「資金繰りが苦しい」というところは、金融機関などに「据置期間の延長」を申し出てください。
「返済を先延ばし」したら「条件変更:リスケジュール」に該当し、今後の借入などの取引で不利になると思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
国から金融機関などへの要請
3月に入り、中小企業庁や金融庁から相次いで、政府系金融機関、民間金融機関、保証協会などに次に示す要請が発せられています。
<内容の要点の抜粋>
返済期間・据置期間が到来する既往債務について、返済期間・据置期間の長期の延長等を積極的に提案するなど、実情に応じた最大限柔軟な対応を行うこと。
<昨年末の要請>
返済期間・据置期間が到来する貸出を含めた既往債務の“条件変更‘’について、返済期間・据置期間の延長等の措置など、中堅・中小事業者の実情に応じた最大限柔軟な対応を行うこと。
3月の要請に関しては“条件変更”という表現が入っていませんので、今回の返済期間・据置期間の延長は「条件変更ではない」と読み取れます。
ただし、国の要請があっても、金融機関などが何でも応じるということではありません。
「実情に応じた最大限柔軟な対応」と示されていますが、個別の案件によって対応が異なります。
万が一、相談を申し入れて門前払いになった場合は、上に示した資料を提示して、丁寧に、「このような要請が発せられていますので、あらためて検討をお願いします」と申し出て下さい。
今回の「コロナ融資」だけでなく、借入金の返済に困られている方、将来に不安がある方は、当社にお声掛け下さい。現状を整理して最適な方策を検討し提示します。
【2】経営改善計画の実施が重要「モニタリング」
(20210327)
「経営革新等認定支援機関」として、経営改善計画の策定及びその後の継続支援(モニタリング)を幾つか行っています。
計画策定とモニタリング
経営改善計画を立案し銀行に了解を得て借入金の返済金額を減らすことができると、社長だけでなく、我々支援者も一安心してしまいます。冷静に考えると計画ができて承認されても企業の状況は全く変わってなく、立ち直れるかはその計画を実行して成果を得ることが必要になってきます。
この図に示すように、計画の策定はスタートであり、そこから長い、場合によっては苦しい「経営改善」の実行が続いていきます。
現在支援を行っている案件の一つについて感じたことを紹介します。
3年前の計画
先日、5年の経営改善計画の3年目の実施状況の報告と今後の施策について、支援している社長と一緒に金融機関に報告しました。
この企業は、建設業に該当し、金融機関に借入金の返済条件の変更をお願いして認めて頂いたところです。計画策定時点では、建設業自体の売上が伸びないので、異なる業種の事業を開始し、その開始に当たり金融機関から借入を行っていました。結局、これまで実施したことと全く異なる分野の事業だったためうまくいかずに、多額の赤字を発生させ、そのために借入金の返済ができない状況に陥っていました。当然財務状況は、財産(資産)よりも借金(負債)が多い「債務超過」状態でした。
3年前には主に次の点の対策を計画に入れ込みました。
1 新規に行った事業から完全に撤退し、本業に専念
2 受注工事を吟味して売上よりも利益重視で選定する
3 毎月の収益の集計を早めて、課題を早期に見つけて手を打つ
対策自体は当たり前ですが、当たり前のことを当たり前にできるかが成果が得られるかのポイントです。
金融機関には、最初の1年間は「元本の返済はゼロ」に、その後、段階的に返済額を増やしていくことをお願いし了解を得ました。
3年を経過して
3年を経過して、計画を「100%」達成することはできませんでしたが、返済の猶予や減額の効果もあり、経営は継続することができ、返済を開始することもできました。
計画1年目には黒字になり、債務超過の解消も当初の計画の5年以内に達成できる目処も立ちました。
この理由として、「本業に専念」が最も効果が大きかったと考えています。経験、ノウハウがない事業を完全に止めることにより、長年携わっている事業(建設業)に真剣に取り組むことができ、市場や顧客の見直し、材料費、労務費、外注費などの原価減価の低減など、当たり前のことを実施することができました。
元金の返済は契約時に約束した額は無理ですが、3年前の経営改善計画で示した額の返済を行うことになり、金融機関に了解してもらいました。
ただし、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で直近の受注が減っていることに注意していく必要があります。
今後の進め方
今回の企業の社長はまだ「50歳代前半」であり、まだまだ先があります。本業の建設業に専念することで更に売上・利益を伸ばすことができる可能性はありますが、外での作業なので季節変動が大きく、業績を伸ばすには限界があります。返済を継続することができましたが、完全に返すには長い期間がかかり、再度返済に行き詰まる可能性もあります。
今回の経営改善に至った原因は「他の事業の失敗」です。この社長は、今回の事業以外にもこれまで幾つかの事業にトライして失敗しています。その原因は本業と大きく離れた事業であること推定しています。
現在、政府は「事業再構築補助金」など新しい事業への挑戦を推奨しています。
この支援している企業には、これまでは「本業専念」を強く言っていましたが、ある程度落ち着いてきたので、もう一つの事業の柱を創る取組みが必要と考えています。その事業としては、本業の技術、市場(顧客)、連携先(外注)などの中で核となる要素を選定して、それを軸に進められることが成功につながると思っています。今回は全く異なる事業の取組みは外して検討します。
外部環境の整理を行い、自社の強みを把握し、仮説を立てて、ある程度のシミュレーションを行い、計画的に進めたいと考えています。
10年後、5年後の姿を描き、目標を設定し、それに向かって行動することにより、現状設定しているよりも多く借金を返済でき、それよりも社長自身がやる気を持つことが大きいと思います。
現在、弊社に相談が入っている「事業再構築」の考え方・内容は、企業にとってまちまちです。その中で成功の可能性が高いのは、自社をよく分析して強みを認識して、そこに外部環境や市場・顧客の要望をマッチングさせたものと思っています。
「経営改善・事業再生が必要と考えている」「新たな事業に取り組みたい」と検討されている企業の方はお問い合わせ下さい。
【3】BPOとアウトソーシングの違い
(20210815)
BPOサービスとは?
最近、「BPOサービス」という言葉を新聞や広告などでよく見かけます。「外注」や「アウトソーシング」と何が違うのでしょうか?
アウトソーシング
仕事を担う人やサービスを契約によって外部から調達し、企業経営を強化する手法です。その対象は、総務・人事・経理・情報システム開発や運用などのバックオフィス業務が中心です。会計事務所に会計記帳や試算表の作成を依頼する、人材派遣会社から経理事務の派遣を受ける、IT企業にホームページの制作やメルマガの配信を委託するなどが該当します。
BPOサービス
企業が中心的な業務(コア業務)以外の「部門やビジネスプロセス」をまるごと外部の企業に委託する経営戦略のことを言います。部分的な業務の委託ではなくビジネスプロセスごと移管することで、単純なオペレーションの委託のみならず経営レベルでの改革を行う重要な業務を委託する経営戦略のひとつです。
具体的な例
2021年8月14日(土)の日本経済新聞に、次の記事が掲載されていました。
凸版印刷子会社の「ONE COMPATH」は、家事代行業向けのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスに参入する。家事代行会社の顧客対応やスタッフの勤怠管理、データ入力などの事務を代行するほか、業務効率の改善も支援する。・・・同社は2020年から家事代行の比較サービス「カジドレ」を運営している。新サービスの提供を通じてデータの一元管理を進め、家事代行業務の現場にデジタルツールを導入する狙いがある。
家事代行業は新型コロナウィルス禍で需要が膨らんでいる。繁忙になるにつれ、業務管理に紙の書類を使うなど方法がアナログで各社の管理方法も統一されていないなど、効率化が課題となっている。
上記の中で、単なる事務の代行であれば「アウトソーシング」ですが、業務効率の改善も支援するということであれば、BPOサービスになります。
BPOサービスのメリット
BPOサービスを採用するメリットは次の3点です。
1 社内のリソース(資源)を本業(コア)業務に集中させられる
2 専門業者のスキルを活用できる
3 コストを削減できる
1 社内のリソースを本業業務に集中させられる
企業には様々な業務がありますが、直接収益につながらなく自社でやる必要がない業務をBPOとして外部に委託します。これにより。コア業務に人材や資金を投入することができ、新製品・サービスの開発を行うことができ、企業収益の向上が見込めます。
また、BPOサービスを活用することにより、非効率業務の改善が期待できます。部門間で重複する作業がある、慣例でムダだと想いながら書いている報告書がある、何のためにあるかわからないルールがあるなど、ムダなコストがかかっている場合があります。BPOサービスでは、導入時にボトルネックの分析を行い、書式や処理方法の統一、マニュアルの整備、ITシステムなどの業務プロセスの改善を行うことも可能です。
2 専門業者のスキルを活用できる
BPOサービス業者は、受託業務に関して専門的なスキルやノウハウを保有し、スペシャリストを抱えているので、委託した業務に関して高い完成度が期待されます。そのため、委託した業務に関して心配する必要がなくなり、結果として自社の本業に注力することができます。
3 コストを削減できる
企業では様々な業務があり、それらの業務量は常に一定ではなく、繁忙期と閑散期が存在します。繁忙期に合わせて人材を揃えると閑散期に人が余ってムダなコストがかかります。
BPOサービス業者であれば、他の企業からも業務を受注しているので、業務に必要な人員だけを必要なタイミングに割り当てることができ、これにより自社で人を雇うよりもコストを下げることができます。また、BPOサービスは、本来固定費である人件費を、変動費として扱うことができます。
BPOサービスの活用例
マーケティング業務の委託
自社のマーケティング部門(機能)を丸ごと委託します。
(1) ウェブマーケティング戦略の立案
(2) ホームページやECサイトの設置
(3) ウェブ広告の掲載
(4) 商品購入までの各ステップの調査・解析
(5) 解析に基づく改善
従来であれば、上記の(2)ホームページやECサイトの設置だけを外部に委託し、その他は自社のマーケティング部門(営業部門)が実施していたものを専門業者に委託できるので、より良い結果が出る可能性があります。この場合の報酬は、固定部分と売上に応じた変動部分(成功報酬分)の2通りにする方法もあります。
施設の管理業務の委託
日常的に発生する清掃や備蓄品の管理はもちろん、受付や従業員からの問い合わせ対応など、包括的に管理業務を任せることができます。当社が入居している事務所は、北九州市がベンチャー企業のために貸し出している施設で、その運営をBPOサービス会社に委託しています。受託会社は単なる管理業務だけでなく、セミナーの企画や情報発信なども任され、更に全国にある同様の施設と連携したイベントの企画立案・遂行も行っています。
BPOサービスの利用は経営計画(戦略)の一つ
BPOサービスを有効に活用する前提は、「経営計画」の策定です。
全社の経営計画を策定し、それに基づき、各組織(開発、製造、営業、人事、総務、購買など)を設定し、その組織の実施する機能の中で、BPOサービスを利用した方がよいものを選定します。
手が足らないので委託するのではなく、経営計画と関連付けて、戦略的活用することが必要です。
【4】早期の経営改善を支援します
(20211015)
2017年5月17日の投稿記事を、2021年10月15日に変更して掲載しています。
「プレ405事業」から『ポストコロナ持続的発展計画事業』
2017年から行われている「早期経営改善計画策定支援事業」は、今回のコロナ禍で事業計画を策定する(見直す)ことに目的が変わっています。
本事業は、資金繰りの管理や自社の経営状況の把握などの基本的な経営改善に取り組む中小企業が、国が認定した「経営革新等支援機関」の支援を受けて、資金繰り計画やビジネスモデル俯瞰図といった内容の経営改善計画を策定する際、その計画策定費用の3分の2(上限20万円)を補助することで、中小企業の早期の経営改善を促すものです。
*当社の代表は「経営革新等支援機関」として認定されています。
こんな企業におすすめ
・ここのところ、コロナの影響などで資金繰りが不安定になっている。
・コロナなどの影響で売上が減少し、先行きが分からず不安だ。
・自社の状況を客観的に把握し、今後の取り組み事項を整理したい。
・専門家にいきなり高額は払えないので、まずはお試しで計画を作りたい。
2017年5月の記事 *一部変更
政府の「中小企業施策」として、新たな制度が導入されています。
政府の方針は明確です。
● 「意欲があって、計画を持って、管理できる会社」は積極的に支援する。
● 意欲がなく、その場対応で、どんぶり勘定の企業は、退場してもらう。
今回、2017年5月29日から新しい制度が施行されることになりました。
深刻な経営危機になる前に「経営の専門家」と共同で、「経営改善計画」を策定する「早期経営改善策定支援」制度です。
経営改善計画の策定の際に支援する「経営の専門家」の費用の3分の2を補助(上限は20万円)するものです。
現在の政府の中小企業支援の施策
今回の新たな施策を含めて、現在の政府の中小企業支援をまとめて示します。
使いやすい制度が多くあります。
経営状態が悪い順に示します。
当事務所では、全てに対応できますので、お問い合わせ下さい。
「経営改善計画」策定の支援
・金融機関からの借入の返済に困った場合、「経営の専門家」の協力で、現状分析~今後の再生計画を策定する際に、専門家の費用に補助が出ます。
「早期経営改善計画」策定の支援 *今回の制度
・金融機関への返済条件の変更は必要ないが、不安があり、「経営の専門家」に相談したい場合です。
*概要は、後述します
経営力向上計画
・本業の生産性を上げるなど、企業の体質を強化するための計画策定です。
*計画書は「A4用紙で4枚程度」で、認定を受けると、融資や税金の面で優遇され、補助金によってはポイントが加算されます。
*詳細は、以前のブログを参照して下さい
経営革新計画
・新規の製品開発、新規のビジネスモデルなどに対して、認定を受けるものです。
*認定を受けると、融資の面で優遇され、補助金によってはポイントが加算されます。
*詳細は、以前のブログを参照して下さい
この他にも、事業承継関連の優遇策や各種の補助金があり、いろいろな支援がありますので、各企業の実情に合わせて最適な制度を利用されることをお勧めします。
早期経営改善計画策定支援
中小企業庁のホームページに記載の内容を紹介します。
国が認める士業等専門家の支援を受けて、「資金実績・計画表」や「ビジネスモデルの説明図(俯瞰図)」など、早期の経営改善計画書を策定する場合、専門家に対する「支払費用の3分の2(上限20万円まで)」を国が負担するものです。
この費用には、1年間の専門家による「モニタリング(定期的なフォロー)」の費用も含まれます。
*専門家への総額の支払いが「30万円」の場合、自社の負担は「10万円」になります。
専門家のしっかりとした計画策定の支援が受けられ、その後も継続的な支援が得られることは、有用と思います。
本制度の特徴
① 条件変更等の金融支援を必要としない、簡潔な計画
② 計画策定から1年後、フォローアップで進捗を確認できる
③ 計画を策定することで自社の状況を客観的に把握できる
④ 必要に応じ本格的な経営改善や事業再生の支援策の紹介を受けることができる
お勧めの対象企業
今のところ金融機関への返済条件等の必要はないが、
・ここのところ、資金繰りが不安定だ
・よくわからないが売上が減少している
・自社の状況を客観的に把握したい
・専門家から経営に関するアドバイスが欲しい
・経営改善の進捗についてフォローアップをお願いしたい
経営改善計画との違い
従来の経営改善計画は、金融機関から返済条件を緩和してもらう等の金融支援を受けることを目的として、金融調整を伴う本格的な経営改善計画を策定します。
*「経営改善計画」も継続されていますので、金融支援が必要な計画に関してもお問い合わせ下さい。
早期経営改善計画では、金融支援を目的とはせず、早期から自社の経営を見直すための「資金実績・計画表(資金繰り表)」や「ビジネスモデル俯瞰図」などの基本的な計画を策定し、金融機関に提出します。
早期経営改善計画書策定のメリット
① 自社の経営の見直しによる経営課題の発見や分析ができる
*不安を解消し、目標に向かって取り組むことができます
② 資金繰りの把握が容易になる
③ 事業の将来像について金融機関に知ってもらえる
経営状況の把握に使える分析は
昨年7月の「経営強化法」とともに示された「ローカルベンチマーク」の活用を推奨。
各データを入力することで、経営状況を簡単に把握、分析することができます。
*「ローカルベンチマーク」については、次のブログを参考にして下さい
本制度利用のスキーム
日本、特に地方の発展、活性化には、中小企業の発展が不可欠です。
そのために、今回紹介しましたように、政府は様々な支援策を打ち出しています。
制度を有効に利用して、会社を発展させていきましょう。