建設業倒産・前年比39%増加!対策は?
直近の建設業の倒産状況
2024年1月10日に「帝国データバンク」から、2023年の建設業の倒産状況について公表されています。
それによると、2023年の建設業の倒産は前年比38.8%増加で、「1,671件」になっています。
この増加率は、リーマンショック期を上回り、2000年以降で最も高いとのことです。
直近10年の倒産の推移を示します。帝国データバンクの資料。
帝国データバンクでは、倒産の主な原因として「人手不足」と「資材の価格高騰」を上げています。
また、地域別では「九州」は前年に対する増加率が、「50.5%」増と全国平均よりも高くなっています。
「九州」は、福岡市中心部の「大型再開発(天神ビッグバン)」や熊本県の「半導体関連投資」など案件が活発しています。その中で、仕入れや人手確保に伴うキャッシュアウトが先行し、資金繰りがショートしたためと考察しています。
生き残りの7つの課題・対策
中小零細建設業が生き残る課題として、次の7つがあります。各課題の概要と対策の基本方針を示しますが、各社の状況によって有効な対策は当然異なりますので、ぜひ、当社と一緒に考え、有効な策を見いだしましょう。
1 労働生産性が改善されない
2 多重請負の構造
3 絶対的な資金不足
4 技術の習得までの期間が長い
5 デジタル化が遅れている
6 同業他社や他業種との連携が遅れている
7 経営に対する勉強意識が少ない
経営知識を系統的・効率的に学ぶには、当社が提供している「社長の専門学校」の講座で学ぶことが適しています。
★ 今回の記事は、(株)事業パートナーの「松本光輝社長」の講演資料(2023年6月)をベースに記載しました。
1 労働生産性が改善されない
現在の課題
(一般社団法人)日本建設連合会の「建設業ハンドブック2021」に示されている「過去20年間」の生産性の向上は次のようになっています。
・全産業:約20%
・製造業:約50% *機械化・自動化の効果
・建設業:横ばい
建設業の生産性が改善されない原因として、「人件費の高騰」「人材不足」「工事単価の下落」等が挙げられます。
建設業の業務は「施工業務」と「事務業務」から成り立ち、人手と時間を要する業務が多いです。
対策の方向
対策として、次に5点を示します。
(1)建設ロボット導入と機械化
中小零細企業でも機械化は避けることができません。
(2)労働者数や労働時間の削減
製造業の現場で行われている「ムリ・ムダ・ムラ」の改善の考え方を建設業に適用し、労働者数と労働時間の削減策を検討し実行することが必要です。
(3)作業者の多能化
一人の作業者が複数の作業を行うことが可能になれば作業効率は大きく向上します。そのためには、作業者に複数の資格を取得させるのも有効な施策です。
(4)現場での移動時間の削減
作業者は複数の現場を掛け持ちすることも多いので、現場監督は、全体像を見て効率的に作業者を配置することが求められます。
(5)外国人材の活用
政府は国策として、外国人材の活用を推進しています。建設業界では人材不足が深刻なため、外国人材の活用、特に「特定技能制度」の活用についての制度化を積極的に進めています。
当社では、「特定技能の登録支援機関」として、特定技能人材の活用を支援する「アシスト国際事業協同組合」と連携していますので、当社にお問い合せをお願いします。*技能実習制度に関しても対応できます。
また、外国人の技術者を施工管理者として活用している企業もあります。
外国人の技術者の活用は、関連の「北九州アシスト法務事務所」にお問い合わせ下さい。
2 多重請負の構造
現在の課題
現在の日本の建設業の業者数は「47万業者」、その「90%」が中小零細企業や個人事業者です。
建設業においては、工事全体の総合的な管理監督を担う元請けのもと、中間的な施工管理や労務の提供その他の直接施行機能を担う1次下請け、2次下請、さらにそれ以下の次数の下請構造が存在しています。重層的な施工体制では、施行に関する役割や責任の所在が不明確になり、次のような問題点が指摘されています。
(1)下請の重層化が施工管理や品質面に及ぼす影響
・施行の役割や責任の所在が不明確に
・現場の管理が行き届きにくい
・連絡調整や情報共有に支障が出る など
(2)下請の対価の減少や労務費へのしわ寄せ
・中間段階が利益を取るため下位下請の対価の減少、労務費へのしわ寄せ
・設計変更や追加工事の費用の負担が不明確に など
(3)施工管理を行わない下請企業の存在
・工場製品や資材等の販売を行う代理店等が介在し、不要な重層化、役割が不明確になる
(4)下位の下請段階に見られる労務提供を行う下請の重層化
・専門工事業者が直接施工に必要な技能労働者を雇用から請負に外部化し、技能者の地位の不安定化、不明確な雇用・請負関係が生じ、就労環境が悪化するおそれがある
対策の方向
対策の方向として、次の3点があります。
・技術や経験を有する技能者を社員化または専属化する
・施工時期を平準化する
・それぞれの専門業者をグループ化する
3 絶対的な資金不足
現在の課題
建設業は会社の業績を示す営業利益は、大企業で6%、「中小零細業者では3%」と他の業界に比べて少ない。
また、発注者との契約で「製品原価」に当たる費用を全額先払いでもらえなく、自己資金か借入資金で立替えなければならなく、他業種よりも立替額が多くなります。
対策の方向
・初回金、中間金、完成時金と細かく支払いを要求するか、工事規模によっては毎月支払いを要求する。
・住宅工事の場合は建物の完成時(保存登記時)にしか銀行から融資が出ないのでこまめに支払いを要求する。
・複数の工事を同時に行う場合は、各工事毎の入出金を正確にする。
・1件の工事ごとに銀行から短期融資を調達する。
4 技術の習得までの期間が長い
現在の課題
建設技術の習得は一般的に10年必要と言われています。また、資格取得が必要の作業もあり、公共工事の入札等には必須条件となっています。
対策の方向
・未経験者でも3年で一人前、5年で技能者にする仕組みを構築する。
<参考施策>
・3年間で技術を習得できるための計画を作成する
・5分間ビデオを制作し、各自の携帯(スマートフォン)で繰り返し学習する
・現場で作業者がカメラを身体に装着して、遠隔で技能者が直接指示をする
・定期的に映像を元に研修を行う
・資格を計画的に取らせる
5 デジタル化が遅れている
現在の課題
ほとんどの中小零細業者は大企業に比べてデジタル化が遅れており、それにより生産性が低くなっています。
対策の方向
目的に応じた最適なデジタルツールを導入する
<今後活用が必要とされる技術と対策>
・携帯端末の活用
*遠隔地から現場の状況をリアルに確認
・図面管理、施工管理をタブレットで行う
・アシストスーツ
*作業者の身体的負荷を大幅に軽減
・ウェラブル端末(眼鏡型、時計型)
*現場でマニュアル手順を見ながらの作業で効率化を図る
*熟練者による遠隔作業指示
・受発注業務、設計・施工管理を在宅ワークにする
(参考:デジタル化に活躍するデジタルツール例)
・ストラクションサイト:360度カメラ、安全管理、業務効率化
・タクシノワ:Wi-Fi環境を構築
6 同業他社や他業種との連携が遅れている
現在の課題
現在、小売業は同業や他業種と連携して業績拡大を進めており、製造業も同業者との連携を深めて独自の製品開発を進めています。
建設業は各専門性が強いこともあり、連携が十分ではないことが成長に歯止めをかけています。
対策の方向
・中小零細業者は同業者間で組合またはグループ化する
・業態の異なった業者ごとに連携して仕事の平準化を図る
・大手企業の専従業者(会社)となる
7 経営に対する勉強意識が少ない
現在の課題
中小企業の建設業の経営者は現場重視の考え方が強く、経営に関する知識の習得が不十分な面があります。
今後は、きちんとした経営知識を習得し、中長期的な視点で、現状分析を行い、有効な施策を検討することが必要になっています。
対策の方向
<特に必要な勉強項目>
・貸借対照表、損益計算書等の財務諸表の理解
*現在の自社の経営状況の把握
・資金繰り表の作成・運用
・経営(事業計画)の策定
<お勧めの学習手段>
・当社が提供している「社長の専門学校」の講座の受講は、経営知識を習得するには最適な方法です。
ぜひ、入会をご検討下さい。月額:9,900円(税込み)です。
社長の専門学校の入学(登録)については、分校である当社にお問い合わせ下さい。
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