防災・BCP(事業継続計画)
中小企業を取り巻く環境
先週、2月17日(土)に「九州志士の会」主催の「防災・BCP(事業継続計画)」に関する講演会・討論会がありました。
現在、中小企業を取り巻く環境は、複雑で、変化も大きくなっており、先が読みにくく、経営計画も立てにくいのが現実です。
下図に、この状態を図示化したものを示します。
「コストプッシュインフラ(原材料・資材費、人件費等の値上り)」や「生産人口の減少による人手不足」などは身近に感じて、対策の具体化を行っているかと思いますが、「災害リスク」に関する検討は後回しになっているところが多いと思います。
この状況の中で、本年の元日に発生した「能登半島地震」により、社会的に防災に対する意識が高まっています。
今回は、「九州志士の会の講演」の中から、技術士(建設部門)で、BCPにも積極的に取り組んでいらっしゃる「元永優一」様の講演内容・資料からピックアップして、BCPの取組み方について紹介します。
発生する前に考えるべきこと
講演資料を提示します。
この中で示されている「自助」「共助」「公助」の意味を示します。
自助:災害が発生したときに、まず自分自身(家族も含む)の身の安全を守ること。
共助:地域やコミュニティといった周囲の人たちが協力して助け合うこと。
公助:市町村や消防、県や警察、自衛隊といった公的機関による救助・援助。
災害が発生した際は、まず、「自分や家族が助かること」が重要になります。そのため、平時には自助に関する備えが必要になります。
「企業」や「事業所」も人と同じように、「自助」の備えが必要です。
BCP(事業継続計画)とは
BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
緊急事態は突然発生します。有効な手を打つことができ無ければ、特に中小企業は、経営基盤の脆弱なため、廃業に追い込まれるおそれがあります。また、事業を縮小し従業員を解雇しなければならない状況も考えられます。
緊急時に倒産や事業縮小を余儀なくされないためには、平常時からBCPを周到に準備しておき、緊急時に事業の継続・早期復旧を図ることが重要となります。こうした企業は、顧客の信用を維持し、市場関係者から高い評価を受けることとなり、株主にとって企業価値の維持・向上につながります。
BCP策定・運用、緊急時の発動
BCPの全体像を示します。
BCPサイクルを示します。
(1)事業を理解する
(2)BCPの準備、事前対策を検討する
(3)BCPを作成する
(4)BCP文化を定着させる
(5)BCPのテスト、維持・更新を行う
まずは、現状の事業を多方面で見つめて理解を行い、その中で各種の緊急事態に対して課題を抽出します。
その課題に関して、被害を最小限に抑える、復旧方法を手順化します。
その後、策定したBCPを従業員に説明し、理解してもらい、文化(習慣)として定着させます。
定着させるためには、定期的にテストを行い、必要に応じて計画の修正を行います。
BCPは策定するのも大変ですが、それを維持することはもっと大変です。
いつ起こるか分からないことに人と時間を費やすことは、後回しになることが多いです。
「九州志士の会」の講演会の後の懇親会で、BCPの講師をされている中小企業診断士の方と話をしました。
今回の「能登半島地震」のような災害の後は、講演依頼が増え、人も集まるが、この熱はすぐになくなり、BCPの定着は難しいとおっしゃっていました。
今回の講演を聴いて、BCPについて理解を深めることができました。
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