(分岐点シリーズ第4回)売れる会社と売れない会社の決定的な違い
― 企業価値はどこで決まるのか ―
これまでの分岐点シリーズでは、企業が経営判断を迫られる状況について整理してきました。
第1回では「赤字企業の再生可能性」、
第2回では「借入構造」、
第3回では「判断の先送り」をテーマに取り上げました。
「分岐点シリーズ」バックナンバー
(1)「赤字が3期続いた会社は、まだ再生できるのか?」はこちら
(2)「借入が多い会社は、本当に再生できないのか?」はこちら
多くの企業は、赤字や借入の問題を抱えながらも、
「まだ大丈夫だろう」
「もう少し様子を見よう」
と考え、重要な判断を先送りしてしまいます。
しかし、経営の分岐点に立ったとき、経営者の頭に浮かぶのは次の問いです。
「もし会社を売るとしたら、売れるのだろうか」
今回は、この「企業価値」という視点から、会社の将来について考えてみたいと思います。
会社は必ず売れるわけではない
M&Aという言葉が一般化し、「会社は売れるもの」というイメージが広がっています。
実際、後継者問題を背景に、企業の売却は増えています。
しかし現実には、すべての会社が売れるわけではありません。
買い手企業が会社を買う理由は、基本的に次のどちらかです。
1.利益を生む事業を取得する
2.自社の事業と組み合わせて価値を高める
つまり、買い手にとって経済合理性があるかどうかが判断基準になります。
したがって、経営者が「良い会社だ」と思っていても、市場から見た価値は別の場合があります。
売れる会社の特徴
実務的に見ると、M&A市場で評価される会社には共通する特徴があります。
代表的なものは次の通りです。
(1) 安定した営業利益
企業価値の基本は利益です。
一般的な中小企業M&Aでは、営業利益の3〜5年分が一つの目安になることが多いと言われています。
したがって、営業利益が安定している企業は、企業価値を算定しやすくなります。
(2) 特定顧客に依存しすぎていない
売上の大半を1社の取引先に依存している企業は、リスクが高いと評価されます。
買収後にその取引が継続する保証がないからです。
顧客基盤が分散している企業ほど、評価は高くなります。
(3) 経営者個人に依存していない
中小企業では、経営者の個人的な営業力や人脈に依存しているケースが多くあります。
しかしM&Aでは、「社長がいなくても回る会社か」が重要になります。
組織として運営できる企業は、企業価値が高く評価されます。
売れない会社の特徴
一方、売却が難しい企業には次のような特徴があります。
・営業赤字が続いている
・借入が過大である
・経営者個人への依存が強い
・将来の成長ストーリーが描けない
こうした企業の場合、買い手が見つかる可能性は低くなります。
この現実を知ったとき、多くの経営者は次の疑問を持ちます。
「では、自分の会社はどうすればよいのか」
M&Aだけが出口ではない
会社の将来を考えるとき、M&Aは有力な選択肢の一つです。
しかし、すべての企業にとって最適な選択とは限りません。
企業の状況によっては、
・経営改善による再生
・事業の一部売却
・廃業
といった選択肢の方が合理的な場合もあります。
重要なのは、どの選択肢が自社にとって現実的なのかを整理することです。
再生という選択肢
売却が難しい企業であっても、再生の可能性があるケースは少なくありません。
例えば、
・主力事業に競争力がある
・粗利率は維持されている
・不採算部門が明確である
このような企業は、構造改革によって回復する可能性があります。
多くの企業が「売れない=終わり」と考えてしまいますが、実際に再生という選択肢が残っている場合があります。
企業価値を考えることの意味
企業価値を考えることは、必ずしも会社を売ることを意味しません。
むしろ、自社の事業構造を客観的に見直す機会になります。
例えば、
・どの事業が利益を生んでいるのか
・どの顧客が会社を支えているのか
・将来の競争力はどこにあるのか
こうした分析は、再生戦略を考える上でも重要です。
経営判断のための整理
企業の将来を考えるとき、本来比較すべき選択肢は次の3つです。
1.再生(経営改善)
2.M&A(売却)
3.廃業
これらを別々に考えるのではなく、同時に比較することが重要です。
その整理を行うための考え方が、当社が提唱している「出口戦略」です。