税理士のクロスセル
税理士のクロスセル
以前の投稿で、「士業・コンサルタント」が業務の幅を広げる「セルアップ」「クロスセル」について紹介しました。今回は、一つの例として、税理士のクロスセルの「経営改善・事業再生への取組み」について紹介します。
ここで示すのは、税理士だけでなく、他の士業・コンサルタント業務にも適用可能な取組みです。
税理士が顧客の経営改善や事業再生に取り組むことには、多くの利点があります。税理士の持つ専門知識と経験を生かして、企業の財務状況を的確に分析し、適切な助言を行うことで、企業の健全な経営をサポートできるのです。以下では、具体的な利点について詳しく説明します。
1 財務の見える化と問題の早期発見
税理士は日常的に企業の財務データを扱っているため、売上やコスト、キャッシュフローなど、経営に影響を与える重要な指標を把握しています。この財務データを基に、企業が直面する潜在的な問題を早期に発見し改善策を提案することが可能です。例えば、税務申告の際に売上の減少やコストの増加が見られた場合、早期に経営改善に向けた対策を提案し、事業が悪化する前に軌道修正ができます。
また、日々の財務データを基に「見える化」を図ることで、経営者自身が自社の現状を正しく把握し、適切な意思決定を行うための材料を提供します。これにより、現場での感覚的な判断ではなく、データに基づいた合理的な経営が可能となります。
2 コスト削減やキャッシュフロー改善の提案
経営改善や事業再生の取り組みの中で、税理士は財務面からコスト削減やキャッシュフロー改善の提案ができます。たとえば、税務上の優遇措置や経費の適正化に関するアドバイス、さらには資金繰りの最適化といった具体的な提案が可能です。
経費の見直しや、不要なコストの削減を図ることは企業の利益率を改善し、経営を健全化するための基本的な手段です。また、キャッシュフローの健全化は企業にとって生命線ともいえる重要な要素であり、税理士の指導を受けることで、短期的な資金繰りの問題を解決し、長期的な経営の安定性を確保することができます。
3 事業再生のプロセスにおける税務アドバイス
事業再生に取り組む企業は、通常の経営とは異なる特殊な税務上の課題に直面します。たとえば、債務の整理や減免に伴う税務問題や、資産の売却に関する税務処理などです。このような複雑な状況では、税理士の専門知識が不可欠です。
税理士は、事業再生のプロセスにおいて、企業にとって最も有利な税務処理を提案することができ、財務面での負担を軽減します。さらに、税務当局との適切な交渉を行い、再生計画における税務リスクを最小限に抑えることも可能です。
4 資金調達や補助金の活用支援
経営改善や事業再生に取り組む企業は、資金調達や補助金の利用を検討することが多いです。税理士は、企業の財務状況を的確に把握しているため、適切な資金調達方法や補助金の活用についての助言が可能です。
たとえば、銀行からの融資を受ける際、税理士は財務データを基にした説得力のある事業計画書の作成を支援することができます。また、国や地方自治体が提供する各種補助金や助成金の情報を提供し、申請手続きのサポートも行います。これにより、企業は必要な資金を確保し、事業再生のための資源を十分に確保することができます。
5 法人税や消費税の適正化による経営負担の軽減
税理士は、企業が納める法人税や消費税の適正化を支援することで、経営の負担を軽減します。税務の適正化は、企業にとってはキャッシュフローを改善するための重要な要素です。たとえば、税務申告の際に税制上の特典や減税措置を活用することで、企業が納める税額を抑えることが可能です。
また、税務調査への対応や、適切な税務処理を行うことで、後々の税務トラブルを回避し、経営者が安心して事業再生に取り組める環境を整えます。
6 継続的なサポートと信頼関係の構築
税理士が経営改善や事業再生に取り組む際、単発的なサポートではなく、継続的な関与が重要です。税理士は企業の経営状態を長期的にモニタリングし、必要に応じて改善策を提案することで、企業が安定した成長を続けることを支援します。
また、税理士と企業との間で信頼関係が築かれることで、経営者は財務面における相談相手を持ち、意思決定の際に安心感を持つことができます。こうした信頼関係は、企業の長期的な成長にとって大きなプラスとなります。
まとめ
税理士が顧客の経営改善や事業再生に取り組むことで、財務の見える化や問題の早期発見、コスト削減、税務リスクの軽減、資金調達支援といった多くの利点があります。特に税務上の専門知識を生かして、企業の再生や成長を支援する役割を果たすことができるため、経営者にとっては非常に心強い存在です。長期的な関係を築き、継続的なサポートを提供することで、税理士は企業の成長に貢献する重要なパートナーとなります。
経営指導プロ養成研修会のご案内
上記に示したように「経営改善・事業再生」の業務は、顧客様のお役に立ち、かつ、士業・コンサルタントとの差別が図れる利点を持っていますが、取組みが難しい分野でもあります。
当社は、主に「経営改善・事業再生」に必要な知識や実務能力を高める講座を用意しています。
*当研修会は、「経営改善・事業再生」に取組むプロフェッショナルを養成する講座です。現在「第8期」の受講生を募集しています。九州地区では、11月28日が1回目の講座です(3月まで計10回)。
<各回のテーマ>
第1回:債務圧縮(11月28日)
・銀行、リース会社への交渉
・セール&リースバックの活用 など
第2回:私的整理(11月29日)
・自己破産のメリットとデメリット
・個人再生 ・特定調停 など
第3回:財務対策(12月7日)
・資金繰り実務、運転資金実務
・決算書で注意すべき21項目 など
第4回:金融対策(1)(12月21日)
・借入金の申込・返済・借入不可時の対応
・リスケジュール(リスケ) など
第5回:オペレーション(2025年1月11日)
・業務課題の発見のコツ
・業務改善の原則 など
第6回:(2テーマ)(1月25日)
(1)収益性分析
・事業部門別の業績把握
・戦略と目標値決定 など
(2)廃業支援
・株式譲渡と事業譲渡
・後継者問題 など
第7回:(2テーマ)(2月8日)
(1)販売戦略
・販売の8原則
・商品価値の高め方 など
(2)外部環境
・調査方法
・マーケティングへの活かし方 など
第8回:金融対策(2)(2月22日)
・事業承継の枠組み
・民事信託 など
第9回:M&Aと資金調達(3月11日)
・買収と売却の仕組み
・ファンドの活用 など