M&Aのセルサイド支援での連携
本ホームページでは、士業・コンサルタント向けの記事も幾つか投稿しています。中小企業の経営課題は多岐にわたり、単独の士業・コンサルタントだけで対応することが難しい場合が多くあります。
今回は、M&Aのセルサイド(売手)支援での士業・コンサルタントの連携について紹介します。
セルサイド(売手)支援の重要性
中小企業にとってM&Aは「事業承継問題を解決する最も現実的な手段」となりつつあります。特に売り手側の支援(セルサイド支援)は、経営者にとって人生の大きな意思決定であり、複雑かつ多面的な専門性が求められます。
現行のM&A業界では、セルサイドが不利な面があり、不適切な取引でセルサイド側に大きな損失が発生する事例も幾つか報告され、それらが起因になり、政府からはM&Aに関する規制も検討され、一部実施されており、今後も規制が強化される可能性があります。
*検討されている「M&Aアドバイザー資格制度」及び「これまでのM&Aの規制」に関しては別の記事で紹介しています。
当社の役割と士業の関与
当社はセルサイド案件の入口から出口まで伴走します。この支援については当社だけでは対応できないこともあり、専門性を持つ各士業の先生方との連携が必要になります。
・税理士:決算整理、企業価値算定、譲渡後の税務設計
・弁護士:基本合意書・最終契約書の作成、法務DD
・司法書士:株式移転、不動産登記
・社労士:雇用条件変更、労務DD
・行政書士:各種許認可の承継・再取得
セルサイド特有のリスク
売り手は「思い入れ」と「条件のバランス」に揺れます。後継者がいない不安、従業員を守りたい思い、譲渡価格の希望。ここで士業の冷静な視点が経営者を支えます。特に契約条項や税務シミュレーションは専門家の助言なしに判断できません。
士業にとってのメリット
1 顧問先との関係強化
M&A成功により顧問先の満足度が高まり、他の顧客紹介にもつながります。
2 新しい収益機会
M&Aは規模が大きく、関与する業務報酬も大きくなります。
3 専門家としての差別化
「M&Aに強い士業」として市場での評価が高まります。
具体事例
福岡県内の製造業では、70歳の経営者が後継者不在で廃業を検討。当社が譲渡先候補を探索し、M&Aを実行。税理士が株価算定を担当し、弁護士が契約書を作成。結果として会社は新オーナーの下で存続し、従業員の雇用も維持されました。
現在、「商工会議所の機械金属部会」の縁もあり、北九州市内の鉄鋼業関係の中小企業の経営者とお話しする機会が多くあります。昭和30年・40年の頃の高度成長期に事業を開始し、現在、2代目の方が事業承継のタイミングに入り、その中で後継者不在でM&Aを検討しているところもあります。社歴が長いこともあり、仕入先や販売先と古い付き合いが多く、取引上複雑な点が多くM&Aに向けて整理すべきことも多くあります。
今後の展望
中小企業庁の調査では、後継者不在企業の半数以上がM&Aを検討しています。今後は士業が「セルサイド支援にどのように関与できるか」がますます問われます。当社との連携により、士業の専門性を最大限活かすことが可能です。