中小企業の淘汰が進む
倒産件数が6半期連続で増加
2024年10月8日に「帝国データバンク」から、「全国企業倒産集計・2024年度上半期報」が公表されています。今回、その概要を紹介します。
倒産件数の推移
2024年度上半期の倒産件数は「4,990件」(前年同期:4,208件、18.6%増)で、上半期としては2013年度以来の 5,000件に迫る件数を記録しています。
半期ベースでみると、2021年度下半期(2,978件)以降、6期連続の増加になっています。
集計対象は、「負債1,000万円以上、法的整理による倒産」で、私的整理や廃業・解散等を加えると事業を停止した企業数は更に多いです。
倒産件数の移動平均(12ヶ月平均)
倒産件数の月毎の移動平均を次に示します。これを見ると、コロナ支援の「ゼロゼロ融資」が終了した頃から倒産件数が増加していることがわかります。
公表資料のポイント
(1)業種別
サービス業(26.3%)、小売業(21.0%)、建設業(18.5%)の順。小売業では飲食店の倒産が増えています。
(2)規模別
負債額規模別にみると、「5,000万円未満」の倒産が「3,017件」(前年同期:2,424件、24.5%増)で、件数では全体の「60.5%」を占めています。
資本金規模別では、「個人+1,000万円未満」の倒産が「3,556件」(前年同期:2,868件、24.0%増)発生し、全体の「71.3%」を占めています。中小零細企業の倒産が増加しています。
倒産の要因
公表資料では、倒産の要因として次の4点を挙げています。
(1)物価高倒産
(2)ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産
(3)後継者難倒産
(4)人手不足倒産
(1)物価高倒産
472件(前年同期:383件、23.2%増)発生。「建設業」(127件)、「製造業」(93件)、「小売業」(87件)の順。
物価高倒産の回避として、以前の投稿記事を参考にして下さい。
(2)ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産
コロナ融資が返済できなくて倒産するケースです。360件(前年同期325件、10.8%増)発生。「建設業」(78件)、サービス業(72件)、小売業(64件)の順。
(3)後継者難倒産
239件(前年同期287件、16.7%減)発生。上半期としては3年ぶりに前年同期を下回ったが、依然高水準で推移しています。「建設業」(55件)、「小売業」(44件)、「サービス業」(43件)の順。
(4)人手不足倒産
163件(前年同期135件、20.7%増)発生。「建設業」(55件)、「サービス業」(47件)、「運輸・通信業」(23件)の順。
人手不足倒産については別の投稿記事に「要因を整理」して掲載しています。
今後も生き延びるには
きちんとした経営を行う
帝国データバンクの報告の中に、「粉飾倒産」が急増、年間最多を更新へという内容も掲載されています。
2024年の粉飾決算は9月までで「74件」判明し、集計を開始した2016年以降で同期間(1月~9月)における最多を更新したとのことです。
多くの金融機関が粉飾決算を見抜けなかったケースも多く、金融機関に借入金の返済猶予や追加支援を申し入れた際に発覚する事例が相次いでおり、今後も増えると思われます。
以前に粉飾決算に関する記事を掲載しているので参考にして下さい。
「日本弁護士会」がまとめた「中小企業のコンプライアンス・チェックシート」も紹介しています。
事業ドメインが大事
既存事業では、成熟期あるいは衰退期に入っていて、今後の成長が難しい場合があります。ほとんどの企業は「今後の展開」について不安を持っていると思います。
現在、多くの中小企業が将来に対して不安を抱いている背景には、急速な市場環境の変化や競争の激化、さらには技術革新によるビジネスモデルの変化があります。不安を解消するためには、目の前の問題に対処するだけでなく、長期的な視点で自社の立ち位置を見直し、意味のある事業計画を立てることが重要です。事業計画を立案するための前段階として「事業ドメイン」の再設定が必要です。
「事業ドメイン」とは、企業が「何を(商品・サービス)」「誰に(市場・顧客)」「どのように(生産や販売の展開方法)」を提供するのかを定義するものであり、企業活動の基盤となるものです。しかし、市場の変化や顧客のニーズの多様化に伴い、一度設定した事業ドメインが陳腐化(時代遅れ)になることもあります。これを放置すると、企業は競争力が低下し、経営の持続が困難になるリスクが生じます。
中小企業が将来の不安を解消し、持続的に成長するためには、まずは自社の「事業ドメイン」を再設定することが重要です。そして、この事業ドメインの再設定を基盤とし、実効性のある事業計画を立てることで、経営の安定性を向上させ、発展させることが可能になります。