廃業(6)廃業の前に考えたい「第三の選択肢」
事業譲渡・M&Aという手段
近年、全国で「後継者がいない」「赤字が続く」「体調的に続けられない」などの理由で廃業を検討する中小企業が急増しています。
しかし、その多くがまだ“収益がある状態”で廃業を選んでいるのが現実です。つまり、「もったいない廃業」です。
実は、廃業を選ぶ前に検討すべき“第三の選択肢”があります。それが 「事業譲渡」や「M&A(会社の売却・譲渡)」 という方法です。
会社を畳むのではなく、別の経営者に引き継いでもらうことで、従業員・取引先・地域の事業を守りながら、自身も次のステージへ進むことができます。
「廃業」か「譲渡」か ― 運命を分ける最初の分岐点
廃業とは、会社の活動を完全に止め、資産を処分して債務を清算すること。
一方、事業譲渡やM&Aは「経営者が交代し、事業が存続する」仕組みです。
見た目は似ていますが、結果はまったく異なります。
廃業では、資産売却によって得られるお金は一時的で、従業員の雇用や取引関係は消滅します。
一方でM&Aでは、取引先・ブランド・技術・人材・許認可など、会社が培ってきた無形の価値をそのまま次世代に引き継ぐことができます。
つまり、M&Aは「経営の終わり」ではなく、「経営のバトンタッチ」なのです。
なぜ今、M&Aが「廃業の代替策」として注目されているのか
中小企業庁の調査では、毎年約5万社が黒字のまま廃業しているといわれます。
その背景には、経営者の高齢化と後継者不足があります。
また、コロナ禍を経て需要構造が変化し、次の成長戦略を描けずに悩む企業も増えました。
しかし一方で、地方では「良い取引先を求めている会社」「人材を確保したい企業」が多数あります。
つまり、売り手企業の“廃業危機”と、買い手企業の“成長意欲”が一致している時代なのです。
M&Aは、こうした企業同士をマッチングする“最適な出口戦略”として注目されています。
国も「事業承継・引継ぎ支援センター」や「中小M&A推進計画」などを通じて積極的に後押ししています。
M&A・事業譲渡の3つの方法
M&Aと一口に言っても、実際には複数のスキームがあります。
会社の状況に応じて、どの形が最適かを判断します。
1.株式譲渡(会社ごと引き継ぐ)
経営者が保有する株式を新しい経営者(買い手)に譲渡し、会社の権利・義務をすべて引き継ぐ方法。
最も一般的で、許認可や契約関係をそのまま維持できるため、手続きがスムーズです。
2.事業譲渡(事業単位で譲る)
会社全体ではなく、主要事業や店舗・設備・人材などを選別して譲渡する方法。
不採算部門を切り離して事業再編を行う場合にも活用されます。
一方で、契約の再締結や登記変更など手続きがやや複雑です。
3.会社分割(事業を分けて新会社に承継)
自社の一部事業を分社化し、子会社または他社へ譲渡する方法。
税制上のメリットがあり、資産や許認可をスムーズに移せることが特徴です。
株式会社事業パートナー九州では、これら3つのスキームを組み合わせ、企業の状況に合わせた**「最適な譲渡設計」**を提案しています。
どんな会社でも譲渡できるのか?
「うちの会社は小さいから買ってもらえない」と諦める経営者が少なくありません。
しかし実際には、譲渡成立の多くは売上1億円未満・従業員10人以下の企業です。
買い手企業が注目しているのは、**「利益」よりも「資産」や「人材」「顧客基盤」**です。
・特定地域で信頼される長年の顧客ネットワーク
・熟練従業員の技術・ノウハウ
・建設業・製造業などの営業許可
・黒字でなくても、堅実な経営履歴
これらは買い手にとって“即戦力の価値”です。特に地方では、人材・取引ルート・許認可をまとめて引き継げることが魅力となります。したがって、「小さな会社」ほどニーズが高い分野も多いのです。
M&Aを成功させる5つのステップ
M&Aを成功させるには、次の5つのステップを計画的に進めることが大切です。
1 現状の棚卸し:財務状況、資産、負債、契約、従業員などを整理。
2 会社の価値を見える化:税理士や専門家と連携し、株価・事業価値を算定。
3 買い手候補の選定:同業者・取引先・外部企業などから信頼できる相手を探す。
4 条件交渉・基本合意:譲渡価格、雇用継続、契約引継ぎの条件を明文化。
5 最終契約・引継ぎ:弁護士・行政書士が契約書を作成し、法務・登記を完了。
これらの工程を専門家と進めることで、トラブルを防ぎ、公正で円滑な取引が可能になります。
交渉のポイントと注意点
1.「金額」よりも「想い」を重視
M&A交渉では価格が話題になりがちですが、買い手にとって重要なのは**「理念や人の相性」**です。
経営者の想いに共感する相手と出会えれば、従業員も安心して働き続けられます。
単に高く売るのではなく、「誰に託すか」を最優先に考えることが大切です。
2.情報管理と守秘義務
M&Aは情報漏洩が最大のリスクです。
従業員や取引先に誤解を与えないよう、正式契約までは慎重な情報管理が求められます。
秘密保持契約(NDA)を締結し、段階的に情報を開示するのが基本です。
3.税務・法務の整理
譲渡所得税、消費税、登録免許税などの税務処理を怠ると、譲渡益が目減りすることもあります。
また、許認可の引継ぎが必要な業種(建設業・飲食業・介護事業など)では、事前協議が欠かせません。
専門家と連携して進めることが、トラブル防止の鍵となります。
M&Aによる「再スタート」という選択
廃業を考えていた経営者が、M&Aを通じて第二の人生を歩み出す例は少なくありません。
・製造業A社(北九州市)
→ 廃業予定だったが、取引先が買収を希望。従業員は全員雇用継続、経営者は顧問として残留。
・飲食業B社(福岡市)
→ 老舗中華料理店を事業譲渡し、オーナーは新規事業で再挑戦。店舗ブランドは地域に残る。
・建設業C社(大分県)
→ 許認可を持つため同業他社が取得。経営者は引退後も技術顧問として活躍。
このように、M&Aは「会社を残しながら自分も守る」選択肢です。
経営者が健康なうちに準備を進めれば、希望する形で次の世代にバトンを渡すことができます。
(株)事業パートナー九州の支援体制
当社は、中小企業庁のM&A支援機関として登録されており、
経営者の想いを第一に、「廃業」か「譲渡」かを見極める無料相談 を行っています。
支援内容は以下の通りです:
・企業価値評価・株価算定
・M&Aスキーム設計(株式譲渡・事業譲渡・会社分割)
・買い手企業の探索・マッチング
・条件交渉・基本合意書・最終契約書作成
・廃業・清算手続きとの連携支援
私たちが目指すのは、「譲って終わるM&A」ではなく、「託して続くM&A」 です。経営者の想いを形にし、従業員・地域・取引先を守るための最適な出口戦略を、共に考えます。
終わらせず、つなぐという発想
廃業を検討する経営者の多くは、「誰にも迷惑をかけたくない」と考えています。
しかし、廃業はすべてをゼロに戻す選択です。M&Aはその逆で、**「ゼロにせず、未来へ残す」**という選択です。
事業を譲ることは、経営者の努力の証を次の世代に託す行為。それは“経営の終わり”ではなく、“事業の継続”であり、“人生の再生”でもあります。
(株)事業パートナー九州は、「会社を閉じる前に、もう一度考えてみる」、その一歩を踏み出す経営者の味方です。
廃業という決断の前に、ぜひ「第三の選択肢」を検討してみてください。
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