M&Aトラブル(7)引継ぎ不備による混乱・業務停止
M&A後に“業務停止”?引継ぎ不備による混乱を防ぐために
M&Aが無事に成約し、晴れて新たな体制がスタート――。
…のはずが、翌日から取引先への連絡が滞り、社内システムにログインできず、業務がまったく回らない――
そんな「M&A後の引継ぎトラブル」が、現実に起きているのをご存じでしょうか。
私たちは、売手企業に寄り添うM&Aアドバイザーとして、契約書の“その先”にある実務面の引継ぎまで、丁寧に設計することの重要性を何度も実感してきました。
■ なぜ「引継ぎ不備」が起きるのか?
M&Aの契約そのものは、あくまで株式や資産の譲渡について定めたものです。
しかし、実際に事業が回るかどうかは、以下のような“現場業務”がどれだけ適切に引き継がれるかにかかっています。
よくある引継ぎ不備の例
・社内システムや会計ソフトのID・パスワードが共有されていない
・主要取引先への担当者紹介や業務フローの説明がなされていない
・業務マニュアルがなく、新経営陣がオペレーションを理解できない
・銀行との取引手続きや印鑑の移管が完了していない
・旧社長がM&A直後に退任し、誰も業務を把握していない
これらの問題は、小さなことに見えても、事業の信用・収益・組織全体の士気に深刻な影響を与えます。
■ 実際に起きたトラブル事例
・経理担当者が退職しており、買手が請求書の出し方もわからず、入金が数週間遅延
・メイン取引先への営業ルートが属人化していたため、買手が関係を築けず契約が停止
・IT企業のM&A後、システムのログイン情報が不明で、開発環境の復旧に1か月かかった
・銀行口座の名義変更が間に合わず、支払いができず信用失墜
■ 引継ぎトラブルを防ぐための対応策
(1) 「実務引継ぎリスト」の作成
契約書とは別に、「何を誰に、いつまでに引き継ぐか」をリスト化したドキュメントを用意します。
以下のような項目を網羅的に記載することがポイントです:
・各業務の担当者名と引継ぎ先
・ID・パスワード・ライセンス情報
・契約書・取引条件・納品ルール
・業務マニュアル・スケジュール表
・銀行・税理士・行政手続き関連
(2) 旧経営者の「引継ぎ期間」を契約で定める
M&A契約書に、「クロージング後◯ヶ月間は業務引継ぎに協力する」といった条項を入れておくことで、売手・買手双方が安心して準備できます。
(3) 第三者を交えたトランジション支援
中小企業では属人化が進んでいるため、M&A後の一定期間、外部支援者(顧問・FA・実務スタッフ)が伴走することも有効です。
■ M&A成功のカギは「その後」にある
M&Aの成否は、契約が締結された時点では決まりません。
本当の意味での成功とは、「引継ぎがスムーズに行われ、事業が継続・成長すること」です。
そのためには、売手・買手だけでなく、周囲の関係者(従業員、取引先、専門家)も巻き込んだ丁寧な引継ぎ設計が必要です。
私たちは、契約書面だけでなく、引継ぎや運営体制づくりまで見据えたM&A支援を行っています。
■ ご相談ください
「M&A後の引継ぎが不安」
「実務的な準備やフォロー体制も含めて相談したい」――
そうしたご要望をお持ちの経営者様は、ぜひ当社にご相談ください。
売手に寄り添うM&Aアドバイザーとして、“売って終わり”ではなく“つなぐ”M&Aを全力でサポートいたします。