M&Aトラブル(6)売却額・条件の認識のズレ
「売却額=手取り額じゃなかった?」
金額の誤解によるM&A後悔を防ぐ
「想定よりも手元に残るお金が少なかった……」M&A後、売手経営者が口にするこの言葉には、よくある“誤解”が潜んでいます。
契約書に記載された売却価格がすべて受け取れるわけではない――この基本を知らないまま話が進んでしまうと、後悔が残るM&Aになりかねません。
私たちは、売手に寄り添うM&Aアドバイザー(セルサイド)として、「本当に手元に残る金額の見える化」を重要視しています。
■ なぜ「手取り額」が想定とずれるのか?
一言で言えば、「売却価格=受取金額」とは限らないからです。
以下のような要因が、実際の手取り額を大きく左右します:
・税金(譲渡所得税・住民税・法人税など)
・売却時に清算すべき簿外債務や未払金
・リース・保証金などの残債処理
・仲介手数料、専門家報酬
・アーンアウト(業績連動条件)の影響
・売買スキーム(株式譲渡or事業譲渡)による違い
金額のインパクトが大きいのは税金や債務整理費用ですが、アーンアウト型の契約によって実質的に受け取れる金額が変動するケースも非常に多く見られます。
■ よくある誤解とトラブル事例
(1)売却対価=そのまま振込まれると思っていた
→ 税金・報酬・精算項目が引かれた後、想定よりも2~3割以上少なくなることも。
(2)アーンアウト条件が曖昧だった
→ 成約時に全額を受け取れず、「業績が達成されたら追加支払い」としていたが、買手の判断で未達にされ支払われなかった。
(3)債務や未払い費用の見落とし
→ 財務DD後に想定外の簿外債務が発覚し、その分を売却対価から減額されることに。
■ 対応策:「金額の“内訳”を見える化する」
M&Aの交渉初期から、「売却後、実際にいくら手元に残るか」を可視化しておくことが、最大の防止策です。
ステップ1:税金・経費の概算を事前に試算する
専門家(税理士・会計士)と連携し、譲渡所得税や住民税、法人税を含めた手取り額を試算。
ステップ2:アーンアウト等の条件付き金額は別枠で管理
受取が確定していない金額を「将来収入の可能性」として明確に分けて考える。
ステップ3:スキームの違いを理解する
株式譲渡と事業譲渡では、税務上の扱いや取引構造が大きく異なります。税負担や譲渡資産の取り扱いも違うため、必ず専門家の説明を受けましょう。
■ 売手の満足度は「金額の透明性」で決まる
M&Aにおいて金額は非常に大切ですが、それ以上に大事なのは「納得感」です。
想定通り、あるいは想定以上の金額が手元に残ったという実感が、売手にとっての満足度を大きく左右します。
そのためには、「どんな費用が差し引かれるのか?」「税金はどれくらいかかるのか?」「追加条件はあるのか?」を契約前から丁寧に説明するプロのサポートが不可欠です。
私たちは、売手企業に寄り添うアドバイザーとして、数字だけでなく納得を提供するM&Aをお手伝いしています。
■ ご相談ください
「M&Aでいくら手元に残るのか、正直よくわからない」「アーンアウト条件が不安」
そんなお悩みをお持ちの経営者様は、ぜひ当社にご相談ください。
税務・財務・契約面から、実質的な手取り額を「見える化」し、後悔のないM&Aを全力でサポートいたします。
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