松本社長の経営に役立つ話(36)担保と保証人の効果的な使い分け
連載として、当社「(株)事業パートナー九州」の連携先の「(株)事業パートナーの松本光輝社長」のコラムを紹介しています。今回は第36回目です。経営のヒントとしてご活用下さい。
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銀行融資における担保と保証人の効果的な使い分け
こんにちは。株式会社事業パートナーの松本光輝です。
企業経営において、銀行融資は資金調達の重要な手段ですが、その際に「担保」や「保証人」を求められることがあります。どちらを選ぶべきか迷う経営者も多いのではないでしょうか。今回は、その選び方の考え方とポイントを整理してお伝えします。
1. 基本方針:求められたら「保証人」を選ぶ
銀行から「担保」か「保証人」のどちらかを選ぶよう求められた場合、基本的には「保証人」を選択する方が有利です。これは資産の流動性や経営の自由度を確保する上で、大きな意味があります。
担保を設定してしまうと、その資産は借入金の返済が完了するまで拘束され、売却や再担保設定が難しくなります。逆に保証人であれば、自身の資産を自由に処分できる余地が残ります。
2. 担保の特徴とデメリット
担保として最も多いのは「自宅」です。次に工場や倉庫、社屋といった事業用不動産が対象になります。
担保の特徴は以下の通りです。
・返済が完了するまで解除されない
一度設定すると、借入残高がなくなるまで基本的に外れません。
・資産の流動性が低下する
売却や他の融資のための担保設定が制限され、経営の柔軟性が損なわれます。
・例外的に売却できる場合もある
民法第379条「抵当権消滅請求」により、市場価格が借入残高を下回る場合は、その価格での売却が可能ですが、実務的には銀行との交渉が必要になります。
担保は銀行にとって確実な回収手段であるため、融資条件が有利になる場合もありますが、経営資産を長期間拘束するリスクは軽視できません。
3. 保証人の特徴とメリット
一方の保証人については、2013年に「経営者保証に関するガイドライン」が策定され、銀行は原則として経営者保証を求めない方向に転換しました。ただし、債務者の信用力が低い場合や、返済能力に不安がある場合には、例外的に保証人を求められることがあります。
保証人の特徴は次の通りです。
・資産の自由度が高い
融資時に資産を保有していても、その後自由に売却や運用が可能です。
・担保のように資産が直接拘束されない
返済不能時の責任は生じますが、資産の活用制限はありません。
・与信が悪い場合にのみ求められる傾向
保証人が必要と言われた場合は、自社の信用状態の改善も並行して検討すべきです。
4. 実務での選択と交渉のポイント
担保か保証人かを迫られたときは、単に「どちらが楽か」ではなく、今後の資金繰りや経営戦略への影響を総合的に判断することが重要です。
・資産を守りたい場合 → 保証人を選択し、経営の自由度を確保する。
・融資条件を優先する場合 → 担保を設定することで金利や融資額の条件が有利になる場合もある。
・交渉の余地を探る → 融資条件や担保範囲の縮小、期間短縮などを銀行と話し合う。
経営者にとって重要なのは、条件を丸呑みするのではなく、交渉の中で有利な条件を引き出すことです。
5. まとめ
銀行融資において担保と保証人のいずれかを選ぶ場面では、原則として「保証人」を選択する方が、経営資産の自由度を保つという意味で有利です。ただし、状況や目的によっては担保を設定した方がよい場合もあり、判断には戦略が必要です。
当社では、単なる融資サポートだけでなく、金融機関の対応・交渉方法や、担保・保証人の選択戦略についても具体的なアドバイスを行っています。
「銀行との条件交渉を有利に進めたい」「資産を守りつつ資金を確保したい」とお考えの経営者の皆様、ぜひ一度ご相談ください。貴社の状況に合わせた実践的な解決策をご提案いたします。
<松本社長の紹介>
1948年生まれ。40年間飲食業を中心に7業種の会社を経営。
バブル崩壊時に「25億円」の負債を抱えるも5年で解消。自ら事業再生を経験。その時の知識・経験を活かして事業再生請負人として活躍中。
18年間で「600社以上」の事業再生に取組み、多くの苦悩する経営者を救済してきました。
また、「7,000名を超える税理士」が松本社長の「経営改善セミナー」を受講。
「危機に陥らない経営手法」を伝授しています。
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