倒産の状況が変化した
これまでは「コロナ禍」による販売不振が倒産原因として注目されていましたが、現在は「コロナ禍」に加えて様々な要因が倒産の原因になってきています。今回は、「東京商工リサーチ」の公表資料等から、最近の倒産状況とその倒産を防ぐ考え方を紹介します。
2022年の倒産状況
東京商工リサーチが、2023年1月13日に公表した企業倒産数では、2022年は2021年よりも「6.6%増加」の「6,428件」です。前年よりも増加しましたが、ここ10年ほどと同様に、倒産数・負債額ともに低い状況は続いています。
倒産の状況が変化した
東京商工リサーチが、2022年12月に「2022年を振り返り(後編)」という記事を公表しています。
これまで、「コロナ禍」による倒産が注目されていましたが、現在は、「コロナ禍」に加えて、次の要因が加わった「複合危機」が進行しています。
<外部環境変化として>
・「ウクライナーロシア情勢」による燃料等の入手性
・「急激な円安」、最近は戻りつつあります
・様々な要因による原材料費・資材費の高騰 など
<内部要因として>
・コロナ特別融資による「過剰債務(借金)」
・後継者不在
・人材不足・人手不足 など
企業の倒産原因
少し古い数値になりますが、2021年に投稿した記事を再度紹介します。
次の表は、2020年に倒産した企業の倒産原因を示しています。第1位は圧倒的に「販売不振」で、この状態は現在でも変わらないと思います。
公表の資料では、こうなっていますが、倒産した企業は単一の原因ではなく、幾つかの原因が複雑に絡み合っている場合が多いです。
「販売不振」の原因と対策
「販売不振」による倒産は、売上が立たないことにより、資金繰りが苦しくなることで起こります。
売上高の減少の仕方については、主に2つのケースが考えられます。ゆっくりと減少していく場合と、急に減少する場合です。前者の場合は適切な管理指標を用いて早い段階から問題を認識し、対策を取ることが重要になります。後者の場合は、どれだけ迅速で抜本的な事業の見直しができるかが問題となります。
当社が関わっている企業の長期的な売上の推移を示します。
まずは原因を掴む
売上が減少した要因は、「外部要因」と「内部要因」の2つに分けることができます。
1 外部要因を検討する
外部要因を検討するには、
「環境要因」と「関係者要因」の両面で現状を分析して下さい。
環境要因
これの主なものは、「業界全体の景気(動向)」です。
これは、各業界の団体や調査機関が公表している統計データから予測がつきます。例えば「自動車の生産台数」「鉄鋼の生産量」「住宅の着工数」などです。これで自社が関連する大まかな動向がわかります。短期的な動向だけでなく、統計データを10年程度の推移にグラフ化し、自社の売上推移と比較すると業界全体と自社の動向の関連性を読み取ることができます。
更に、業界動向をより分類することにより、例えば、自動車であれば、「メーカー別」「車種別」「分類別(ガソリン車、ハイブリッド車、EV車など)」など、自社に対応した分類の統計データを検討することにより、販売不振の原因がわかる可能性があります。
上記の例に示したような「環境要因」による売上減少は、比較的緩やかな下がり方をしますが、今回の「新型コロナウィルス感染拡大」の場合、急激な変化を示します。先のグラフに示した「製造業」と「サービス業」の場合、年毎の集計と言うこともあり、気付くのが遅れる場合があります。グラフの「建設業」の場合は、月毎でグラフ化していますので、売上低下をすばやく知ることができ、対応が早くなります。
関係者要因
売上に大きな影響を与えるのは、より身近な関係者の状況です。これを検討するには、「ファイブフォース分析(5フォース分析)」で登場する5つのフォースの面で売上減少の原因を掴むのが有効と考えています。
5つのフォースを示します
(1)既存競合会社(業界内での競争)の動向
(2)新規参入企業の出現
(3)代替品の出現
(4)買い手(顧客)の動向
(5)売り手(仕入先)の動向
2 内部要因を検討する
外部要因だけでなく、次に示す企業の内部の問題で売上が減少することがあります。
(1)製品・サービスの質の低下
(2)社員の質の低下
(3)既存顧客へのサービス低下
(4)新規顧客の開拓不足
ここでは、倒産の状況と、倒産原因で最も多い「販売不振」について紹介しました。ここで紹介したのは主な原因です。当然、個別の企業にとって「販売不振」の原因は様々です。効果を上げるには、まずは現状の分析です。
弊社で、経営改善・事業再生に取り組む際は、いろいろな切り口で現状分析を行い、その結果から課題を抽出します。
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