M&Aトラブル(8)M&Aのリスク管理:表明保証と買手DD - 事業パートナー九州 北九州市(福岡県)経営コンサルタント

M&Aトラブル(8)M&Aのリスク管理:表明保証と買手DD

これまで、M&Aのトラブルに関して(1)~(7)のケースについて紹介してきました。

*各トラブルについては、最後にバックナンバーとして記載

今回は、M&Aのリスク管理の中で重要な「表明保証」と「買手DD:デューデリジェンス」の関係について紹介します。

M&Aにおいて「売手の表明保証」と「買手DD:デューデリジェンス」は、契約の信頼性と責任範囲を形成する両輪のような存在です。

以下にそれぞれの位置づけと、両者の関係性、さらには買手がDDを実施していない場合の「表明保証違反」の立証リスクについて考察します。

 1. 表明保証の位置づけ(売手側)

役 割

表明保証とは、売手が契約締結時点において、

・「自社の財務情報は正確である」

・「訴訟リスクは存在しない」

・「許認可は有効である」

などと、事実関係について「真実かつ正確である」と保証する条項です。

目 的

・買手が安心して買収判断を下せるようにする

・万一虚偽や不実表示があれば、損害賠償等を請求できる根拠になる

=売手に一定の責任を負わせる「事後的な保険機能」

 2. DD:デューデリジェンスの位置づけ(買手側)

役 割

買手がM&Aの対象会社について、法務・財務・税務・労務・IT・ビジネス面から多角的に調査を行い、

・潜在リスクの有無を洗い出す

・表明保証でカバーできない「見えないリスク」を先に把握する

目 的

・リスクの把握・対策

・買収価格の調整根拠

・契約条件(表明保証の文言)の形成材料

=買手による「事前的なリスク回避装置」

3. 両者の関係:互いを補完する存在

観点表明保証(売手)デューデリジェンス(買手)
タイミング契約締結時に提供契約前または交渉段階で実施
対象法務・財務・契約等の開示表明内容の真偽・リスクの深掘り
機能保証・責任担保事前検証・価格調整材料
補完性DDで発見できなかったリスクに備える表明保証違反の事前回避・検証

このように、表明保証とDDは一方が他方を不要にするものではなく、リスク分散と責任の明確化のために併用されるべきものです。

 4. 表明保証違反とDD未実施の関係

「表明保証で明記でDDを未実施」の場合の問題点

買手が適切なデューデリジェンスを行わずに契約し、後になってリスク(例:簿外債務、訴訟、許認可の不備など)が発覚した場合、表明保証違反を理由に損害賠償を請求しても、以下のような障害が生じる可能性があります。

 ケース別に考察:

▶ ケース1:表明保証で明記 → 買手がDDを怠った

・裁判等では「買手側にも調査責任(善管注意義務)があったのに、怠っていた」と判断される可能性あり

・「信頼していた」というだけでは、損害賠償が一部しか認められないことも

 表明保証違反を問えるが、損害賠償の範囲や責任割合が限定されるリスクあり

▶ ケース2:DD実施済・売手の不実表示があった

・買手がDDを尽くした上で発見できなかった情報が、虚偽であることが判明した場合は、売手の責任が問われやすい

表明保証違反の立証がスムーズで、買手保護の判断が下されやすい

 5. 実務的な対応策

売手側

・表明保証の内容を明確にし、開示資料で例外事項(Disclosure)を誠実に記載

・買手にDDの機会を適切に提供する(=後から「知らなかった」と言わせない)

買手側

・必ず適切なスコープでデューデリジェンスを実施

・発見されたリスクは表明保証に反映させる or 契約条件で担保(補償・価格調整など)

まとめ:表明保証とDDは「セット」でリスク管理

M&Aにおける表明保証は、契約の中核をなす非常に重要な条項ですが、それを活かすも殺すもDD次第です。

・DDは「攻め」の調査

・表明保証は「守り」の責任担保

どちらか一方が欠けると、後の紛争リスクが格段に高まります。

したがって、M&Aを進める際には、売手・買手ともにこの2つの関係性を理解し、リスクに備えた設計が不可欠です。

M&Aは、「売手の誠実さ」と「買手の調査力」があって初めて成功します。

表明保証とデューデリジェンスは、その両者の信頼関係を契約で担保する仕組みです。

私たちは、売手に寄り添うセルサイドアドバイザーとして、買手とのトラブルを未然に防ぐため、表明保証と情報開示の設計支援も行っております。

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