廃業(7)高齢経営者の“終活”としての廃業準備 - 事業パートナー九州 北九州市(福岡県)経営コンサルタント

廃業(7)高齢経営者の“終活”としての廃業準備

中小企業の経営者の平均年齢はすでに60歳を超え、70代・80代でも現役で会社を切り盛りする方が増えています。

経営者が元気なうちは問題ありませんが、突然の体調不良や家族事情など、予期せぬ出来事が起きたときに「会社をどうするか」の準備ができていないケースが非常に多く見られます。

廃業は、単に「会社を閉じる」という事務作業ではなく、経営者の人生を整理し、次のステージに向かう「終活」の一部でもあります。

ここでは、経営者が後悔しない“円満な幕引き”を迎えるために、今からできる実践的な廃業準備の進め方を整理します。

なぜ「廃業準備=終活」なのか

多くの経営者は、「まだやれる」「後継者がいなくても何とかなる」と考えがちです。

しかし、後継者問題を放置したまま体調を崩したり、突然の事故で意思決定ができなくなったりすると、会社も家族も混乱します。

実際に、経営者が急逝してしまい、

・会社の預金口座が凍結され資金繰りが止まった

・在庫や設備の処分が家族ではできなかった

・銀行保証人だった家族が突然債務を背負った

という事例は少なくありません。

こうしたトラブルを防ぐためには、「まだ元気なうちに」廃業や承継の選択肢を考え、計画的に整理しておくことが必要です。

つまり廃業準備とは、経営者本人の“人生の終活”であり、会社と家族を守るための行動なのです。

廃業準備の4つの整理ポイント

株式会社事業パートナー九州では、廃業準備を進める際に「4つの整理」を提案しています。

これは、どんな業種・規模の会社にも共通する重要な視点です。

1.【財務の整理】

最初に行うべきは、財務の“見える化”です。

会社の資産・負債・借入・保証・在庫などを一覧化し、「会社の健康状態」を客観的に把握します。

特に注意すべきは次の3点です。

・経営者個人の保証債務(銀行・リース・連帯保証など)

・会社資産と個人資産の混在(不動産・車両・口座)

・補助金や助成金の残存期間・返還義務の確認

これらを明確にしておけば、万一のときに家族や関係者が迷うことなく対応できます。

また、廃業時に債務が残る場合には、「経営者保証ガイドライン」に基づいて免除・減額を受けられるケースもあるため、早期の専門家相談が有効です。

2.【人の整理】

経営者の終活において最も難しいのは、「人への対応」です。

従業員、取引先、家族、それぞれに伝えるべきタイミングと方法があります。

・従業員

 会社の今後の見通しを率直に説明し、雇用継続の可能性や再就職支援を検討します。廃業時に支払う退職金や未払い残業代の準備も早めに行いましょう。

・取引先・顧客

 「急な廃業」で迷惑をかけないためには、少なくとも2か月前の事前通知が望ましいです。特に建設業や製造業では、受注済み案件の引継ぎ先を探しておくと信頼を保てます。

・家族

 会社の財務状況や借入関係を共有しておくことが重要です。「知らなかった」ことで遺産相続や保証問題が発生するケースが多いため、**“家族会議型の終活”**が有効です。

3.【契約の整理】

リース・賃貸・保険・販売契約など、事業に関わる契約書を棚卸ししておきましょう。

特に注意すべきは「自動更新型契約」と「違約金条項」です。

・退去や解約に数か月前の予告期間が必要なケース

・契約期間中に解約すると違約金が発生するケース

・名義変更が必要な契約(電話回線・ドメイン・保険など)

これらをリスト化し、廃業予定時期から逆算してスケジュールを立てることが大切です。

契約解除の通知テンプレートを整えておくと、実際の手続きがスムーズに進みます。

4.【想いの整理】

会社を長年続けてきた経営者にとって、「終わりを意識する」ことは大きな精神的負担です。

だからこそ、“心の整理”も廃業準備の一部と考える必要があります。

これまでの歩みをまとめた「経営者の記録ノート」や「会社の歴史年表」を作成するのも良い方法です。

さらに、「後継者への手紙」や「従業員への感謝文」など、形に残すメッセージも効果的です。

人は、感謝の言葉を伝えることで気持ちを整理できます。

こうした「想いの整理」を行うことで、廃業が“終わり”ではなく、“人生の区切り”として納得できるようになります。

早めに準備するメリット

廃業準備を「時間をかけて」行う最大のメリットは、選択肢が広がることです。

・後継者候補やM&Aの買い手を探す時間が確保できる

・廃業コストを分割で準備できる

・契約・補助金などの期限に余裕をもって対応できる

・感情的な決断を避け、冷静な判断ができる

逆に、廃業を「突然決める」と、資産売却が急ぎとなり、損失が出ることが多くなります。早期準備は、会社と経営者の“名誉ある撤退”を実現するための条件とも言えます。

専門家との連携が「安心な終活」を支える

経営者が自力で廃業準備を進めることはできますが、税務・法務・労務・金融など多岐にわたる手続きを一人で行うのは負担が大きいのが実情です。

株式会社事業パートナー九州では、次のような専門家ネットワークを活用しながら、経営者の終活を総合的に支援しています。

分野主な支援内容
行政書士廃業届・許認可返納・契約書作成・官公庁対応
税理士清算決算・廃業年度の税務申告・資産評価
社労士従業員退職手続き・社会保険・雇用保険整理
弁護士債務整理・保証解除・相続・遺言書作成
M&Aアドバイザー事業譲渡・承継・買い手企業とのマッチング

こうした連携により、経営者が「精神的にも安心して会社を整理できる環境」を整えます。

特に、健康面や家族構成の変化を考慮した個別プランニングを行うことで、“経営者の終活”を支える体制を構築しています。

「終活型廃業準備」のすすめ

株式会社事業パートナー九州では、次の3ステップで“終活型廃業準備”を提案しています。

1 棚卸し(見える化)

 財務・契約・人・資産を一覧表に整理。課題を明確化。

2 計画(設計)

 「いつ」「どの順で」「誰に任せるか」を決め、廃業シナリオを作成。

3 行動(実行)

 関係者への説明、手続き、資産処理、感謝の発信までを伴走支援。

このステップを1年単位で進めることで、経営者が心に余裕を持ちながら会社の最終章を整えることができます。

廃業の準備は「再スタートの準備」でもある

廃業の準備を始めると、多くの経営者が「やめる」ことよりも、「この先どう生きるか」を考え始めます。

実際、廃業を経て地域貢献活動や新規事業に取り組む方も多く、廃業準備は“人生の再設計”の機会になります。

終活という言葉には「終わる」という印象がありますが、正確には「次へつなぐ活動」です。

会社を畳んでも、経営者の知識・経験・人脈は消えることはありません。

むしろ、整理整頓を経たことで、新たな挑戦に向けた余白が生まれるのです。

まとめ ― 「引き際」も経営の一部

・廃業準備は、経営者の“終活”であり、“会社と家族を守るための行動”

・財務・人・契約・想いの4つを整理することで混乱を防げる

・早期準備は、後悔しない選択肢を残す最大のチャンス

・専門家との連携で、精神的にも実務的にも安心な撤退を実現

・終活は“終わり”ではなく、“新しい人生への第一歩”

経営を続ける勇気と同じように、きちんと終える勇気もまた、経営者に求められる力です。

株式会社事業パートナー九州は、その決断を支える伴走者として、最後まで経営者の想いに寄り添います。

<廃業のバックナンバー>

(1)「廃業は悪ではない」はこちら

(2)「廃業を考えたときに確認すべきポイント」はこちら

(3)「自主廃業と法的整理の違い」はこちら

(4)「廃業にかかるお金と手続き」はこちら

(5)「従業員・取引先に迷惑をかけない進め方」はこちら

(6)「廃業の前に考えたい第三の選択肢」はこちら

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