強い会社をつくる(9)ビジネスモデルを変える勇気
― 「今まで通り」が最大のリスクになる ―
これまでの成功が、これからも続くとは限らない
前回は、「AI・DXで利益を生み出す会社へ」をテーマに、デジタル技術を活用した業務改善、生産性向上、人手不足対策について考えました。
AIやDXは、現在の仕事を効率化するための有効な手段です。しかし、いくら業務を効率化しても、商品やサービスそのものが顧客から求められなくなれば、会社の成長は難しくなります。
ここで経営者の皆様に考えていただきたいことがあります。
「現在のビジネスモデルは、5年後、10年後も通用するでしょうか」
長年、同じ商品をつくり、同じ顧客に、同じ方法で販売してきた会社も多いと思います。
それは、これまで顧客から信頼され、実績を積み重ねてきた証でもあります。
しかし、市場環境は常に変化しています。
人口減少、顧客ニーズの変化、技術革新、インターネット販売の拡大、AIの普及などによって、これまでの商売の仕組みが通用しなくなる可能性があります。
特に注意したいのが、「今までこの方法で成功してきたから、これからも大丈夫」という考え方です。
今回は、中小企業がビジネスモデルを見直し、時代の変化に適応しながら、持続的に利益を生み出すための考え方をご紹介します。
ビジネスモデルとは「利益を生み出す仕組み」
ビジネスモデルという言葉を聞くと、難しい経営理論を想像するかもしれません。
しかし、基本的な考え方はシンプルです。
「誰に、どのような価値を、どのような方法で提供し、どうやって利益を得るのか」
これがビジネスモデルです。
例えば、製造業であれば、製品を製造して販売し、その売上から原材料費、人件費、経費などを差し引いて利益を得ます。
小売業であれば、商品を仕入れて販売し、仕入価格と販売価格の差額から経費を差し引いて利益を得ます。
しかし、同じ製造業や小売業であっても、利益を生み出す仕組みは一つではありません。
製品を一度販売して終わる会社もあれば、販売後の保守・点検サービスで継続的な収益を得る会社もあります。
店舗で商品を販売する会社もあれば、インターネットで全国の顧客に直接販売する会社もあります。
重要なのは、単に「何を売るか」だけではなく、「どのような仕組みで継続的に利益を生み出すか」を考えることです。
「今まで通り」が経営リスクになる理由
当社では、経営改善や事業再生の支援を行っています。
その中で見られる課題の一つが、経営環境が変化しているにもかかわらず、従来の事業の進め方を変えられないことです。
例えば、長年、大手企業の下請けとして安定した受注を確保していた製造業があるとします。
ところが、取引先の海外移転や調達方針の変更によって、受注が減少し始めます。
それでも「いずれ注文は戻る」と考え、従来の取引に依存し続ければ、売上の減少が経営を圧迫することになります。
小売業でも、消費者の購買行動がインターネットへ移っているのに、従来の店舗販売だけに依存していると、顧客を失う可能性があります。
もちろん、長年培ってきた技術や顧客との信頼関係は、会社にとって重要な財産です。
それらを捨てる必要はありません。
大切なのは、自社の強みを守りながら、顧客への価値の届け方や収益の得方を変えていくことです。
「売り切り型」から「継続収益型」へ
ビジネスモデルを変える方法の一つが、継続的に収益を得る仕組みをつくることです。
従来、多くの中小企業では、商品やサービスを提供するたびに売上が発生する「売り切り型」のビジネスが中心でした。
この方式では、新しい注文を獲得し続けなければ売上を維持できません。
一方、顧客との継続契約によって定期的な収益を得る仕組みがあれば、売上の見通しを立てやすくなります。
これが「ストック収益」と呼ばれる考え方です。
例えば、次のようなものがあります。
・設備販売会社が、販売後の定期点検や保守契約を提供する
・IT会社が、システムの運用・保守サービスを月額契約で提供する
・清掃会社が、単発の清掃から定期清掃契約へ展開する
・コンサルティング会社が、個別案件だけでなく継続的な経営支援を提供する
・食品販売会社が、定期配送サービスを提供する
こうした継続契約が増えれば、毎月の売上を予測しやすくなり、資金繰りの安定にもつながります。
ただし、継続収益型の事業でも、契約の解約やサービス提供コストの増加は起こります。
契約件数だけでなく、顧客の継続率や契約ごとの利益を確認することが重要です。
サブスクリプションは中小企業にも活用できる
最近、さまざまな業界で普及しているのが「サブスクリプション(サブスク)」です。
サブスクとは、一定期間の利用やサービス提供に対して、月額・年額などの定期料金を支払う仕組みです。
動画配信やソフトウェアの利用などが代表的ですが、中小企業でも応用できます。
例えば、機械設備を販売する会社が、設備の稼働状況の確認や保守点検を月額サービスとして提供する。
住宅関連会社が、住宅の定期点検や小規模修繕を組み合わせた会員サービスを提供する。
食品会社が、季節の商品を毎月届ける定期購入サービスを始める。
こうした方法も考えられます。
ただし、サブスクは、料金を月額制に変えれば成功するというものではありません。
顧客が継続して料金を支払うだけの価値を提供し続ける必要があります。
例えば、月額5,000円の契約を100件獲得すれば、毎月50万円の売上になります。
しかし、サービス提供に毎月45万円の費用がかかれば、利益はわずかです。
また、解約が増えれば、売上も減少します。
サブスクで重要なのは、契約数を増やすことだけではなく、顧客が継続したくなる価値と、利益が残る仕組みをつくることです。
価格競争から抜け出す「差別化」の考え方
ビジネスモデルを見直す際、もう一つ重要なのが差別化です。
中小企業が大企業と同じ商品を、同じ方法で販売しようとすると、価格競争に巻き込まれやすくなります。
資金力や規模で劣る中小企業にとって、価格だけで競争することは得策ではありません。
そこで考えたいのが、「自社が選ばれる理由」です。
例えば、製造業であれば、小ロット対応、短納期、特殊加工、設計段階からの技術提案などが差別化につながります。
サービス業であれば、専門分野への特化、迅速な対応、顧客ごとのきめ細かな支援などが強みになります。
また、商品単体では差別化が難しくても、販売後の保守、教育、相談などを組み合わせることで、競合企業との違いをつくることができます。
「何を売るか」だけでなく、「顧客のどのような問題を解決するか」という視点が重要です。
そして、差別化によって生まれた価値を、適正な価格で提供することが、利益率の改善にもつながります。
AI・DXはビジネスモデルを変える手段にもなる
前回ご紹介したAI・DXは、業務の効率化だけでなく、ビジネスモデルの変革にも役立ちます。
例えば、従来は営業担当者が訪問して販売していた商品を、インターネットで直接販売する。
顧客の購入履歴を分析し、必要な商品を適切な時期に提案する。
設備の稼働データを活用し、故障する前に保守サービスを提供する。
こうした取り組みは、単なる作業時間の削減ではありません。
顧客との関係や収益の得方そのものを変える取り組みです。
また、生成AIを活用すれば、顧客ニーズの整理、新サービスの企画、営業資料の作成なども支援できます。
ただし、AIが提案したビジネスモデルが、そのまま自社で成功するとは限りません。
市場調査や顧客への確認を行い、実現可能性を検証する必要があります。
ビジネスモデルの転換は「小さく試す」
ビジネスモデルを変えることには、当然リスクがあります。
新しいサービスが顧客に受け入れられない可能性もありますし、想定以上の費用がかかることもあります。
そのため、中小企業では最初から大きな投資をするのではなく、小規模な試行から始めることが重要です。
例えば、保守サービスの月額契約を検討する場合、最初から全顧客に提供するのではなく、まず数社の既存顧客に試験的に提案する。
そこで、顧客が求めるサービス内容、適正な価格、必要な作業時間などを確認します。
その結果を踏まえてサービスを改善し、徐々に対象を広げていきます。
また、既存の売り切り型事業をすぐにやめる必要もありません。
従来の事業で収益を確保しながら、新しい収益モデルを育てることができます。
ここでも、第7回で取り上げた「小さく始めて、大きく育てる」という考え方が重要になります。
経営者が自社のビジネスモデルを点検する
ビジネスモデルを見直すためには、経営者自身が現在の事業を客観的に評価することが必要です。
例えば、次のような問いを考えてみてください。
1 顧客:現在の顧客は、5年後も同じ商品やサービスを必要としているか
2 提供価値:顧客が自社を選ぶ理由は何か
3 収益構造:売上の大部分が単発取引に依存していないか
4 競争環境:競合企業や新しい技術によって、自社の強みが失われる可能性はないか
5 新たな収益源:既存顧客に継続的に提供できるサービスはないか
6 利益率:現在の販売方法で十分な利益が残っているか
これらの問いに答えることで、現在のビジネスモデルの強みと弱みが見えてきます。
重要なのは、今の事業を否定することではありません。
現在の強みを生かしながら、将来も顧客から選ばれる仕組みに進化させることです。
~変わらないために、変わり続ける~
企業経営では、長年続けてきた方法を変えることに抵抗があるかもしれません。
特に、過去に成功した経験があるほど、その方法を続けたくなるものです。
しかし、市場や顧客が変化しているのに、自社だけが同じ方法を続けていれば、競争力を失う可能性があります。
一方で、変えてはいけないものもあります。
それは、顧客からの信頼、技術力、品質へのこだわり、誠実な対応など、企業が長年培ってきた強みです。
「守るべき強みは守り、変えるべき仕組みは変える」
これが、ビジネスモデルを見直す際の基本姿勢です。
・売り切り型から継続収益型へ。
・価格競争から付加価値による差別化へ。
・従来の販売方法からデジタル技術を活用した新しい顧客接点へ。
こうした変化を積み重ねることが、企業の収益力を強化し、将来の経営リスクを減らすことにつながります。
~事業パートナー九州からのご提案~
会社が強くなれば、事業再生は不要になります。
私たち株式会社事業パートナー九州は、経営改善や事業再生の支援だけでなく、「そもそも経営危機に陥らない会社づくり」を目指したご支援を行っています。
経営改善や事業再生の現場では、単に経費を削減したり、金融機関への返済条件を変更したりするだけでは、根本的な問題を解決できないケースがあります。
そのような場合には、既存事業の収益構造を見直し、顧客への提供価値や販売方法、収益の得方を変えることも必要になります。
当社では、財務分析、事業計画の策定、収益構造の改善、新規事業の検討などを通じて、中小企業の持続的な成長を支援しています。
経営環境が厳しくなってから変革を始めるのではなく、現在の事業が順調なうちに、将来のビジネスモデルを考える。
その積み重ねが、10年後も選ばれる「強い会社」につながると私たちは考えています。
次回は、「リスクに強い会社をつくる ― 想定外に負けない経営とは ―」をテーマに、経営リスクへの備えと、変化に対応できる企業づくりについて考えていきます。
🔹 初回相談(無料)
経営相談を随時受け付けています。
現状整理・経営改善・再生可能性・出口戦略整理から対応しています。
お気軽にご相談ください。
電話は、「093-873-9120」へ。
*不在の場合は携帯電話「080-6423-4793」に転送されます。
つながらない場合は、お手数をおかけしますが、留守電に入れて下さい
![]()
「強い会社をつくる」バックナンバー
![]()