経営戦略には「財務会計」よりも「管理会計」が効く理由
~経営の意思決定に活きる数字とは何か~
会社の数字を見て経営分析を行う際、多くの経営者がまず目を通すのが「財務会計」の数値、つまり損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)といった決算書です。これらは法律で作成が義務付けられており、税務申告や銀行への提出など、いわば「対外的な報告資料」としての役割を果たしています。
しかし、本当に経営判断に役立つ数字は、「財務会計」ではなく「管理会計」にあることをご存じでしょうか?
本記事では、財務会計と管理会計の違いを整理しながら、なぜ経営分析や経営戦略の立案には管理会計が重要なのかをご説明します。
財務会計と管理会計の違いとは?
まずは基本的な違いを確認しておきましょう。
財務会計が「会社全体の過去の姿を正しく伝えるもの」であるのに対し、管理会計は「今後どう経営を動かすか」に役立つ、言わば未来志向の会計です。
経営判断に必要なのは「変化に気づける数字」
たとえば、売上が1億円あり、最終利益が500万円だったとします。財務会計上は「黒字」と評価されるでしょう。
しかし、以下のような情報は財務会計では見えてきません。
・利益の源泉はどの部門か
・一番粗利益率が高い商品は何か
・営業活動にかかる変動費と固定費の内訳はどうか
・増収によって利益が増えるのか、むしろ赤字が拡大する構造なのか
こうした情報は、管理会計の仕組みを入れなければ可視化されません。
特に中小企業では、少数精鋭の経営体制の中で判断を下さなければならない場面が多くあります。そのとき、日々の経営状況に即した「変化に気づける会計情報」があれば、先手の打てる経営が可能になります。
限界利益と損益分岐点が経営の武器になる
管理会計では、売上高から変動費を引いた「限界利益」をもとに、固定費をどの程度カバーできるかを把握する「損益分岐点分析」が行えます。
これは次のような問いに答える強力なツールです。
・この新規事業は利益を生むか?
・値引きキャンペーンは採算が取れるか?
・新たな設備投資は何年で回収できるか?
「数字が読める経営者」は、管理会計の思考が身についていると言っても過言ではありません。
財務会計だけに頼ると見誤る危険も
財務会計は、過去の実績をルールに則って記録することが目的です。よって、以下のような問題点があります。
・月次決算の完了に時間がかかる(タイムラグが生じる)
・実態と異なる「会計上の利益」が出る(例えば、在庫を多く抱えると利益が増えるように見える)
・一部門・一商品ごとの採算が見えない
こうした制約の中では、適切な経営判断をタイムリーに行うことが難しくなることがあります。
管理会計の導入は難しくない
「管理会計」と聞くと、難しそう・大企業のもの、と思われがちですが、実は中小企業こそ導入すべき仕組みです。
最初は以下のようなシンプルな取り組みからでも構いません。
・月次で部門別損益を出す
・商品別の売上総利益を出す
・限界利益と損益分岐点を計算する
・粗利率を月次でモニタリングする
Excelでの簡易集計から始め、必要に応じてクラウド会計や各種の解析ツールの導入を検討することもできます。
経営に使える会計へ・私たちの支援内容
当社では、財務会計の分析にとどまらず、管理会計を導入・運用するための支援を行っています。以下のようなニーズにお応えしています。
・採算性の高い商品・事業を把握したい
・新規事業の採算性を分析したい
・部門ごとの収益性を明らかにしたい
・利益計画・予算管理の体制を整えたい
経営に活かせる「数字の見える化」を通じて、強い経営判断をサポートいたします。
参考:収益性分析
当社を含めた「事業パートナーグループ」では、事業再生の現状分析において「収益性分析」を重視しています。
対象の企業の経営悪化の原因を追究するとともに、「収益源」がどこにあるかを突き止め、事業再生の糸口を見つけ出すためです。
この「収益性分析」には「管理会計」の考え、手法が使われています。
「収益性分析」については別の投稿記事で紹介しています。
まとめ
経営分析や戦略策定において、「財務会計」は必要不可欠ですが、それだけでは不十分です。
未来志向で、意思決定に使える情報を提供する「管理会計」の視点を取り入れることで、経営の質は大きく変わります。
「数字で判断する経営者」を目指す第一歩として、今こそ管理会計を導入してみませんか?