自社の将来をどう設定するか?
スタート時期は同じでも、10年後、50年後は?
2017年4月から2年半ほど、九州工業大学の産学連携コーディネーターを務めさせて頂きました。
北九州市内で大学と共同研究等の連携をして頂ける企業を発掘するために、北九州商工会議所の企業データベースで調査を行いました。
北九州市は、鉄鋼業などの工業系の製造業が多いところです。昭和30年~40年代に創業の企業が多く、現在も多くの企業が存続しています。
企業規模はまちまちで、数百人の従業員で上場している企業や地元で名前が通っている中堅企業がある一方、従業員が10人以下の零細企業もあります。
創業後50年以上、その間に、オイルショック、バブル崩壊、リーマンショックなど幾つかの景気変動の波を乗り越えて存続していることが素晴らしいと思いますが、個々の企業によって、50年後の事業規模が大きく異なる原因について非常に興味があります。
日本が目指す中小企業対策は?
2023年6月に『中小企業の飛躍的成長に向けた政策の方向性~「100億企業」への成長に向けて~』というタイトルで、「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会」(中小企業庁管轄)が中間報告書を公表しています。
既存の中小企業を「100億円以上の年間売上」を上げる企業へ成長させる施策を検討しています。
知っていて得する可能性がある内容です。
(多くの方が対象と思いますが・・・)企業を成長させたい経営者の方は当社にお問い合わせ下さい。
現状分析
研究会では、帝国データバンクの提供データを基に、
10年前(2012年12月)及び20年前(2002年12月)の調査時点で、「売上高が1~10億円」だったが、
最新の調査時点(2022年12月)で、「売上高が100億円以上」になった「178社」の成長パターンを分析しています。
178社は次の3つのパターンに分類されるとのことです。
詳細内容は中間報告書をご覧下さい。
A 成長市場型
市場規模が伸びている業種・業態を見抜いたことが成長の要因と考えられる。
次の業種・業態が示されています(該当者数が多い上位5業種)
・DX/システム開発:18社
・不動産開発:14社
・医療・介護:13社
・リサイクル:10社
・人材紹介・人材派遣:9社
B 独自価値創出型
成長市場ではないが、競合他社と異なる価値を構想できたことが成長の要因と考えられる。
・自らが持つ技術の独自の価値を追及
・他が参入しにくいニッチな分野を発掘
C 成長志向M&A型
戦略的なM&A活用等の組織再編が成長の主要因と考えられる。
・同業種の買収によるシェア拡大
・異業種買収による多角化
・川上あるいは川下企業の買収による垂直統合
具体的な政策支援の方向性
中間報告に示されている具体的な政策支援の方向性の項目を紹介します。
具体策については中間報告書をご覧下さい
きっかけ作りの支援
中小企業経営者が自ら戦略構想・実行に取り組むための基盤・きっかけの支援を記載しています。
1 成長志向の中小企業を対象に経営力再構築伴走支援の強化
・中小機構のハンズオン支援
・各経済産業局の経営力再構築伴走支援
2 地域未来牽引企業の支援のあり方の見直し
・「地域未来コンシェルジュ」(各経済産業局の職員等)の訪問・対応
3 中小企業と支援者のデジタル・マッチング基盤整備
・「ミラサポ・コネクト構想」を推進
*中小企業庁や各支援機関が入手した中小企業に関わるデータを一元化・活用
4 成長意欲を共有する中小企業経営者のネットワーキングの促進
・オンラインコミュニティの形成
・「地域未来牽引企業サミット」の実施
・成長企業に関する情報の発信
5 戦略構想・実行の重要性の気づきの促進
・補助金等の政策ツールをきっかけとした戦略構想の推進
*事業再構築補助金の事例の活用
・戦略構想に資する外部市場環境のに関する情報発信
事業承継の支援
親族内承継・第三者承継を機とした事業変革の活性化
1 事業承継税制の更なる活用
2 事業承継・引継ぎ補助金の拡充
3 サーチファンドに対する金融支援
4 補助金における後継者支援優遇の徹底
5 アトツギ甲子園の規模拡大
6 後継者支援ネットワークの構築
M&Aの活性化
1 M&A税制の更なる活用
2 成長志向M&Aに対する金融支援の強化
3 中小M&Aガイドラインの改定・普及等
*2023年9月に改定
外部市場環境の整備
1 事業再構築補助金を通じた成長支援
2 海外進出支援
3 GX(グリーントランスフォーメーション)成長支援
4 イノベーション支援
内部資源・体制の充実
1 人材の充実
・人材活用ガイドラインの普及・活用推進
2 資金の充実
・エクイティ・ファイナンスの活用促進とガバナンス構築
・中小機構ファンド事業の活用
・デッドファイナンス
*経営者保証に依存しない融資慣行の確立
3 デジタル化の徹底
・デジタル面の伴走支援(みらデジ)
・IT導入補助金の活用
政府(中小企業庁)は各種の施策を行うが・・・
上記に示したように、中小企業庁は、中小企業が発展し、中堅企業や大企業に成長することを期待していますが、まずは次の3点が重要と思います。
1 まずは経営者の決意
2 次に何をやるかを決める(事業ドメイン・事業立地)
3 外部コンサルの力を活用する
1 まずは経営者の決意
自社は、将来(例えば10年後)にどんな企業になっているかを設定し、それを実現することを決意する。
2 次に何をやるかを決める(事業ドメイン・事業立地)
これを間違うといくら資本をつぎ込んでも無駄になります。
先に示した成長した企業のパターンを再掲します。
成長するためには、
(1)成長する市場の事業を行う
現在・今後の日本では、成長市場(産業)が少ないのが現状ですが、自社の強みを明確にして、外部環境の中で今後伸びそうな分野への適用を考えます。
(2)成熟市場の中で差別化を行う
成熟市場の中でも、独自製品やニッチな市場の参入など、差別化を行い価値を創出する可能性があります。
以前に差別化についてまとめたものをご覧下さい。士業・コンサル向けに説明した資料です。
(3)他からリソースを手に入れる
M&Aで、自社にない技術や顧客を手に入れる方法です。
ただし、M&Aによる効果をきちんと検討する必要があります。
3 外部コンサルの力を活用する
自社だけでは限界があります。
自社に合った外部コンサルを探して力を借りるのも一方法です。
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