廃業(4)廃業にかかる「お金と手続き」完全ガイド
廃業を決断した経営者が最初に直面するのは、「いったいどのくらいのお金と手間がかかるのか」という不安です。
しかし、正しい順序と知識を持って進めれば、無駄な支出を抑え、関係者に迷惑をかけずに円満に事業を終えることができます。
ここでは、法人と個人事業主に共通する基本的な流れを整理したうえで、費用の内訳、手続きの順番、そして注意すべき実務上のポイントを紹介します。
(1)廃業の全体像を把握する
廃業のプロセスは、大きく次の5段階に分かれます。
1 意向決定と関係者への説明(社内・取引先・金融機関)
2 営業・取引の終了処理(受注・仕入・リース・賃貸契約など)
3 法務・行政手続き(登記・許認可・届出)
4 税務・会計処理(最終決算・確定申告・資産処分)
5 残務整理と清算完了(預金・保険・残債処理・清算報告)
この一連の流れを「どこまで自分で行い、どこを専門家に任せるか」で、費用も期間も大きく変わります。
特に法人の場合、解散から清算結了まで平均で3〜6か月、費用は30万〜100万円程度が目安です。
(2)法人の廃業手続き(株式会社・合同会社)
1.株主総会の決議と解散登記
最初の正式手続きは「株主総会での解散決議」です。
議事録を作成し、法務局に「解散登記」を申請します。登録免許税は 約3万円(清算人選任登記を含め4万円程度)。
登記完了後は「清算会社」として、債権者保護手続き(2か月の公告期間)に入ります。
2.清算業務
この期間に、以下の業務を行います。
・売掛金の回収、在庫・資産の売却
・借入金・未払金の返済
・従業員の退職・再就職支援
・契約・リース・保険の解約
・税金・社会保険料の支払い
清算人(通常は代表取締役)が、資産・負債を整理し、最終的な残余財産を株主に分配します。
3.清算結了登記
すべての債務・資産の処理が終わると、最終決算書を作成し、株主総会で「清算結了の承認」を受けます。
法務局に「清算結了登記」を行い、会社は法的に消滅します。
(3)個人事業主の廃業手続き
個人事業主は法人より簡易ですが、提出漏れが多いので注意が必要です。
主な届出先と書類は以下の通りです。
・税務署:「個人事業の開業・廃業等届出書」「青色申告の取りやめ届」「消費税の廃止届」
・県税事務所:「事業廃止届」
・年金事務所/市役所:国民健康保険・年金への切替手続き
・ハローワーク:従業員を雇っていた場合、「雇用保険適用事業所廃止届」
この他、古物商、建設業、飲食業、旅館業などの許認可を持つ場合は、各行政庁への「廃止届」「返納届」を必ず提出する必要があります。
(4)廃業にかかる費用の内訳と相場
1.官公庁関係
・登録免許税(解散+清算結了登記):約4万円
・官報公告費(債権者保護公告):約3〜4万円
・各種届出用の印紙代:数百円〜
2.専門家報酬
・行政書士・司法書士:書類作成・登記代理で10〜30万円
・税理士:清算決算・確定申告で10〜40万円
・社労士:従業員関連手続きで5〜10万円
※規模や処理内容により変動します。
3.その他の実費
・原状回復・リース解約・廃棄処分費:10〜50万円
・在庫・設備処理費用:10〜100万円
・退職金・未払い給与・社会保険精算:個別計算
合計すると、小規模法人で 30〜100万円前後 が一般的な目安です。
ただし、建設業や製造業など資産を多く持つ業種では、設備処理費が大きくなる傾向があります。
(5)廃業の順序を誤ると損をする
廃業の現場でよくあるのが「税務処理を後回しにした」「契約解除の通知が遅れた」などの手続きミスです。
たとえば、賃貸契約の「解約予告3か月前」を見落とし、廃業後も家賃が発生するケース。
また、リース契約では「残存期間の一括清算」が求められることもあります。
これを防ぐには、「時系列での廃業スケジュール表」 を作ることが重要です。
株式会社事業パートナー九州では、対象の企業等の状況を把握して実務工程表をもとに支援を行います。
(6)専門家に依頼するメリット
廃業は一見、単純な事務手続きに見えますが、実際には法律・税務・労務が密接に絡み合います。
たとえば、「補助金で導入した設備を処分する際の会計処理」「経営者保証の解除交渉」「未払い社会保険料の清算順序」など、判断を誤ると損失や信用問題につながります。
株式会社事業パートナー九州では、
・行政手続き(許認可・登記・廃止届)
・税務・財務整理(決算・資産評価・返済計画)
・人的対応(従業員説明・取引先交渉)
を一体的に支援し、経営者が安心して最終段階を迎えられる体制を整えています。
廃業は経営の「終わり」ではなく、「次のステージに移る準備期間」です。正しい知識と専門家の力を借りて、悔いのない幕引きを実現しましょう。
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