廃業(10)「ソフトランディング型廃業」の進め方
経営者・従業員・取引先を守る“穏やかな幕引き”の実務
廃業というと「ネガティブな終わり」を連想しがちですが、実際には 円満に、穏やかに、関係者に迷惑をかけずに会社を畳む方法 があります。
それが 「ソフトランディング型廃業」 です。
ソフトランディングとは、
・従業員の生活を守り、
・取引先への混乱を最小限にし、
・金融機関との関係を壊さず、
・経営者の個人生活を損なわず、
・社会的信用を可能な限り維持したまま
会社を静かに締めくくる方法です。
倒産や突然の営業停止とは対照的に、準備と計画によって“きれいに幕を引く”ための実務的アプローチであり、当社でも、最も相談が多い分野です。
本記事では、この「ソフトランディング型廃業」を成功させるための具体的な進め方を、ステップごとに詳しく解説します。
ソフトランディング型廃業とは何か
無理をせず、迷惑をかけず、未来につなぐ撤退方法
“ソフトランディング”の反対語は“ハードランディング”です。
■ ハードランディングとは
・資金が尽きて突然廃業
・給料未払い
・取引先への連絡が間に合わない
・SNSで炎上
・経営者は疲弊し、精神的に追い詰められる
つまり「準備不足で突発的に倒れる廃業」です。
これに対しソフトランディングは、事前準備・適切な順序・ステークホルダー配慮により、混乱・負担・損害を可能な限り抑える廃業です。
経営者の名誉や未来も守ることができるため、今では中小企業の廃業の“主流の形”となりつつあります。
ソフトランディングが重要視される理由
廃業は「終わり」ではなく「次のステージ」だから
ソフトランディングには、次のような重要なメリットがあります。
(1)従業員の生活を守る
退職時期・再就職支援・退職金などを計画的に準備できる。
(2)取引先との信頼を崩さない
突然の取引停止にならず、円満に関係を維持できる。
(3)金融機関からの評価を落とさない
計画的な撤退は、経営者の誠実さとして高く評価される。
(4)経営者の次のステップに悪影響が出ない
再就職、再チャレンジ、顧問業など、未来への影響を小さくできる。
(5)家族への負担を軽減できる
混乱を避け、精神的ストレスを最小限にする。
つまり、ソフトランディングとは「経営者の次の人生を守る廃業」 と言えます。
成功するソフトランディングの大原則
カギは「早期準備」と「順番」と「透明性」
ソフトランディングで最重要なのは以下の3点です。
(1)早期に動くこと
廃業は準備に3〜6ヶ月は必要です。
遅れるほど選択肢が減り、ソフトランディングが難しくなります。
(2)進める“順番”を間違えないこと
廃業は順番を誤るとトラブルが発生します。
正しい順序とは…
1 資金繰りの把握
2 関係者の影響度を整理
3 契約と許認可の確認
4 従業員説明
5 在庫・資産処分
6 取引先説明
7 金融機関説明
8 解散・清算手続き
この順番は非常に重要で、株式会社事業パートナー九州ではこの工程を“廃業管理フロー”として体系化しています。
(3)関係者への透明性
隠し事が多いほど誤解が生まれ、ソフトランディングは失敗します。
ステークホルダーへの誠実な説明と、適切な期待値のコントロールが不可欠です。
ソフトランディングの実務ステップ
経営者が迷わないための具体的プロセス
ここからは、実際にソフトランディングを成功させるためのステップを細かく解説します。
【STEP1】自社の現状を冷静に把握する
感情ではなく、事実にもとづいて判断する
最初に行うべきは、以下の「現状把握チェック」です。
現状把握ポイント
・当座資金の残高
・毎月の固定費
・借入返済額と返済予定
・売掛金・買掛金の状況
・契約書の一覧
・許認可の確認
・在庫・資産の整理
・社長の健康状態と家族の意向
この段階で、「あと何ヶ月、資金が持つか」が明確になります。これがソフトランディングの生命線です。
【STEP2】廃業方針を決める
「自主廃業」か「事業譲渡」か「第二会社方式」か
ソフトランディングでは、いきなり全廃ではなく、“最も負担の少ない畳み方”を選ぶことができます。
選択肢の例
・自主廃業(清算)
・事業譲渡(M&A)
・商品や設備のみ売却
・第二会社方式(新会社へ事業を移す)
・部分撤退(赤字部門の廃止)
これらは、専門家の分析で初めて見えてくる選択肢です。
株式会社事業パートナー九州では、廃業・譲渡・第二会社方式のシミュレーションを比較し、最も“傷が小さい”方法を提示します。
【STEP3】従業員対応を設計する
ソフトランディングの核心は「人を守ること」
もっとも重要なのが従業員対応です。
伝えるタイミング
・遅すぎると混乱する
・早すぎると離職が発生する
このバランスが極めて難しい部分です。
伝える内容
・廃業の理由
・最終出勤日
・退職金(有給消化)
・再就職支援
・社保・雇用保険の説明
ここを丁寧に行うことで、従業員との信頼を保ち、最後まで協力を得ることができます。
【STEP4】在庫・設備・契約の整理
売る・捨てる・終わらせるの段取りを決める
ソフトランディングでは、資産処分を“前倒し”で行うことが重要です。
在庫
・取引先に引き取ってもらう
・セールで現金化
・返品交渉
設備
・中古市場で売却
・リース機器は早期解約の条件確認
契約
・賃貸契約
・メンテナンス契約
・IT契約(サーバー・ドメイン)
これらの契約解除には“予告期間”があるため、早めに確認しておく必要があります。
【STEP5】取引先・金融機関への説明
信頼を守るための「説明の順序」が重要
取引先と金融機関への説明は、ソフトランディングの大きな山場です。
説明の原則
・事前に文書を準備
・タイミングを合わせる
・嘘をつかない
・誠意をもって説明する
金融機関は「突然の廃業連絡」をもっとも嫌います。しかし正しい情報を提供すれば、意外と協力的です。
株式会社事業パートナー九州では、説明資料の作成から同席まで一貫してサポートしています。
【STEP6】解散・清算手続きを行う
正式に会社を畳む“仕上げの工程”
最終的に行うのが、
・解散決議
・解散登記
・清算人の選任
・官報公告
・清算結了
という法務手続きです。
また、税務署・年金事務所・労基署への手続きも行います。
ソフトランディングを成功させる3つのポイント
(1) “感情”より“事実”で判断する
冷静な数字と工程こそ、成功の条件。
(2)一人で抱え込まない
経営者の孤独は、廃業の失敗で最も大きなリスクです。
(3)専門家の伴走を活用する
廃業には「順番」「法律」「交渉」「文書」「説明」が必要で、素人判断は危険です。
株式会社事業パートナー九州の役割
経営者が“後悔しない幕引き”を実現するために
当社が提供する廃業支援は、単なる清算手続きではありません。
提供サービスの例
・廃業計画書の作成
・従業員説明の設計
・取引先・金融機関の連絡文書作成
・債務整理の戦略設計
・在庫・設備処分のアドバイス
・許認可返納・行政書類サポート
・廃業後の人生設計の伴走
・M&Aによる雇用維持提案
経営者の不安を取り除き、「最小の負担で最大の信頼を守る」ソフトランディングを実現します。
廃業は“終わり”ではなく“未来への準備”
・ソフトランディングは、穏やかに会社を畳む方法
・早期準備・正しい順番・透明性が鍵
・従業員・取引先・金融機関への配慮が重要
・事前の計画で損失が大幅に減る
・専門家の伴走が成功を大きく左右する
「どのように終わるか」が、経営者の未来を決める
株式会社事業パートナー九州は、経営者が「後悔しない廃業」を実現するために、最初の相談から最後の手続きまで徹底して伴走します。
<廃業のバックナンバー>